「エンゼルスの大谷選手にあっぱれ!」。野球ファンには待ちに待った2018年のシーズンが始まった。米メジャーリーグではエンゼルスの大谷翔平選手が大活躍を見せているが、日本のプロ野球も例年にない盛り上がりを見せそうだ。

というのも、筆者はベイスターズの大ファンなのだが、今シーズンは横浜スタジアムでのチケットがなかなか入手できなくなっているのだ。関東近郊の他球団主催のチケットも手配しているのであるが、平日のナイターでも予約が埋まっていることが珍しくなく、特に東京ドーム <9681> はその傾向が顕著だ。

ちなみに、株式市場では昔から「巨人が優勝すると日本株も高い」「巨人が強い年は景気も良い」などと言われることがあるが、実際どうなのだろうか? 詳しくみてみよう。

巨人は「いざなぎ景気」に9連覇を達成

東京ドーム,株価
(画像=PIXTA)

巨人は2000年以降で8回優勝している。2000年と2002年に巨人が優勝したときの株式市場はITバブルに沸いていた。2007年から2009年にかけて巨人が3連覇したときは、リーマンショックこそあったがその前年の2007年は世界的な好景気だった。そして、2012年から2014年にかけての3連覇は「アベノミクス」と重なる。確かに巨人が強いシーズンは景気が良く、株価も高い印象を受ける。

同様の傾向は2000年以前にも認められる。巨人が前代未聞の「9連覇」を達成したのは1965年から1973年にかけてであるが、この時期は高度経済成長期の「いざなぎ景気」と重なっている。さらに日本が空前の好景気に沸き、株式投資ブームが発生したバブル期には1987年、1989年、1990年にそれぞれ優勝しているのだ。

巨人と東京ドーム株の相関関係

もう一つ、見逃せないのが巨人の成績と東京ドームの株価の動きだ。2月24日、今年のオープン戦の初戦で巨人はベイスターズに破れたが、3月3日から4日にかけてはスワローズに連勝、6日にはマリーンズに負けたが翌7日には勝利している。巨人が勝ったり負けたりしていたこの時点(3月7日)で、東京ドームの株価は941円と年初来安値を付けている。

ところが、その後巨人は快進撃を続け、結局11勝5敗でオープン戦の首位になった。岡本選手など新戦力の活躍と上原選手の復帰で巨人ファンの期待感は高まったことだろう。東京ドームの株価も4月9日には1054円と戻り高値を付け、3月の安値からの上昇率は12%を超えた。同期間で日経平均は5%も上げていないことを加味すると、東京ドームの上昇は今シーズンの巨人への「期待」の高さを表しているのかもしれない。もっとも、ペナントレースはまだ始まったばかりで、「期待」通りに巨人が優勝するかは神のみぞ知るところだ。

ちなみに、2017年の東京ドーム株を振り返ってみると6月2日に986円、9月15日に981円とそれぞれ安値を付けている。同6月は巨人が過去ワーストの13連敗を記録、9月はクライマックスシリーズ進出を逃すのが見えてきた時期でもある。

巨人が盛り上がれば東京ドームも「潤う」

承知の通り、東京ドームは巨人のホームグラウンドだ。その歴史は長く、1937年に巨人がこの球場(当時は後楽園スタヂアム)を本拠にして81年になる。しかし、意外に思われるかもしれないが東京ドームは巨人の運営法人である「株式会社読売巨人軍」はもちろん「読売新聞グループ」とも資本的な関係は一切ない。

東京ドームの2018年1月期の売り上げは前期比4.6%減の836億円、本業の利益を示す営業利益は同9.5%減の113億円だった。売り上げの79%を占めているのが「東京ドームシティ部門」である。同部門は東京ドームのほか、遊園地などのアトラクション、ドームホテル、スパ施設のラクーア、後楽園の商業施設「黄色いビル」などが含まれている。まさに「東京ドームシティ」は同社の大黒柱と言って良い。

ちなみに、東京ドーム部門の売り上げは145億円で「東京ドームシティ部門」の22%を占めている。ただ、東京ドームでの物販が158億円あるのでそれを合わせた「東京ドーム関連」の売り上げは同部門の46%に達する計算だ。

東京ドームで開催された前期のイベントは323件だった。その中でもメインとなるのがプロ野球の92件、コンサート144件である。プロ野球の92件のうち63件が巨人戦だ。巨人の球場使用料は「推定」で一試合あたり4000万円から5000万円程度で、年間約30億円程度を東京ドームに支払っているとみられる。

さらに大きいのは東京ドームの看板広告の収入である。これも巨人戦での広告効果を狙ったものだろう。物販に占める割合も巨人戦が多いことは想像に難くない。ことわざで「風が吹けば桶屋が儲かる」と言われるように、巨人が盛り上がれば東京ドームも「潤う」関係がイメージできるだろう。

野球は「コンテンツ・ビジネス」の可能性を秘める

ところで、冒頭でもふれたが、米メジャーリーグのエンゼルスに移籍した大谷翔平選手の活躍は目覚しいものがある。野球評論家の中には大谷選手の活躍を認めようとせず、批判する人さえいるが、筆者は純粋に野球を愛する一人の人間として、大谷選手の活躍を素直に「あっぱれ!」と賞賛したい。

そもそも、若い才能のあるプロ野球選手が次々と米国に渡るのは、なぜか? そこには「世界一の野球リーグ」があり、日本とは比べようもないスケールのスポーツビジネスがあり、稼げる金額が日本より遥かに大きいことも背景にあるのではなかろうか。

MLBを見ていると、野球は「コンテンツ・ビジネス」としての大きな可能性を秘めていると感じざるを得ない。筆者は、日本の球界も「野球」をコンテンツ・ビジネスとして大きく成長させるための施策が求められる時代が到来するのではないかと考えている。野球の経営球団はソフトバンクや楽天、ディー・エヌ・エーなど社会構造の変化に沿ってIT系の会社が増えてきたのは周知の通りである。 ディー・エヌ・エーがTBS時代の赤字を黒字経営に改善したことも話題になった。

ソフトバンクは福岡ドーム(現在の福岡ヤフオク!ドーム)を買収し、ディー・エヌ・エーも横浜スタジアムを買収した。地域に密着し、ブランディングを高め、日本の野球ビジネスを「総合コンテンツ」として拡大するには、球場と球団がより一体化する必要があるのだろう。

日本のプロ野球の盟主である巨人も自前の球場を持つ日が訪れるかもしれない。東京ドームはその有力候補となる。1988年に日本初の屋根付きスタジアムとしてオープンした東京ドームも30年が経過しており、老朽化も目立ち始めた。東京ドームには1405億円の有利子負債があり、なかなか大規模再開発には着手しづらいのが実情のようだ。

日本の球界全体が「コンテンツ・ビジネス」として成長するための鍵を握る巨人、そして東京ドームの株価を引き続き見守っていきたい。

平田和生(ひらたかずお)
慶応大学卒業後、証券会社の国際部で日本株の小型株アナリスト、デリバティブトレーダーとして活躍。ロンドン駐在後、外資系証券に転籍。日本株トップセールストレーダーとして、鋭い市場分析、銘柄推奨などの運用アドバイスで国内外機関投資家、ヘッジファンドから高評価を得た。現在は、主に個人向けに資産運用をアドバイスしている。