18年1月のASEAN主要6カ国の輸出(ドル建て通関ベース)は前年同月比23.0%増と、前月の同11.5%増から上昇し、8ヵ月連続の二桁増を記録した(図表1)。1月の輸出の急増は、昨年1月だった旧正月が今年は2月となり連休前の関連需要の増加がずれ込んだことが主因である。しかし、2-3月には反動減で輸出の伸びが大きく鈍化する可能性もあり、輸出の基調は上振れした1月の結果だけで判断することはできない。輸出は昨年、海外経済の回復や半導体需要の増加、一次産品の価格上昇が全体を押し上げたが、足元では輸出の増勢はピークアウトしたかにも見えている。

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ASEAN5カ国の仕向け地別の輸出動向を見ると、東アジア向け(同24.4%増)と東南アジア向け(同19.4%増)、北米向け(同17.9%増)がそれぞれ上昇する一方、EU向け(同10.8%増)が小幅に低下した(図表2)。東アジア向けを中心に好調に推移している傾向に変化は見られない。

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タイの18年1月の輸出額は前年同月比17.6%増と、前月の同8.6%増から上昇した。輸出の基調は、海外経済の回復を背景に需要が拡大した電子機器や自動車・同部品、また価格が上昇した製品を中心に増加傾向を維持しているが、昨年後半にピークアウトしたかにも見える。一方、輸入額は前年同月比24.3%増(前月:同16.6%増)と上昇した結果、貿易収支は1.2億ドルの赤字となり、前月から1.6億ドル赤字が縮小した(図表3)。

輸出を品目別に見ると、全体の約8割を占める主要工業製品は同17.8%増(前月:同16.3%増)と上昇し、6ヵ月連続の二桁成長を続けている(図表4)。工業製品の内訳を見ると、電子機器(同17.8%増)、自動車・部品(同18.9%増)が高水準を維持し、機械・装置(同16.7%増)と石油化学製品(同22.0%増)が大きく上昇した。また鉱業・燃料は同28.9%増(前月:同15.0%増)と上昇し、石油製品を中心に6ヵ月連続の二桁増となった。農産品・加工品は同16.6%増(前月:同1.6%増)と上昇した。天然ゴム(同20.7%減)が落ち込んだものの、コメ(同37.2%増)や加工食品(同22.4%増)、ゴム製品(同23.2%増)が好調だった。

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ベトナムの18年1月の輸出額は前年同月比41.6%増と、前月の同18.7%増から大きく上昇し、12ヵ月連続の二桁増を記録した。輸出は16年後半に主力の電気・電子製品が勢いを取り戻してから政府目標(17年が+6-7%、18年が+7-8%)を上回る伸びが続いているが、新型スマートフォン関連の輸出は昨年10月にピークアウトしたかに見え、先行きの輸出は好調を維持しつつも増勢が鈍化すると見込まれる。一方、輸入額も前年同月比53.1%増(前月:同17.0%増)と大きく上昇した。結果として、貿易収支は前月の8.3億ドルの赤字から4.1億ドルの黒字に転じた(図表5)。

輸出を品目別に見ると、まず輸出全体の約2割を占める電話・部品が同69.3%増(前月:同45.0%増)、コンピュータ・電子部品が同48.4%増(前月:同21.5%増)とそれぞれ大幅に上昇した。アパレル関連では織物・衣類が同16.5%増(前月:同8.3%増)、履物が同21.5%増(前月:同10.1%増)と上昇し、それぞれ二桁成長となった。農産品では野菜(同63.6%増)やカシューナッツ(同93.9%増)が好調に推移した上、前月に伸び悩んだコーヒー(同24.1%増)とコショウ(同11.5%増)、コメ(同67.0%増)が大きく上昇した。

輸出を資本別に見ると、全体の7割を占める外資系企業が同29.2%増(前月:同13.5%増)、地場企業が同12.4%増(前月:同5.2%増)と、それぞれ上昇した。

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マレーシアの18年1月の輸出額は前年同月比32.9%増と、前月の同14.4%増から上昇し、7ヵ月連続の二桁増を記録した。輸出の伸び率は主力の電気・電子製品を中心に好調に推移している。一方、輸入額も前年同月比25.9%増と、前月の同17.9%増から上昇した結果、貿易収支は24.6億ドルの黒字と、前月から6.8億ドル増加した(図表7)。

輸出を品目別に見ると、全体の約4割を占める機械・輸送用機器は同41.8%増(前月:同15.6%増)と、主力の電気・電子製品(同43.3%増)を中心に上昇した(図表8)。また化学製品が同38.3%増(前月:同16.5%増)と上昇したほか、動植物性油脂も同24.9%増(前月:同0.0%増)とパーム油を中心に大きく上昇した。鉱物性燃料は同17.4%増(前月:同16.2%増)と小幅に上昇した。原油(同12.8%増)こそ低下したものの、石油製品(同15.1%増)と天然ガス(28.5%増)が上昇した。

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インドネシアの18年1月の輸出額は前年同月比7.9%増(前月:同7.5%増)と上昇した。輸出の伸び率は世界経済回復による需要拡大とコモディティの価格上昇を受けて二桁成長が続いていたものの、直近2ヵ月は機械類や電気機械を中心に輸出が伸び悩んで一桁成長に止まっている。一方、輸入額は前年同月比26.4%増(前月:同18.1%増)と上昇した結果、貿易収支は6.8億ドルの赤字と、前月から4.6億ドル減少した(図表9)。

輸出を品目別に見ると、石油ガスが同1.1%増(前月:同20.8%増)と低下した(図表10)。非石油ガスでは、輸出全体の7割を占める製造品が同6.8%増(前月:同2.1%増)と再び上昇した。

製造品の内訳を見ると、宝飾品(同141.1.3%増)や電気機械(同9.1%増)、機械類(同5.2%増)が上昇した一方、動植物性油脂(同20.6%減)が一段と低下した。また農産品は同8.3%減(前月:同23.0%減)と低迷したが、鉱業品は同19.6%増(前月:同28.5%増)と鉱石、スラグ及び灰を中心に高い伸びを維持した。

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シンガポールの18年1月の輸出額(石油と再輸出除く)は前年同月比18.0%増と、前月の同7.3%増から上昇し、2ヵ月ぶりの二桁増となった。輸出は主力の電子製品と医薬品が上下に振れているものの、石油化学製品が堅調に拡大していることから、総じて増加基調を維持している。なお、総輸出額が前年同月比18.0%増(前月:同7.3%増)、総輸入額が同13.2%増(前月:同8.4%増)と上昇した結果、貿易収支は42.6億ドルの黒字と、前月から9.2億ドル黒字が増加した(図表11)。

輸出(石油と再輸出除く)を品目別に見ると、まず全体の約3割を占める電子製品は同3.9%増と、前月の同1.0%増から小幅に上昇した(図表12)。電子製品の内訳を見ると、PC(同41.5%増)と通信機器(同34.8%増)が好調を維持、ダイオード・トランジスタ(同8.5%増)がプラスに転じる一方、IC(同2.8%減)とPC部品(同25.9%減)が低迷した。一方、電子製品と同じく全体の約3割を占める化学は同19.1%増(前月:同14.1%増)と上昇した。化学製品の内訳を見ると、医薬品が同1.3%減(前月:同14.1%増)とマイナスとなる一方、石油化学製品が同20.3%増(前月:同6.0%増)と大きく上昇した。

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フィリピンの18年1月の輸出額は前年同月比0.5%増と、前月の同2.3%増から低下した。輸出は電子製品こそ好調が続いているものの、昨年後半から伸び悩み、現在は低調に推移している。一方、輸入額は前年同月比11.4%増(前月:同20.0%増)と低下したものの、高水準を維持した。結果、貿易収支は33.2億ドルの赤字となり、前月から5.2億ドル赤字が縮小した(図表13)。

輸出シェア上位10品目を見ると、まず輸出全体の約5割を占める電子製品は同10.8%増と、前月の同15.4%増から低下したものの、4ヵ月連続の二桁増となった(図表14)。電子製品の内訳を見ると、主力の半導体デバイス(同16.9%増)が好調を維持、計測制御機器(同11.1%増)がプラスに転じた一方で、電子データ処理機(同6.3%減)が減少した。その他9品目は総じて増加した品目が多かった。電極や金(同358.7%増)、機械・輸送用機器(同23.6%増)、金属部品(同18.9%増)、電子機械・部品(18.3%増)が増加した一方、化学(同52.0%減)やココナッツオイル(同34.2%減)、イグニッション・ワイヤーセット(同25.0%減)、その他製造品(同21.0%減)が減少した。

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斉藤誠(さいとう まこと)
ニッセイ基礎研究所 経済研究部 研究員

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