CRMとは「Customer Relationship Management」の略で、日本語では「顧客管理」と訳される。大量生産・大量消費を前提としたマスマーケティングの時代は終わりを告げ、消費者個別のニーズに合わせた One to Oneマーケティングが主流の現代において、顧客の立場に立ったアプローチはビジネスを勝ち抜くために必須だ。今回は、集客から見込み客のフォロー、アフターセールスまで一元化できるCRMを中小企業で取り入れるべき理由について見ていこう。

CRMは「既存顧客との関係強化」に重きを置く

CRM
(写真=Gustavo Frazao/Shutterstock.com)

一般的に、業容の拡大には新規顧客の獲得が重要だとされる。伸び盛りの分野であればそれも可能だが、新規顧客の獲得はいつか限界がくる。とくに、少子高齢化による人口減で、マーケットが頭打ちになっている日本国内の市場は、そうした懸念が堅調だ。

一方で、CRMは「既存顧客との関係強化」に重きを置いた考え方だといえる。この「既存顧客」には、問い合わせやアプローチ段階では購入には至っていない見込み客も含まれる。どんな形であれ、いったんは接触があった顧客に関するデータを蓄積し、継続的に売上げを立てようという思想がCRMの背景にある。

具体的には、会社名や担当者の氏名、連絡先や問い合わせ履歴、アプローチ履歴などをすべて同一のシステム内で紐付けし、データをもとに営業やマーケティングを実施する。

中小企業がCRMを取り入れるべきメリット

1.業務の効率化
CRM導入の最大メリットは、「マーケティングや営業の効率化」だといえる。中小企業は少数精鋭で、1人のスタッフが何役もの役割をこなしていることも多いだろう。業務の効率化こそが、利益の最大化につながるのだ。

2.業務の見える化
長年勤めている社員がこなしている業務は属人化しやすい。部署間異動の少ない中小企業では、そういった場面がしばしば見られる。 その社員が勤務している間は良いが、体調不良などさまざまな理由で休職したり、退職したりすると問題だ。「ブラックボックス化」した業務について、他の誰も把握していないということになりやすい。また、属人化した業務は不正の温床ともなり得る。

その点、CRMを利用して顧客管理を行えば、顧客へのアプローチや購入履歴、問い合わせ内容、支払い状況までを一元化することができる。業務を「見える化」することで属人化を防ぎ、見込み客へのアプローチから購入、アフターフォローまでのプロセスを分担しやすくなるのだ。

3.顧客満足度の向上
CRMで顧客情報を一元化すると、顧客にとってもプラスとなる。問い合わせに対して部署間をたらいまわしされる、複数の担当者から同じ提案を受ける、などといった煩わしさから解放されることになるからだ。

4.教育・研修にも使える
人員に余裕がない中小企業の場合、新人が入社した際の研修は主にOJTとなる。こうした研修の際に、CRMを活用することもできる。どのような顧客に、どのようなアプローチをかけて、どのような結果につながったのか。CRMに蓄積された顧客データが、活きたケーススタディーとなり、新人の成長を加速させるのだ。

クラウド型や無料トライアルを活用し、自社に合ったシステム導入を

CRMは、業務効率化と顧客の満足度の両局面からプラスになることは分かるものの、予算の関係からいきなり全社での導入は難しいということもあるだろう。

しかし最近は、ソフトウェアを購入せずに利用することが可能なクラウド型のCRMも増えている。そうしたサービスの中には、一定期間や一定のユーザー数まで無料で使用できるものもある。

自社の組織や業務内容とCRMがマッチするか不安な場合は、こうした無料トライアルを利用してみてもよいだろう。

また、CRMはできれば全社的な情報インフラとして統合することが望ましいが、既存システムとの連携が難しいという場合は、まずは営業部門からの導入をおすすめする。その場合は、外回りで忙しい営業スタッフでも簡単に入力・活用できるシステムかどうかという観点から、導入を選定すべきだろう。 (提供:百計オンライン


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