米国の中央銀行である連邦準備制度理事会(FRB)の金融政策を決める連邦公開市場委員会(FOMC)は3月21日、政策(FF)金利を0.25ポイント引き上げて、年1.50%~1.75%とすることを決定した。

これによって、直接の影響を受けるのが、クレジットカードのリボ払いを使ってお金を借りている、多くの米消費者だ。政策金利が上がると、クレカの年率利息も連動して上昇し、毎月の返済額が徐々に増えてゆく。「0.25ポイントも積もれば山となる」のだ。

こうした中長期的な出費増に対し、米消費者はどのような生活の知恵を使って対応しているのだろうか。また、米国の利上げの傾向や消費者の防衛策から、日本のクレジットカード利用者が学べることは何だろうか。

じわじわ増えるクレカ返済額

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(画像=Alf Ribeiro / Shutterstock.com)

クレジットカードの便利なところは、今ほしいモノやサービスへの支払いを、リボ機能を使って先に延ばせることだ。返済額が能力を上回らないよう計画的に利用すれば、豊かな生活が楽しめる。

特に2008年の金融危機後の超低金利環境の米国においては、信用度の高いクレジットカード利用者は利息の年率が一桁台という好条件で、買い物を楽しむことができた。

だが、FRBは2015年12月から0.25ポイントの利上げをすでに6回実施してきた。全体で1.5ポイントであり、毎月のクレジットカード負債の返済額の利息分はバカにならない額となっている。

あなたが年率(APR)15%のクレカを使って買い物を続け、リボ払いの残高が15000ドル(約157万円)あると仮定しよう。あなたは毎月200ドル(約21000円)を返済に充てている。利息が政策金利と連動して15.25%になれば、0.25ポイントの上昇だけで完済までに支払う利子が189ドル(約19800円)分増える。

したがって、これまでの6回の利上げで完済に至る利息は10万円分以上高くなっているのだ。しかも、利上げは年内2回〜3回が予想されており、2019年にはさらにペースが加速するとされる。これはしんどい。

昨年12月末の段階で、米国人のクレカ負債は1兆ドル(約104兆7120億円)以上にも達している。年率はカードの種類や信用度により異なるが、だいたい15%から25%の間である。数万ドルの負債を年率22%や25%のカードで返済する保有者たちにとって、FRBの利上げはたとえ1回0.25ポイントであっても結構な負担であり、加えて利上げが加速することによる苦しさがお分かりいただけると思う。

借り替えても追いつめられる

こうした返済額の増大に対して、米消費者はどのような防衛策を持っているのだろうか。最もポピュラーなのは、「期間限定年率0%クレカへの借り替え」である。あなたが年率15.25%のクレカ口座に持つ負債を、1年から1年半の期間にわたり年率0%のクレカに移し替えれば、ぐっとラクになる。ただし、この期間が終了すれば、FRBの政策金利に連動する利率が適用される。

年率0%の期間内に元本の返済に集中すれば、利率が通常に戻った際の負担が幾分か軽くなっている計算だ。毎月の返済をきちんと行う信用度の高い人であれば、この手でFRBの利上げにある程度対抗することができる。だが、多くの人は自分のクレカの利率さえ知らない。これが、借り替えを全体的に抑制している。

そうしたなか、その頼みの綱である借り替えの機会が少なくなることが懸念されている。米シティバンクは全米最大のクレジットカード発行企業であり、年率0%クレカの期間も業界で最も長く有利なものを顧客に提供してきた。だが、同行のジョン・ガースパック最高財務責任者(CFO)は投資家向けのカンファレンスで、「(利上げでこうした商品提供の相対的なコストが増大するため)サービス縮小を考えている。これは、年率0%の期間の短縮や廃止も含む」と述べて注目を集めた。

利上げで利息支払いが増え、さらに借り替えのチャンスが縮小すれば、消費者の家計が苦しくなることも考えられる。事実、クレジットカードの不良債権償却(損失を計上すること)は、金融危機の後遺症が和らぎ始めた2011年から減少傾向にあったが、近年再び増加を始めている。

これが利息支払い額の上昇によるものかは、まだわからないが、注視が必要だろう。また、米国銀行協会によれば、可処分所得に占めるクレカ負債の割合は2015年から減少傾向にあったが、2017年の7~9月期に前年比0.14%上昇して反転を始めている。加えて、3か月以上支払いが遅れているクレカの負債残高が119億ドル(約1兆2461億円)と、7年ぶりの高水準に達していることも気がかりだ。

日本の消費者が学べる教訓

米国の消費者の体験や知恵、そして状況から日本の消費者が学べることは何だろうか。まず、一般庶民はFRBなど中央銀行の利上げや利下げの力にはかなわないため、負債を日頃から可能な限り抑制しておくことが挙げられる。

言うまでもなく、緩和的金融政策の出口戦略が着実に進む米国と違い、日本はまだまだデフレ的な金融環境にある。日本銀行が利上げを始めることなど、まだまだ先のように感じられる。だが、森友学園問題などで現在の安倍政権が倒れた場合、後継内閣が日銀に引き締めを迫る可能性もある。

安倍首相の後継候補の一人と目される自民党の岸田文雄政調会長は1月、2月、3月にたびたび「日銀の出口戦略を考えていく必要がある」と強調している。もし安倍内閣が崩壊したり、既定路線とされる今秋の3選が実現せず、岸田氏が新首相になった場合、日本の金融環境が変わる可能性もある。

一部のエコノミストたちは、「岸田氏は自分が何を言っているか、自分で分かっていない」との冷淡な反応を示しているが、日銀が資産購入を終わらせ、利上げへと舵が切られる日が来ないとも限らない。万が一、金利が急に上昇し始めても返済が苦しくならないよう、借入残高は計画的に抑制するのが、日本の消費者が日頃から取れる対策と言えそうだ。(在米ジャーナリスト 岩田太郎)