レイ・ダリオ,欧州株,景気後退
(画像=Getty Images)

目次

  1. 2019年に金融危機は到来するか
  2. 景気後退の可能性に言及したヘッジファンドの帝王
  3. 景気回復局面の終わりは近いのか
  4. ロジャーズ氏が恐れる「最悪の危機」
  5. ロジャーズ氏が予測する「米ドルバブル」のシナリオ

※2018年3月配信記事を再編集したものです。

2019年に金融危機は到来するか

長期金利上昇に対する市場の恐怖を背景に米国が震源地となり、2018年2月に突然起こった世界同時株安。その後、金融・資本市場はひとまず落ち着きを取り戻しているが、米10年物国債の利回り上昇やトランプ大統領の通商政策など波乱要因は消えておらず、株価下落への懸念は解消されていない。こうした市場の乱高下の増大は懸念要因だが、それよりも怖いのが、米国や世界が景気後退に沈むことだ。すでに2008年の金融危機からの経済回復は10年間を超え、1周回した感が強いだけに、不安も高まる。

米著名人投資家にも、「2018年の後半から2019年にかけて、金融危機が到来する可能性がある」との説を唱える一派が2018年初め頃から現れ、市場の不安定さと併せて、注目を浴びた。

果たして、2019年に金融危機は訪れるのか。その根拠を見てみよう。

景気後退の可能性に言及したヘッジファンドの帝王

約1620億ドルの資産を運用する世界最大のヘッジファンド、ブリッジウォーター・アソシエーツを率いる「ヘッジファンドの帝王」ことレイ・ダリオ氏は2月21日のハーバード大学での討論会で、「2020年の次回の米大統領選挙より前に、米経済が景気後退に陥る可能性は70%くらいだ」と述べて大きな注目を浴びた。

ダリオ氏はこれに先立つ2月12日に、「2019年から景気後退が起こる可能性が高い」と述べている。2008年の米金融危機やその後の欧州の債務問題など市場の危機を予見したことで投資家から信頼されるダリオ氏は、2019年に経済が後退する理由として、「トランプ米政権が巨大な減税や財政出動で経済のアクセルを思い切り踏み込み、それが逆効果を生むからだ」との見解を表明した。

政権の一連の政策が米経済を過熱させ、結果として米連邦準備制度理事会(FRB)の金利引き上げによる金融引き締めにつながり、資産価格が軒並み下落するという「トランプリスク」のシナリオだ。事実、ダリオ氏は「米経済はバブルの寸前であり、すぐにでもバブルになり得る。それに続くのは相場の崩壊だ」と分析している。

実はダリオ氏は、2017年夏ごろから弱気な相場観に傾いていた。そのときも理由は、①北朝鮮の核ミサイルをめぐるトランプ大統領と金正恩朝鮮労働党委員長のチキンレースと、②米議会が2017年秋に債務上限引き上げに失敗し、米政府が債務不履行に陥り、政治への信頼が失墜することという、「トランプリスク」だった。これらによる相場の下落は実際には起きなかったのだが、ダリオ氏にとっては、トランプ大統領が景気後退の引き金を引くという確信は変わっていないようだ。

そうしたリスクの中で、どのような投資戦略が有効なのか。推定純資産177億ドル(約1.9兆円)のダリオ氏は、「人と反対のことをせよ」と助言する。

「自分の中に怖れがないときにこそ売り、恐怖に襲われたなら、そのときには買え。相場が上げて皆が買っているときは株価が高過ぎるのであり、相場が崩れて人々が『最悪だ』と考えているときこそ、安いからだ」と、ダリオ氏は言う。

さらに、「数億ドル払って情報を入手しているプロに勝ち目はない。そういう連中と張り合えば負ける」と付け加えた。国際情勢からマクロ経済、金融政策、歴史、社会のトレンドなどが引き起こす需給の変化を綿密に調査し、そこから価格の大きな上昇または下落を予想してポジションをとる「グローバル・マクロ」方式を重んじるダリオ氏ならではのコメントだ。

討論会で同席していたローレンス・サマーズ元米財務長官は、「ダリオ氏のアドバイスは聞くに値する」と賞賛した。

景気回復局面の終わりは近いのか