1969年7月20日に米国の宇宙飛行士ニール・アームストロング氏が月面に降り立ってから、もうすぐ50年が経とうとしている。そうした中、これまではフィクションの世界でしかあり得なかった「惑星間移動」や「地球外移住」が現実味を帯びてきていることをご存知だろうか。
人類にとって大きな第一歩を踏み出そうとしているのは、世界有数の実業家として知られるイーロン・マスク氏だ。今後、現実になっていくかもしれない宇宙を舞台にした不動産業や不動産投資について考えてみたい。
まだ記憶に新しい「月の土地、売ります」
1エーカー(約1,200坪)の「月の土地」が、たった2,700円で購入できる……。これは数年前、インターネットやテレビを賑わせた米ルナエンバシー社の話だ。同社CEOであるデニス・ホープ氏は、月の所有権について定められている法律が、国家の所有は禁じているものの個人の所有を禁じていないことを知り、1980年に所有権の申し立てを申請。以降、月の土地の販売と権利書の発行を生業とする「地球外不動産業」をスタートさせた。
米国だけでなく、日本国内でもルナエンバシー社から「月の土地」を購入した人は相当数いたわけだが、現状では、月の土地の所有権を法的に保証する根拠はなく、同社のメッセージを引用すると「私どもは、『月の土地』を楽しんでいただけることを目的としております。日本の不動産と同じように考えていただくと無理のある商品と思われます」と、現実的な活用を目的としてではなく、あくまでジョーク商品として販売しているようだ。
しかし、こうした「月の所有者になる」「いつか地球の外に移住する」というロマンを、単なるロマンで終わらせず実現してしまおうと考え、イーロン・マスク氏は行動を起こしているのだ。
現実味を帯びる「火星移住計画」
電子決済サービス「PayPal」の前身「X.com」の設立者、電気自動車界の雄「テスラ」の共同設立者及びCEO、太陽光発電事業の「ソーラーシティ」会長など、数々の肩書を持つイーロン・マスク氏だが、もう一つ肩書きがある。それがロケットや宇宙船の開発・打ち上げなどの「宇宙輸送」を事業とする「スペース・エクスプロレーション・テクノロジーズ(スペースX)」の共同設立者だ。
彼は2012年に同社の創業者兼CEOとして火星移住計画を打ち出し、2016年には一度に100人を運ぶことができる宇宙船開発のために数千万ドルを投資。計画の進捗次第では、なんと10年後に、最初の移住者が火星に降り立つ目論見だという。
一方で周囲からは、「そうはいっても火星移住実現には時間がかかるだろう」という意見もある。実際、同氏の試算によれば火星単体で自給自足を実現するには最低100万人の移住を必要としており、仮に100人規模の宇宙船での輸送・移住が実現したとしても、ざっと40〜100年の時間がかかってしまう計算になる。
しかし、イーロン・マスク氏は本気だ。惑星間輸送の最大の問題はコストだが、スペースX社はロケットの再利用技術にこれまでに10億ドル(約1,110億円)を投資しており、使用済みロケットブースターの再打ち上げ・再着陸にも成功している。同氏は自分たちの計画を実現するために大胆にコストをかけ、着実に成果を上げている。
宇宙船の輸送規模は加速度的に拡大していくだろう。たとえ、加速しなくても40〜100年で実現してしまうのだとすれば、これはすでに「火星移住計画は現実味を帯びている」といえるのではないだろうか。
「地球外不動産業」がジョークではない時代がやってくる
こうしたイーロン・マスク氏とスペースX社の動向を考えると、ルナエンバシー社の「地球外不動産業」も単なるジョークとして笑えない時代が、そう遠くない未来にやってくるかもしれない。
確かに、現状ではルナエンバシー社が明示しているように、「月の土地=地球外不動産」を日本国内の不動産と同じような投資対象として考えるのには無理があるといえる。現在の法律に基づく限り、土地の所有権が成立するためには、第一に「土地の所有権を証明する国家」の存在が必要であり、第二にその土地を物理的に管理・利用している必要があるからだ。現時点で地球外不動産を国家が所有することは認められていないし、物理的に管理・利用できる人間も存在しない。
しかし、近い将来、月や火星への移住が可能になり、これらの土地を管理・利用できるようになれば話は別だ。法律も整備され、所有権の有無も議論されるようになるだろう。「ご職業は?」と聞かれて「地球外不動産業を営んでいます」と答える人間が出てきてもおかしくはないのだ。
SFの小説や映画、アニメの世界だけの話と思っていた「地球外移住」「惑星間移動」の実現が、少しずつだが近づいているのは間違いない。その時代が来たときの準備として今から、地球外不動産情報の収集と、それに続く購入を検討しておくのも、ロマンがあって楽しいのではないだろうか。(提供:The Watch)
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