知的所有権ニュース専門サイトIPR dailyは、incoPatイノベーション指数研究センターと共同で「2017世界ブロックチェーン企業特許ランキング」を発表した。2017年に全世界で公開された特許件数、発明申請件数、実用新案を含んでいる。一番件数の多いのは中国である。経済サイト「金融界」が詳しい内容を伝えた。

ナンバーワンは中国人民銀行

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(画像=Kajonsak Tui / shutterstock.com)

中国人民銀行(中央銀行)の周小川行長の講話から推測すると、中国の仮想通貨取引に対する“否定的態度”がどのように発現しようとも、中国は世界で最も進んだブロックチェーン技術を持ち続けると決意しているのは間違いない。それは特許件数の多さからうかがえる。トップ10を見てみよう。

10位 中国聯合網絡通信集団有限公司(中国)16件
9位 深セン前海達陶雲端智能科技有限公司(中国)17件
8位 中国人民銀行印刷科学技術研究所(中国)22件
7位 江蘇通付盾科技有限公司(中国) 23件
6位 マスターカードインターナショナル(米国)25件
5位 北京瑞卓喜投科技発展有限公司(中国)26件
4位 NCHAIN HOLDINGS LIMTED (Antigua and Barbuda)32件
3位 中国人民銀行数字貨幣研究所(中国)33件
2位 バンク・オブ・アメリカ(米国) 33件
1位 アリババ・ホールディングス(中国)43件

人民銀行の数字貨幣研究所と、印刷科学技術研教所を合わせれば55件となり、アリババの43件を大きく上回る。また中国はトップ10中、7つを占めている。トップ100に拡大すると件数は中国49%、米国33%となる。

中央銀行による主導権

周行長によると、人民銀行は早くから仮想通貨やブロックチェーン、分布式賬本技術(Distributed Ledger Technogy DLT)に注目し、業界とともに共同研究に乗り出していた。3年前には仮想通貨検討会を立ち上げ、そのまま研究所の成立につなげている。

その仮想通貨通貨研究所長は、2017年末には仮想通貨に対する構想をまとめていた。そして3月上旬、独自の仮想通貨DCEP(Digtal Currency Electric Payments)を開発中であることを明かした。

中央銀行ー商業銀行ー末端ユーザーに至る、中央銀行を盟主とした“法定”仮想通貨システムとその“生態圏”を作ろうとする動きである。

そのため人民銀行は、末端ユーザーの最大手、BATJ(バイドゥ/百度、アリババ、テンセント、シンドン/京東)の動きにも注意している。

BATJのスタンス

百度……2018年1月ブロックチェーンサービスを開放した。百度BaaS(Backed as a Service)プラットフォームといい、500億元の金融資産を操作できる。

騰訊……2016年5月、直系の微衆銀行を設立すると、地元の深センで金融ブロックチェーンを組んだ。平安銀行、招銀ネット、恒生電子、京東金融など31社が参加している。2017年には騰訊も独自のBaaSを発表した。この中には騰訊の特許11項目が生かされている。

アリババ……49項目ものブロックチェーン関連特許を所持している。食品安全、医療、物流関連など。それぞれのパートナー企業とともに、応用技術の取得に努めている。2018年2月には、それらの技術を越境Eコマースまで拡張すると発表した。

京東……2017年6月に「京東品質溯源防偽連盟」を、農業部、国家質検総局、工信部などと発足させている。トレーサビリティを調査する「京東ブロックチェーン偽追遡平台」を活用し、消費者権益の保護を図る。

百度と騰訊は金融、アリババと京東は商品流通に重きを置くなど、相似形が見られる。また人民銀行、BATJの外にも、シャオミ(小米)、ファーウェイ(華為)蘇寧などの国内勢、アマゾン、マイクロソフトなど海外勢も全力で疾走中である。記事は、ブロックチェーンの一切は、これからにかかっている。大いに期待しようではないか、と結んでいる。

確かに人民銀行もBATJも気合十分のように見える。そしてその動きに対抗しているのは米国である。日本に出る幕は巡って来ないのだろうか。(高野悠介、中国貿易コンサルタント)