買い物時に現金を使わない「キャッシュレス決済」の利用が飛躍的に高まりそうだ。経済産業省はこのほど、2025年までに現在は2割程度のキャッシュレス決済の比率を40%に引き上げ、将来的には8割までの拡大を目指す提言をまとめた。関連企業に商機が広がる。
キャッシュレス決済はクレジットカードや電子マネーを使った支払い方法だが、現金主義の強い日本での普及率は他のアジア諸国や欧米を大きく下回る。拡大するインバウンド(訪日外国人観光客)に対応するためにも、政府は遅れを取り戻す考えだ。
昨年の訪日客が714万人と前年比で4割増えた韓国では、キャッシュレス決済の比率が9割近い。QRコードの活用が盛んな中国でも6割程度と日本の3倍で、観光客がカードで買い物できない店での購買機会の損失もばかにできない額に上ると推定される。
店側にとっても、脱現金化はレジ業務の削減や現金輸送のコストを抑制できるメリットがある。経産省は近く金融機関や小売業を巻き込んだ産官学の協議会をつくり、キャッシュレス決済の浸透策を取りまとめるという。
こうした中、株式市場では関連銘柄に思惑が向かいつつある。QRコードの読み取りアプリを手掛けるメディアシーク(=メディアS、4824・M)は、今年に入って既に3倍近くに値上がりしている。バーコードリーダーのオプトエレクトロニクス(6664・JQ)も高騰した。
物色が広がりをみせる中、「次の銘柄」を探ってみた。
まずは決済サービスのビリングシステム(=ビリングS、3623・M)。同社はスマートフォンを使った決済アプリ「ペイビー」=写真=を手掛ける。利用者は氏名や支払い方法を登録しておけば、買い物時に店頭でQRコードやバーコードを読み取って暗証番号を入力するだけで会計が済む。
ペイビーの特徴は、導入企業の独自ブランドにカスタマイズして提供できる点。これが受け、地銀を中心に対応金融機関が拡大し、今12月期中には全国64地銀(第一地銀)の半数程度に広がる見通しだ。また、多くの中国人が使うモバイル決済機能「ウィーチャットペイ(微信支付)」とも連携し、訪日客との親和性が高い。
ビリングSの株価は昨年12月21日の高値8085円をピークに、今年2月には4000円割れの水準まで調整。その後はレンジが収縮する三角もちあいとなっている。今期は連結営業利益が1.7億円(前期比30.7%減)に落ち込む見通しを示しているものの、前期も保守的な会社計画が上ブレした経緯がある。依然として高値から4割超引かれた4000円台の水準は魅力的だ。
キャッシュレス社会の到来とともに、さまざまな決済手法に対応した機器も必要になる。特に日本は電子マネーの種類も多く、その意味でフライトホールディングス(3753・(2))が7月から販売する多機能型の決済マシーンは注目だ。主力のモバイル向けで積み上げた実績を生かし、満を持して据え置き型に参戦する。株価は2月の年初来安値570円を底に下値を切り上げつつある。
あらかじめ入金して使うプリペイドカードも、キャッシュレス決済の一つ。バリューデザイン(=バリューD、3960・M)は飲食店やスーパー向けにカードを発行し、残高を自社のサーバーで管理する。初期売上に加え、カードの利用に応じた利用料を得る仕組みだ。取扱高が伸びる中、このテーマの有力銘柄に躍り出る。株価は1月高値に対する戻り高値を直近で奪回した。(4月12日株式新聞掲載記事)
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