日銀のマイナス金利政策の影響もあり、銀行に預けているだけでは、お金はほとんど増えない。ある程度のリスクを取らないと、リターンが返ってこない時代である。しかし、リスクを取るということは元本割れの可能性も否定できない。

そんな時代において「家にお金を入れない実家暮らし」が最強の資産運用方法ではないかという意見がある。「よい歳して実家暮らしなんて…」という意見があるのも承知のうえで、そのメリットを見ていこう。なお、本稿は実家にお金を入れない実家暮らしを想定している。

実家暮らし
(画像=PIXTA)

「家にお金を入れない実家暮らし」の家計視点のメリット

「家にお金を入れない実家暮らし」のメリットが挙げられる。もちろん、下記は家計管理における算盤勘定のメリットであり、独立することで得られる生活力、自由、充実感、苦労といったプライスレスなものは考慮していない。

(1)住宅費(賃料や住宅ローン)を払わなくてよい
「住宅費は年収の3分の1以内に収めよう」と聞いたことがあるかもしれない。一般的には、無理なく支払いができる金額は、月収の33%(手取り収入の33%というファイナンシャルプランナーもいる)と言われている。実家暮らしであれば、ここが一気にゼロになる。

(2)食費や水道光熱費の頭割り金額が低くなる
食費や水道光熱費といったライフラインは、共同生活者の人数が増えれば増えるほど、頭割り金額は低くなる傾向がある。家族の人数が倍になったからといって、電気代が倍になるわけではない。なるべく家族は集まって生活した方が、生活維持コストは低く抑えられるというわけだ。

(3)突然の相続が発生しても「小規模宅地等の特例」を使える
突然、親に不幸があった場合は10ヶ月以内に現金で相続税を納める必要がある。親の資産が不動産(実家)に偏っていた場合、ある程度の相続税がかかるのに、それを支払うキャッシュがないというのは、特に都市部で想定できるパターンだ。実家暮らしであれば、実家の相続は評価80%減になる「小規模宅地の特例」の適用範囲内となる。5000万円の不動産も1000万円の評価で済むこととなり、相続税を大幅に圧縮できる。なお、相続税の計算や「小規模宅地等の特例」の詳細に関しては、税理士などの専門家に相談して頂きたい。

年収300万円だとキャッシュフロー9倍

実際に、実家暮らしと、一人暮らしの場合はどれくらいキャッシュフローが変わってくるのだろうか。年収300万円の場合を想定して比較してみよう。なお、手取り収入は年収の80%(240万円)と仮定する。

<一人暮らし>
手取り収入 :240万円
住宅費   :100万円(家賃約8万3000円の部屋を賃貸中)
食費    :48万円(月4万円)
水道光熱費 :12万円(月1万円)
交際費   :24万円(月2万円)
通信費   :12万円(月1万円)
衣服費   :12万円(月1万円)
趣味・娯楽 :12万円(月1万円)
→差し引き20万円

<実家暮らし>
手取り収入 :240万円
住宅費   :0円
食費    :0円
水道光熱費 :0円
交際費   :24万円(月2万円)
通信費   :12万円(月1万円)
衣服費   :12万円(月1万円)
趣味・娯楽 :12万円(月1万円)
→差し引き180万円

上記のシミュレーションだと、実家暮らしは一人暮らしの9倍のキャッシュフローを実現できる。実際には、実家暮らしだともう少し財布の紐が緩むことが予想されるが、どちらにせよ大きな差だ。

特に大きいのが住宅費100万円の有無だ。100万円のキャッシュフローを生み出そうとしたら、5%運用で2000万円、3%運用で約3333万円、1%運用で1億円の元手が必要だ。そのように考えると、実家暮らしがいかに(資産管理上は)有効なツールであるかが伺える。

実家暮らしで「種銭づくり」という考え方

もちろん、本稿は極端な論調であることは否めない。しかし、資産運用は「規模のメリット」が強烈に効く分野であり、「元本が大きいほど増やすのが容易になる」のが大原則だ。そのためには種銭をいち早く築くかが要諦だが、実家暮らしがその「元種づくり」を大いに助けるのは間違いない。

物理的に実家暮らしが難しい人もいるだろうが、今のうちに実家暮らしで資産を築き、その後、その資産が生み出すキャッシュフローで高級タワーマンションを賃貸して優雅な暮らしを送る。実家暮らしが可能な人は、そのような皮算用を考えてみてもよいのではないだろうか。(ZUU online 編集部)