世界消費者権利デーは1983年から毎年3月15日に設定されている。中国では1991年以降、この日に“315晩会”を開催しており、今年は28回目となる。

消費者保護の名のもとに、多くの企業における品質問題を、CCTV(中国中央電視台)が特別番組で暴露する。近年ますます注目を集めるようになり、春の風物詩と化している。

暴露される企業にとっては、公開裁判の被告席に強制的に座らされるようなものである。315晩会の歴史と今年の内容を検証してみよう。「今日頭条」以下、多くのネットメディアが取り上げた。

315晩会の略史

中国経済,CCTV,消費生活問題
(画像=PIXTA ※画像はイメージです)

ここ20年における代表的な外資に対する“戦果”を紹介しよう。

1997年 三星電子……VCDプレーヤーの修理困難。
2007年 ノキア……5500型ケータイのキーが頻繁に脱落。
2010年 ヒューレットパッカード……V3000型、V2000型ノートパソコン発火。
2010年 LG、ソニー……液晶テレビの保証期間を守らず。
2012年 マクドナルド……新旧の食材を入れ替え。
2013年 アップル……先進国とのダブルスタンダード
2014年 ニコン……D600一眼レフ、サービス規定守らず。
2015年 東風日産 上海大衆など……過剰修理
2015年 D&G、H&M、ZARAなど……染色堅牢度、PH値などで不合格。 
2017年 無印良品、イオン……放射能の影響がある地区から食品を販売。

2016年に外資企業への言及がなかったのは、杭州市でのG20首脳会議を前に、波風を立てないようにしたとみられる。2017年の無印とイオンはこじつけだったことが判明し、株を下げたのはCCTVのほうだった。

2018年、暴露された諸問題

2018年のテーマは“共建秩序、共享品質”である。消費者の分別能力を高め、生活知識を普及させ、偽物や不良品を駆逐する。

(1) フォルクスワーゲン途鋭(Touareg)……エンジンストップのトラブル。浸水したものとみられるが、VW側は責任を回避したため、修理代は20万元に及んだ。のちにリコールを届け出。素直に認めなかったことへの懲罰か。
(2) 山塞(偽もの)飲料……山東省棗庄市の食品メーカー5社。添加剤や原料の虚偽表示。
(3) 万病に効く“神薬”と宣伝……山東省某地方産の保健食品。
(4) 珠宝礼品……宝石価格のごまかし。四川省・成都。
(5) シェアサイクル……保証金返還問題。30社はすでに倒産し回収不能。
(6) 建材、水道管、排水管……品質不良。河南省、江蘇省など。
(7) 道路白線引き工事……手抜き。反射塗料不足。江蘇省、四川省、山西省など。
(8) 輸入歯ブラシ……「外国製崇拝の罠」。出血。遼寧省の女性が韓国製歯ブラシを使用したところ出血した。韓国製、日本製を調査した結果、60%の不合格品が発見された。51万6000本の歯ブラシを回収した。

その他7488件の食品や化粧品、105万の有害生物、5.2万トンの不合格原料を水際で阻止した。日韓の歯ブラシはこうした税関の活躍を強調するための導入部分のように見える。

政治的意図の存在は間違いない 米国企業の名前はなし

これらはたくさんの案件の中から厳選されたものである。政治的意図を持ってのことに間違いない。今年CCTV指摘した8項目のうち、海外に関するものは1と8、企業名の発表されたのは、フォルクスワーゲンのみだった。関係の微妙な米国からは、取り上げられていない。

それに比べ2~7の国内企業案件は、より組織的で深刻なものばかりだ。そして国内企業、とくに国有企業の統治改革は、差し迫った課題である。

国家は不断の改革を推し進める。官民ともに努力を重ね、管理監督を強化、偽物や不良品を拒絶する。“メードインチャイナ”の信頼を高め、“共建秩序、共享品質”を実現する、と記事は政府を信頼するよう結ばれている。

外国企業を槍玉にあげることは減少しつつあるようだ。しかし315晩会のインパクトを保つためにも、なくなることはないだろう。毎年必ず取り上げられる。理にかなったものではないため、完全に避け切ることは不可能である。もしものときは、昨年の無印良品のように、しっかりした反論を発信することが大切だ。(高野悠介、中国貿易コンサルタント)