組織を率いるリーダーの仕事は、ビジネス界でもスポーツ界でも同じです。チームの頭脳となる監督は、さながら会社の経営者のような役割を求められます。ここでは元サッカー日本代表監督岡田武史氏、青山学院大学陸上競技部・長距離ブロック監督である原晋氏の選手のマネジメント方法や言葉を紹介しながら、リーダーが知っておくべき2つの仕事を解説します。

監督の仕事は「決断」だけ

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(写真=rnl/Shutterstock.com)

「監督の仕事って何だ?」といったら1つだけなんです。「決断する」ということなんです。
岡田武史 

2009年12月11日に早稲田大学で開催された「働く杯」の特別公演で、岡田氏は監督の仕事についてこのように語っています。スポーツに限りませんが、Aの選択肢を選べば試合はこうなる、Bを選べばこうなるという法則はありません。しかもグラウンドにおける最高責任者は監督です。誰かに決断を委ねることはできません。たった一人ですべての責任を負う覚悟を持って、経験と思考と直感を信じて決断しなくてはならないのです。

もともとスポーツには不確定な要素が多いため、いつも正しい決断ができるとは限りません。しかし岡田氏はその確率をできるだけ上げるために、「この決断をしたら誰かからこんなことを言われるだろうな」「この決断をしたら、あの人はどんな顔をするだろうな」といった私心を一切捨て、ただ純粋にチームの勝利のことだけを考えて決断に臨むのだそうです。私心をできるだけ減らすためにも、選手と酒を飲んだり、選手の結婚式の仲人をするなどの個人的な付き合いは一切行いません。確かに孤独かもしれませんが、それが日本代表監督を務めることだと岡田氏は言います。

決断が仕事だから、その仕事を全うするために覚悟を持ち、孤独を貫く。これは会社の経営者に求められるものと全く同じです。

青学流「目標設定術」

2015年〜2018年の箱根駅伝4連覇を成し遂げた青山学院大陸上競技部長距離ブロックを率いる原氏は、もともと中国電力で「伝説の営業マン」と呼ばれるほど腕の立つビジネスパーソンでした。駅伝の指導者になってからも「ビジネスも駅伝も同じ」と考え、ビジネスパーソンとしての経験を活かしているのだそうです。特に原氏が選手たちに徹底させている目標の設定方法は、そのままビジネスの世界にも応用できるものとなっています。「青学流目標設定術」のポイントは以下の6つです。

1.選手一人一人が目標を設定し、管理する。
2.目標は年単位・月単位・週単位で設定する。
3.目標は紙に書き出す。
4.目標は数値で管理し、期限を決める。
5.目標から逆算して日々の練習、行動計画を立てる。
6.年単位・月単位・週単位・日単位で6人程度のグループミーティングを行い、互いの進捗状況をチェックする。

会社組織の中で個人が成長するためには、明確な目標設定をしたうえで結果と目標のギャップを把握する必要があります。自分が出した結果がどれだけ目標と離れているかが具体的にわかるからこそ、次に何をすればいいかが明確になるからです。青学流目標設定術は、この基本に忠実です。1〜5のポイントはどれも目標をできるだけ明確に設定するためのものですし、4は結果を具体的に評価するために必要不可欠な作業です。6のポイントは結果と目標のギャップを客観的に理解できる場になるとともに、自分では気づけないような解決策を発見する場にもなります。

こうして絶えず目標を意識していれば、それは行動の指標となり、着実に個人の成長につながります。リーダーの仕事はこうした「目標を明確に設定する→目標に基づいて行動する→結果と目標のギャップを把握する→目標を明確に設定する……」というサイクルを作ってやることです。それが個人と組織の成長につながり、やがて組織の業績向上につながるのです。

「決断」と「目標設定」がリーダーの仕事

岡田氏と原氏は「決断」と「目標設定」という2つの仕事の大切さを示してくれています。非常にシンプルな仕事ではありますが、岡田氏が言うように決断には「全責任を負う」という覚悟が必要ですし、正しい目標設定のためには青学のように細かな管理が必要です。一朝一夕に全うできる仕事ではありません。しかし全うできなければ組織のパフォーマンスを引き上げるリーダーになるのは難しいでしょう。リーダーの仕事として「決断」と「目標設定」をしっかり意識して、日々の仕事に取り組むようにしましょう。(提供:マネジメントオンライン

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