2018年も後半を迎え、来週からは米主力企業の4~6月期の決算発表が本格化する。しかし、好決算が予想されているにもかかわらず、米株式市場は冴えない展開を強いられている。ウォール街の市場関係者からは「トランプ大統領が掲げる『米国第一主義』が新興国経済に大きな打撃を与え、結局は米国経済の自滅を招くのではないか?」と警戒する声も聞かれる。

米決算の4~6月期は「20%増益」か?

ポスト平成ですごいことになる日本経済2.0
(画像=JStone/shutterstock.com)

米調査会社ファクトセットによるとS&P500採用銘柄の4~6月期は「20.0%の増益」が予想されている。20%増といえば2010年7~9月期以来の水準である。背景には昨年末に成立した「減税法案」等が指摘される。

実際、各社ともすでに「減税法案」等の影響で業績見通しの上方修正に動いている。たとえば、セクター別にみるとエネルギーが141.7%増と他を圧倒しているほか、素材が48.7%増、通信が27.3%増、情報技術24.6%増と続いている。「減税法案」に加えて原油価格の高騰がエネルギーセクターの業績を押し上げているほか、素材セクターでは関税の引き上げも追い風となっているようだ。

決算発表の序盤では、まず金融セクターが注目されよう。13日にはシティ・グループ、JPモルガン・チェース、ウェルズ・ファーゴが相次いで発表するほか、週明け16日にはバンク・オブ・アメリカ、17日はゴールドマン・サックス、モルガン・スタンレーが控えており、7月相場の大きな山場となる可能性がある。

米国では原油高の影響等でインフレ圧力が強まっており、FRB(米連邦準備制度理事会)も利上げに積極的な姿勢を見せている。一方、米保護貿易への懸念から先行き不透明感が払しょくできず、その結果として「長短金利差の縮小」も続いている。イールドカーブのフラット化は金融機関の収益を圧迫することから、今期はもちろん、来期以降の収益見通しにどの程度影響を及ぼすのか気になるところだ。

また、注目度の高い「FAANG株」は、ネットフリックスが16日、グーグル(アルファベット)が23日、アマゾン26日、アップル31日、そしてフェイスブックは8月1日を予定している。「FAANG株」の決算内容は米国株全体を大きく左右することにもなりかねないだけに十分な注意が必要だ。

「新興国危機」の再燃、チャイナショックを警戒

ファクトセットの予想にある通り、短期的には米主力企業の好決算が想定されるものの、それでもウォール街の市場関係者からは先行きに慎重な意見が多く聞かれる。特に危惧されるのが「新興国危機」の影響だ。

全世界の株式市場の指標となるMSCIオール・カントリー・ワールド・インデックス(ACWI)の年初来の騰落率は7月3日現在で2.0%下落とマイナス圏にある。中でも新興国株はインドを除いて総崩れとなっており、MSCIエマージング・インデックス(新興国の株式を対象とする代表的な指数)も年初来で8.7%の下落を記録している。

新興国で特に深刻なのが中国である。中国政府は「金融システム安定化」の旗印のもと、企業の過剰債務の削減に取り組んでいるが、その影響でインフラ投資が縮小している。たとえば、1~5月期の固定資産投資は前年同期比6.1%増と前期(7.0%増)から減速し、1996年以降で最も低い伸びとなっている。この影響は個人消費へも及んでいるようで、5月の小売売上高も前年比8.5%増と4月の9.4%増から低下、2003年6月以来15年ぶりの低い伸びを示している。こうした影響もあり、上海総合株価指数の年初来の騰落率は17%下落と大幅安を記録している。1月の高値からは22%も下落しており、目下のところ底入れの見通しが立たない状況だ。

さらに懸念されるのが人民元の下落である。4月に1ドル=6.2元台だった人民元は6月末までに6.6元台へと急落。ウォール街の市場関係者からは「2015年8月の人民元切り下げをきっかけとしたチャイナショックの再来となるのでは?」と警戒する声も聞かれる。

中国をはじめとする新興国株は、米利上げによるドル高と「トランプ関税」の影響で資本流出の懸念に直面している。トランプ大統領の掲げる「米国第一主義」が新興国経済を揺さぶり、結局は米国経済の失速を招くことにもなりかねない事態にウォール街の市場関係者は気をもんでいる。

今年の夏は寝苦しい夜が続く?

ところで、6日には6月の米雇用統計が発表されるが、事前予想では20万人近い雇用の増加が予想されており、失業率は3.8%と18年ぶりの低水準で横ばい、賃金の伸びは2.8%上昇と前月の2.7%から加速し、9年ぶりの高い伸びとなりそうだ。ただし、これらの数字はいずれも米景気の順調な拡大と米利上げの正当化を後押しするものだが、「世界的な関税の報復合戦」はまだ始まったばかりであり、その影響が確認できるのは早くても7月の経済指標である点に留意する必要があるだろう。

たとえ米主力企業の決算が好調で、雇用統計が堅調な結果となったとしても、米国第一主義が招く「自滅リスク」を消去することはできない。ウォール街の今年の夏は寝苦しい夜が続きそうな雲行きだ。(NY在住ジャーナリスト スーザン・グリーン)