データ企業のPrinceonomicsは、過去3年、40カ国のあらゆる産業と生産性に対する調査を行った。その結果、中国労働者の生産効率は、最上位にあることがわかった。一方労働時間は長く、賃金は低い。経済サイト「界面」が詳しく紹介している。中国の労働市場の実態を探ってみよう。
生産効率、達成率とも「高」
まず、一つの任務を成し遂げるまでの平均日数という調査がある。それによれば最も優れているのは、ペルーで10.2日、以下2位がスウェーデン(13.0日)、3位インドネシア(13.3日)、4位 中国(13.4日)、5位 チリ(13.7日)と続いている。先進国は、14位に英国(15.4日)、26位が米国(17.4日)、30位が日本(18.1日)、34位にドイツ(20.2日)となっている。
何を基準にしているのか、任務とは何を指すのか、少しわかりにくいランキングである。中南米やインドネシアが本当に高効率なのか疑問であるし、会議や根回しの多い日本の効率はさておいても、ドイツが最下位に近いというのも解せない。
続いて、任務達成率という項目がある。最後まで成し遂げた仕事の比率とみられる。1位チェコ84.5%、2位フィンランド、3位中国81.3%、4位イスラエル、5位トルコ。中国以外は、まったく別メンバーとなっている。とにかく2つのランキングとも上位に顔を出しているのは、中国だけである。
労働時間は「長」
中国では1995年5月1日より、国際労働基準に合わせ1日8時間、週40時間制を採用している。それから20年以上経過し、実態はどうなっているのだろうか。
中山大学社会科学調査中心の「中国労働力動態調査:2017年報」によると、週50時間以上の労働をしている人は、全体の43.9%を占めた。その他の指標を見てみよう。
- 毎週の平均労働時間……44.73時間
- 毎月の平均出勤日……23.93日
- 労働者の平均年齢……37.62歳
- 労働者の平均教育年限……9.02年
- 都市家庭の収入は農村家庭収入の……2.1倍
- 専門技術を取得した労働者の比率……13.24%
また英国ガーディアン紙は、中国年間労働時間を2000~2200時間と報じた。2200時間として、OECDによる2015年の主要国労働時間調査に当てはめてみると、中国は2246時間のメキシコに次ぎ2位となる。主要国平均は1766時間、ドイツは1371時間である。
労働者の収入「低」
ドイツ銀行の発表した「2017世界物価報告」では、世界47都市の労働者1人当たり月収をランキングしている。トップはチューリッヒで5876ドルである。その後、サンフランシスコ、ボストン、ニューヨーク、シカゴ、シドニー、メルボルン、オスロ、シンガポールと続き、10位のコペンハーゲンが2958ドル。中国最大の経済都市・上海は31位で1336ドル(8444元)だった。(1元=16.93日本円) みずほ銀行中国によると、上海の2017年の最低賃金は2300元(368ドル)である。もはや最低賃金付近の報酬で働いている人はいないようだ。それでは、実際はどれくらいなのだろうか。
実際の募集要項
山東省(最低賃金1810元)における、労働者の最新募集要項を手に入れることができた。
- 招聘条件……女16~40歳、中卒以上。身体健康、経験者優先。
- 正常工作時間……週5日、1日8時間。繁忙期残業15.42元/時間。週末残業20.56元/時間。法定休日は3倍。
- 報酬……標準賃金2000元。皆勤手当250~300元、職位手当150~450元、交通費、昇給アリ。
合計で4000元~7500元。 - 工員福利 年度末奨励金500~1000元。毎月福利奨励金0~500元。春節帰郷交通費。社会保険アリ。
- 工作条件 宿舎提供。昼食、夕食無料。
- 新工員紹介手当 紹介した者が3カ月働いた場合800元を支給。もう3カ月働いた場合、さらに800元を支給。
実質は、残業込みで4000~7500元になるということである。上海は最賃ベースで山東省の1.27倍である。単純にこれを掛けると5000~9500元となり、ドイツ銀行調査の範囲内に入っている。
かつて中国の最低賃金は、実際の賃金とほぼイコールだった。それが今や実質3倍くらいに上昇している。それでもまだ世界的に見れば低い方である。当面の間、賃金の上昇は、そのまま経済成長に直結していくだろう。中国はここでも、あなどれない潜在力を秘めているように見える。(高野悠介、中国貿易コンサルタント)