少子高齢化が進む中、人材市場は空前の売り手ブームが到来しつつある。名の知れた大企業に比べて、知名度や待遇が劣りがちな中小企業の中には、採用難に直面しているケースもあるだろう。今回は、そんな中小企業の採用活動をバックアップする中小企業向け助成金について紹介する。

従業員を新たに雇い入れる場合の助成金

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(写真=Jirsak/Shutterstock.com)

・トライアル雇用助成金(一般トライアルコース)
若者雇用促進法に基づく認定事業主が、35才未満の求職者に対してトライアル雇用を実施する場合、1人あたり最長3ヵ月、1ヵ月最大5万円の助成金が支給される制度だ。少ない人数でマルチタスクをこなす必要がある中小企業は即戦力を求めがちだが、こうした制度を利用することで、未経験者にも門戸を開きやすくなるだろう。なお、本助成金で支給されるのは通常だと1ヵ月4万円だが、母子家庭や父子家庭の父母を雇用した場合は最大支給額の5万円が受け取れる。

・特定求職者雇用開発助成金(3年以内既卒者等採用定着コース)
昔は「石の上にも3年」などと言ったものだが、厚生労働省の調査によると2014年3月に卒業した新卒者の32.2%は3年以内で退職している。デジタル化やグローバル化、テクノロジーの進展で世の中の流れが速くなっている現代なら仕方ないことだろう。本助成金では、3年以内に離職した既卒者を雇用し、一定期間定着させた事業主に対して助成金が支給される。

1年定着の場合は最大60万円、2年、3年定着ならそれぞれ10万円が支給される。若者雇用促進法に基づく認定企業(ユースエール認定企業)なら、いずれの場合も10万円が加算される。

・特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)
職場のダイバシティー化(多様化)が求められる中、人手不足を補ううえでも、女性や高齢者、身体障害者といった人々も活躍できる職場であることが望ましい。高年齢者や障害者、母子家庭の母などの就職困難者を受け入れる雇用主に支給されるのが、特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)だ。高年齢者(60歳以上65歳未満)、母子家庭の母であれば最大60万円、重度障害者などであれば最大240万円が支給される。

雇用環境の整備関係の助成金

・人事評価改善等助成金
安定的に雇用を維持するには、現在在籍する社員を引き留めるための施策(リテンション)を講じ、賃金や待遇面での魅力アップを図ることも大切だ。こちらは、生産性向上に向けた人事評価制度と賃金制度を整備することで、生産性の向上、賃金アップおよび離職率の低下を図る。支給額は、制度整備の助成に50万円、目標達成助成 80万円となっている。

なお、2017年6月30日以降の人事評価制度整備計画の認定申請分から「評価時離職率の計算の際に、助成を受けようとする事業所等の評価時離職率が30%以下となっていること。」という要件が追加された。

・仕事と家庭の両立に取り組む場合の助成金
モーレツ社員は今や昔。仕事とプライベート、共に充実してこそ良い仕事ができるという考え方が求められるようになっている。新卒や20代社員は就職先選びにワークライフバランスを重視するという調査結果もあり、若手の採用や引き留めのために、経営者側も留意する必要があるだろう。

仕事と家庭の両立に取り組む場合の助成金には、下記のようなものがあります。
・事業所内保育施設を設置・増設・運営するための助成金
・男性労働者に育児休業を取得させるための助成金
・仕事と介護の両立支援に関する取り組みに向けた助成金
・女性が活躍しやすい職場環境を整備するための助成金

育児や介護などの事情を抱えた人が働きやすくなるということは、ある特定の層だけにメリットを与えるという意味ではなく、すべての人が働きやすい職場を実現するということでもある。生産性や社員の定着率を向上するためにも、助成金を活用するべきだろう。

・労働時間・賃金・健康確保・勤労者福祉関係の助成金
小回りの利く中小企業という組織だからこそ、職場環境やワークライフバランスの改善に取り組みやすいということもある。職場意識改善助成金は、労働時間の削減やテレワークの導入、勤務間インターバルの導入、賃金の引き上げといった、多様な働き方を実現する中で今後求められる可能性がある取り組みを支援するための助成金だ。

価値観が多様化する中、大企業に比べて知名度の劣る中小企業であっても、柔軟で多様なキャリアパスを用意したり、在宅勤務制度などを積極的に導入したりすることで、ブランディングにつなげることができる。職場環境を改善するためにも、こうした助成金を活用したい。(提供:百計オンライン


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