マネジメントの仕事は組織を指揮して結果を出すことです。より良い結果を出すためには当然組織としての成長が必要で、そのために必要不可欠なのが目標の設定です。しかし、目標を設定すればそれでいいというわけではありません。ここではファーストリテイリングの柳井正氏や、経営共創基盤CEOの冨山和彦氏の言葉を紹介しながら、正しい目標設定の考え方とそれがもたらす効果を解説します。

「目標の明確化と共有」はチームの基盤になる

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(写真=DedMityay/Shutterstock.com)

チームを作るためには、リーダーは組織全体の目標の明確化と共有に尽力しなくてはいけません。
引用:『経営者になるためのノート』(P116)

柳井氏は2015年に出版した『経営者になるためのノート』の中で、このように書いています。

チームがチームであるためには、メンバーが同じ方向を向いて動くための何かが必要であり、それこそが目標です。しかしこれが曖昧なものだったり、目標をリーダーだけが認識しているようでは意味がありません。誰もが「どう考え、どう行動すればいいのか」が理解できるような目標を設定し、それを全てのメンバーが共有する必要があります。そのため柳井氏は頻繁に店舗を回って社員と直接対話をしたり、「経営者になるためのノート」を全店長に配布したり、毎年元日には全社員に向けて「年頭挨拶と年度の方針」を送るなどして、自身のビジョンと価値観の浸透に努めているのです。

「明確な目標設定」は組織を強化する

経営共創基盤CEOの冨山氏は東日本大震災後にリリースしたレポートで、同社の経営諮問委員長である伊藤邦雄氏の「大震災後の企業の対応は素晴らしかった」という発言に対して次のようなコメントをしています。

日本の共同体型の組織は現場力があり、このような組織は共同体内にきわめて明確に共有されたゴールを設定されると強いんです。各持ち場で判断して突っ走れる。
引用:共創(IGPIレポート) vol.7

「共同体型の組織」とは、組織のメンバーの満足追求を目的とした組織を指します。一方、外的な目標を達成するための組織を「機能体型の組織」と呼びます。日本のいわゆる家族的経営のような経営形態は共同体型の傾向があるとされています。機能体型の組織のように目標そのものが組織の前提になっていないため、得てして共同体型の組織は目的が曖昧になりがちです。しかし結びつきという点では機能体型の組織よりも強いため、一度明確な目標が設定されると一致団結してパフォーマンスが上がるのです。

これは会社という組織にとって「明確な目標設定」がいかに重要かということを示しています。「どう考え、どう行動すればいいのか」の目安となる目標が曖昧なままでは、組織のメンバーは迷ってしまいます。その結果、日本的な組織の悪癖である根回し・すり合わせ・お伺いを延々と繰り返すことになります。これを防ぎ、組織のパフォーマンスを引き上げるためにも、「明確な目標設定」が必要なのです。

「明確な目標設定」が人を育てる

また「明確な目標設定」は人の成長についても重要な役割を果たします。人が会社という組織の中で成長するためには、上司から新しい仕事を任せてもらい、その仕事に挑戦してみることが大切です。しかし大抵の場合、新しい仕事に挑戦すれば、最初は完璧とは程遠い結果が出ます。このときに重要になるのが「明確な目標設定」です。

目標が曖昧にしか設定されていなければ、自分の仕事の結果が理想の状態からどれくらい離れているのか、何ができていて何ができていないのかが把握できず、仕事のやり方や行動の変え方が分かりません。一方ではっきりとした目標が設定されていれば、自分の仕事の不足分も明確に把握できます。仕事のやり方や行動の改善は、より良い結果と本人の成長につながります。

このように「明確な目標設定」は人材育成にも役立つということが言えるでしょう。

マネジメントは目標の明確化にこだわろう

目標設定が明確になればなるほど組織内で共有がうまくいき、組織のメンバーも行動しやすくなります。また、自分の仕事の結果と目標が求める結果とのギャップも把握しやすくなり、成長のための正しい努力にもつながります。目標設定を明確にするのは、組織の責任者です。組織を成長させてより良い結果を出したければ、まずは目標を明確化することにこだわりましょう。(提供:マネジメントオンライン

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