保険の契約を考えるとき、「保険の代理店」という存在に接することがあるだろう。果たして代理店とは何をしてくれるのだろうか。またファイナンシャル・プランナーとして経験を積んだ人の中には、独立して代理店を始めたいという人もいるだろう。代理店を開業するにあたっては、クリアしなければならない条件や取得しなければならない資格がある。

将来、代理店として独立したい人はのみならず、保険の契約や見直しを考えている人は「保険の代理店」が何をしてくれるのか、どんな存在なのかを知っておくと何かと有利になるはずだ。

保険代理店とは? 行う業務の種類とは?

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(画像=PIXTA)

保険の募集形態は、直扱・仲立人扱・代理店扱の3つに大別される。「直扱」とは、保険会社の職員と契約者の間で保険契約を締結する募集形態のことをいう。「仲立人扱」も契約形態は直扱と同じだが、仲介人が保険会社と契約者の媒介をする。これに対して「代理店扱」では、代理店と契約者の間で保険契約が締結される。保険会社と代理店の間では「代理店委託契約」が締結されており、代理店はその委託内容に基づき保険契約を締結したり、保険料を領収したりするのだ。

保険代理店が行う業務には、以下のようなものがある。

・ 保険契約の募集、締結
・ 保険契約の解除や変更の受付
・ 保険料の領収、返還、保管、領収証の発行と交付
・ 保険証券の交付
・ 満期管理をはじめとする保険契約の維持、管理
・ 保険契約に関する報告
・ 保険の目的に関する調査
・ 事故の受付、保険会社への事故報告
・ 保険金請求手続きのサポート

●専業代理店は別名「プロ代理店」、副業代理店との違いとは

保険代理店は、その業務形態によって次の2種類に大別される。専業代理店と、副業代理店だ。専業代理店とは保険販売のみを行う代理店のことをいい、「プロ代理店」と呼ばれることもある。これに対して副業代理店は、保険販売以外の業務も行う代理店のことをいう。旅行代理店や自動車整備工場、自動車ディーラー、不動産業者などがその代表例である。

●専属代理店は1社のみから委託、乗合代理店は複数の会社から委託

保険代理店は、代理店委託契約を締結する保険会社の数によって「専属代理店」と「乗合代理店」のいずれかに分類される。専属代理店とは保険会社1社のみから委託を受けている代理店のことを、乗合代理店とは複数の保険会社から委託を受けている代理店のことをいう。詳しくは後述するが、専属代理店か乗合代理店かによって、取得すべき資格が変わってくる。そのため保険代理店を始めるときは、どちらの形態にするのか慎重に判断する必要がある。

保険代理店として業務を始めるまでの流れ

保険代理店を始める場合、以下のような流れで手続きが進められる。

●その1 保険会社を選ぶ

保険代理店開業の第一歩は、保険会社選びから始まる。手数料体系や監査の厳しさなどは、保険会社によって異なる。また保有している資格の種類や資格保有者の人数が、手数料率に影響してくるところもある。そのため保険代理店を始めるにあたっては、各保険会社の情報について念入りに調べておく必要が大切だ。

●その2 代理店研修と代理店試験

委託を受ける保険会社を決めたら、次は会社が実施する代理店研修を受講する。代理店は、保険会社と消費者のパイプ役となって保険に関する知識・情報を提供したり、交渉のサポートをしたりする役割を担う。また事故が発生した場合はその受付・報告をし、早期・円満解決に向けたサポートをしなければならない。

さらに2016年の保険業法改正により、保険代理店にも保険業務の健全かつ適切な運営を確保するための「体制整備義務」が課せられるようになった(保険業法294条の3)。

代理店研修ではその職務を果たすため、また、顧客のニーズを満たすために必要な知識やスキルについての教育が行われる。そして研修後は代理店試験を受験し、これに合格する必要がある。

●その3 保険会社と代理店委託契約を締結

代理店試験に合格したら、いよいよ代理店委託契約の締結である。この契約によって保険代理店は、保険会社からその代理店として、一定の事実行為や法律行為を継続的に行うことを委託される。

●その4 財務局に保険代理店の登録

保険会社との委託契約締結が完了したら、財務局に登録の申請をする。そして財務局による審査と登録が完了したら、保険代理店として保険の販売をすることが認められる。

保険業は金融庁監督のもと、保険業法を根拠として遂行されるものである。そのため代理店の開業についても、厳格なルールが定められているのだ。財務局への登録完了が代理店開業の第一歩になることから、このことを「保険代理店資格の取得」と表現する人もいる。

保険の募集に必要な資格〜損害保険編〜

保険代理店を開業して損害保険の販売をするためには、代理店としての資格の他に、募集人としての資格も取得しなければならない。これが「損保一般試験」である。この試験では保険募集をするにあたり、その商品についての重要事項説明等をするだけの知識があるかどうかが試される。試験に合格できなければ代理店登録はもちろん、該当する保険商品の取り扱いをすることもできない。

試験科目には「基礎単位」と「商品単位」の2種類があり、商品単位については「自動車保険単位」「火災保険単位」「障害疾病保険単位」の3つに分類される。点数配分は各科目100点ずつで、合格基準は70点だ。またこの試験は各単位ともに5年更新制となっている。そのため保険代理店を続けるためには5年おきに損保一般試験を受験し、合格する必要がある。

そして損保一般試験は、合格したからといって直ちに募集行為を開始できるわけではない。募集人届出が完了して初めて、保険の募集・販売ができるようになるのだ(保険業法302条)。そのため試験に合格して募集人届出が完了することを、「募集人資格を得る」と表現する場合もある。

また「損害保険募集人」については、保険業法2条20項において「損害保険代理店」「損害保険代理店の役員」「損害保険代理店の使用人」がこれに該当すると規定されている。そのため保険代理店を始めるにあたり募集行為をする従業員を雇用する予定がある場合は、その者についても損保一般試験に合格して募集人としての資格を得てもらう必要がある。

保険の募集に必要な資格 生命保険編

生命保険の募集・販売をする場合、損保一般試験とは別に、生命保険協会が実施する「一般課程試験」に合格する必要がある。100点満点で、合格基準は70点だ。また登録前には8日間32時間以上の、登録後には7日間28時間以上の研修が実施される。

生命保険の一般過程試験は、更新制になっていない。そのため損保一般試験のように数年おきに受験する必要はないが、原則、生命保険協会が定める「継続教育制度標準カリキュラム」に従い、研修などを毎年受けなければならない。

乗合代理店になるために必要な資格

生命保険会社の代理店は、一社専属を原則とする(保険業法282条1項)。ただし、保険業法282条3項の要件を満たす場合は、複数の生命保険会社の商品を扱うことが、つまり、乗合代理店になることが許される。

では、その要件とは何か。保険業法282条3項では、「保険募集に係る業務遂行能力その他の状況に照らして、保険契約者等の保護に欠けるおそれがないものとして政令で定める場合」と規定している。そして保険業法施行令40条、平成10年大蔵省告示228号では、この点について具体的に以下のような要件を掲げている。

・ 業務管理責任者が任命・配置されている
・ 教育責任者が任命・配置されている
・ 専門課程試験に合格している、教育責任者がいる
・ 教育責任者の他に、1名以上の募集人がいる

つまり乗合代理店になるには、「店主を含め最低でも2名以上の募集人がいる」「募集人のうち最低でも1人は、専門課程試験に合格している」という2つの条件を満たさなければならないのだ。

「専門課程」とは生命保険の募集人になるために合格すべき「一般課程」の次段階にあたるもので、これに合格すると、「ライフ・コンサルタント」の称号を得られる。試験を受けるにあたっては2日間12時間以上の研修を必要とし、100点満点で合格基準は70点となっている。

取得、履修しておくと有利な資格・課程

保険代理店の経営を円滑に運ぶには、以下のような資格の取得を検討してみるのもいいだろう。

●大学課程 損保一般試験合格者向け

日本損害保険協会では、損保一般試験合格者を対象に「大学課程」を用意している。大学課程は「専門コース」から始まり、法律や社会保険、税務、リスクマネジメントなど、損害保険の募集に関連する分野について、より詳しい知識を身に着けられる。

また専門コースの認定取得者は「コンサルティングコース」へと進むことができ、個人や企業を取り巻くリスクとコンサルティングについて深く学ぶ。そして専門コースに合格した人は「損害保険プランナー」として、コンサルティングコースに合格した人は「損害保険トータルプランナー」として認定され、損保協会Webサイト上に情報が掲載される。

生命保険協会が実施する試験にも、一般課程合格者を対象にした専門課程、その合格者を対象にした応用課程、さらにその合格者を対象にした大学課程が用意されている。

保険やその隣接分野についての知見を深めることは、営業に役立つだけでなく顧客の安心感にもつながる。大学課程合格までには最低でも数年かかるため、保険代理店の開業を検討しているならば今のうちに各課程履修を予定しておくといいだろう。

●ファイナンシャル・プランニング技能検定 3級から1級まで

ファイナンシャル・プランナーは、家計管理や老後の生活設計、教育資金、資産運用、相続・贈与、介護・医療費といった「暮らしとお金」に関する相談に対応する専門家である。これらの分野はどれも保険と密接な関連をもつものであり、ファイナンシャル・プランニングについて学び資格を取得すれば、「暮らしとお金の専門家」として商談を進めることができる。

ファイナンシャル・プランニング技能検定は3級から1級まである。まずは、3級合格を目指してみてはいかがだろうか。

保険を契約しようとしている人も

保険代理店を始めるには、募集人資格を取得するのはもちろん、保険会社と代理店委託契約を締結して財務省に登録しなければならない。また保険会社所定の代理店研修を受講する必要もある。さらに乗合代理店にする場合、自分以外に最低1人は募集人を探す必要がある。保険代理店開業までには、数か月単位の時間がかかる。

保険代理店の開業を検討している人だけでなく、これから保険の契約や見直しをしようという人にとっても、「保険代理店」がどういう存在なのか、何ができるのかを知ることは、交渉や契約を有利に進めるために有益ではないだろうか。興味を持ったら詳しく勉強してみるといいかもしれない。

曽我部三代
保険業界に強いファイナンシャルプランナー。富裕層の顧客を多く抱え、税金対策・相続対策を視野に入れたプランニングを行う。2013年より、金融関連記事のライターとしても活動中。