※2018年5月配信記事を再編集したものです。
好調な米経済にしのびよる影
予見不能なトランプ政治や世界各地での地政学的リスクにも関わらず、米国経済はいまだ健在に見える。米国の株価は今年に入り伸び悩んでいるものの、まだ昨年末の水準近辺だ。 今月4日に発表された雇用統計では失業率が3.9%となり、17年4か月ぶりに3%台に低下した。しかしそんな好調さの裏で、悪化を続ける数字もある。
一見好調なように思える米経済だが、よく目を凝らしてみると、綻びも垣間見える。低所得者層の間に広がる危険な兆候について報告したい。
クレジットカードの貸し倒れが急増
3月4日付のウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)紙によると、中小の銀行でのクレジットカードの貸し倒れ率が、リーマンショック以降では最高水準にまで上昇してきているという。資産残高で100位以内に入らない下位の銀行では、貸し倒れ率が2017年第3四半期には7.9%となった。同第4四半期には多少は低下したものの、それでも7.17%と非常に高水準だ。大手銀行も含めた全体のクレジットカードの貸し倒れ率もここ2年は緩やかに上昇しているが、その比率は昨年第4四半期で3.48%と過去30年の平均以下にとどまっており、その差は鮮明だ。
ここから見て取れるのは、大手の銀行が取引相手としない低所得者層で貸し倒れが広がっているということだ。甘い審査や緩い融資条件の住宅ローンなどで金融危機を招いたことの教訓から、大手銀行はその後クレジットカードなどでも審査を厳格化した。大手銀行でカードを作れない低所得者層は高金利であっても中小の銀行に頼ることになり、大手と中小の銀行の間での顧客層の違いが以前以上に際立っている可能性が高い。