※2018年3月配信記事を再編集したものです。
米金利上昇の「本当に危ない」レベルとは
2018年2月に就任した米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は就任後初となる2月27日の米議会における証言で、「米経済の見通しは明るい」との見解を示し、2018年に従来想定の3回ではなく、4回の利上げもあり得ると示唆した。
緩和的で市場に優しい「パウエル・プット」を期待していた一部の市場関係者はパウエルのタカ派ともとれる姿勢に失望し、株価に大きな影響を与え得る米10年債の利回りが2.92%近辺へと急上昇した。
このときは、米10年債の利回りが3%目前に迫ったことを嫌った投資家たちが株式を売却。このため米ダウ平均株価は2月27日、299ドル下げた。
その後、利回りは3%を超えたが、今のところ、米株式市場の株価は堅調に推移している。長期金利は今後、米経済にどのような影響をもたらすのだろうか。想定し得るシナリオをもとに、探ってみよう。
なぜ金利上昇で株価が下落するのか
まず、なぜ長期金利の上昇が株価下落につながりやすいのか、おさらいをする。歴史的に米10年債の利回りが3%を上回ると、リスク資産に関するネガティブな心理的な壁が突破されたとみなされる。なぜなら、企業の調達コストが顕著に上昇し、社債投資のトータルリターンが侵食され、結果として株式バリュエーションの重しとなる連想が働く、象徴的な数字であるからだ。
債券王ビル・グロース氏はすでに1月末のツイートで、「米10年債利回りが3%を超えればかなり早い段階で、借金によって支えられた経済に悪影響を与える」と予測している。
米バンクオブアメリカ・メリルリンチのストラテジストであるサビタ・スブラマニアン氏は、「S&P 500株価指数は、伝統的に米10年債の利回りが2%から3%で推移する時期に最大の利益をもたらしてきた」と述べ、トランプ相場がそのレンジで成立していたことを指摘した。その上で、「株価のリターンは、米10年債の利回りが6%を超えるまではプラスの領域に留まるが、株式投資で損失が出始めるのが3%以上だ」と解説した。
カナダ金融大手RBCキャピタルマーケッツの米金利戦略部長であるマイケル・クロハーティー氏は、「3%に近づくほど、投資家は神経質になる。市場で混乱が見られるようになるだろう」と予測する。「3%」という数字は、そうしたリスクを抱えているのだ。
さらに、ブルームバーグ通信の解説記事は当時、「現時点では米10年債利回りが3%に達する可能性を考えるよりも、いつ到達するのかを考えることの方が重要だ」と指摘した。
3%越えは株価下落というリスクをともなうと考えるグロース氏のような市場関係者が多く存在する一方、3%超えはリスクではないとする専門家もいる。なぜだろうか。