2018年の中国消費者金融業界は、当局の監視が厳しく“強監管年”となるだろう。業界の発展は、楽観視できない。現在は、医療・美容、教育、不動産賃貸などの場面で激しい融資競争を繰り返しているが、新しい情景が見えてこないことには、将来はない。ターゲットはどの業種だろうか。それは、駐車場、幼稚園、墓地などである。経済サイト「一本財経」が伝えた。以下それら業種の“有望”ぶりを見ていくことにしよう(1元=17.15日本円)。
個人駐車場 手数料4%台で分割払いが登場
最近、自動車ローン熱の背後に、新興の融資モデルが流行し始めた。それは個人駐車場の分割払いである。
北京の例を挙げよう。第五環状線とその外側近辺の駐車場価格は260~340万円もする。中心部の便利な場所ともなれば680万円~1000万円にもなる。
消費者金融のロジックの中心とは、分割払いを可能としたことにある。大都市の駐車場価格は、はなはだしい場合、自動車の車両本体価格と変わらない。ここはまさに金融サービスの出番である。駐車場はそのまま抵当に充てられるため、価格の70~80%までの融資の即決が可能だ。
某社のパンフレットを見ると、分割手数料率は12回4.58%、24回4.37%、36回4.03%となっている。消費者金融にとって、焦げ付きリスクの少ない非常に有望な貸出先だ。この市場規模は少なくとも1兆7000億円(1000億元)とみられている。
墓地 葬祭業は不動産、半導体と並ぶ「三大暴利業種」
墓地の価格は、マンションや10平方メートルに満たない駐車場に比べ高額だ。全国各地で墓地の価格は暴騰している。狂奔とも呼べる状況となり、ほとんどの地方で住居用不動産の価格上昇率を上回っている。
報道によれば、南京市普覚寺陵園の平米当たり価格は地マンション相場の20倍である。また河北省の涿州家族墓地は6300万円で売出されている。墓地を必要としている人は、自嘲気味にこう言う。「死ぬことができないようにすべきだ。」
「中国民政統計年鑑」によれば、葬儀関連消費は、毎年18.9%のペースで上がっている。いま葬祭業は不動産、半導体と並ぶ“三大暴利業種”と呼ばれている。
中国全体の墓地市場規模は、4兆4600億円(2600億元)と見られている。
幼稚園 園長の8割は女性、離婚経験者が多い
2015年、二胎(二人目の子)政策が始まった。この影響により、ベビー・マタニティー市場(出産費用含む)規模は、2015年の34兆円から、2018年には1.5倍の51兆円まで膨らむと考えられている。
ここではもう少し先の幼稚園について考察しよう。幼稚園の数は需要を先取りして増加している。2020年には、全国で30万カ所、そのうち20万は民営になると見られる。
民間幼稚園への貸付けは、消費者金融にとってまだ未開拓分野だ。幼稚園は病院とよく似ている。公益性が高く、抵当は簡単に回収できない。幼稚園経営者の資金手当ては、一般に銀行だろうが、個人ローンは500万円までである。
幼稚園開設には、校舎の整備、スクールバスの購入、設備や道具の購入など多額の出費が見込まれる。1年に100万元として20万校で3兆4300億円(2000億元)の規模となる。
これら幼稚園の園長は80%が女性で、しかも離婚経験者が多い。教育程度が高い上、責任感は強く、安易な借金に流されることはない。しかしだからこそ消費者金融業界は、闘志を燃やしているという。
中国人の金融リテラシー
消費者金融業界には、切り込んでいくべき業界がまだたくさんあった。いずれも小さな情景ではない。駐車場1000億元、墓地2600億元、幼稚園2000億元というすさまじい規模である。
消費者金融業界は、新しい情景はいくらでも発掘できると自信を見せている。上帝(中国の神)は1枚のドアを閉めれば、必ずもう1枚の窓を開けてくれる、と言われるように、中国では、天上も天下も金融には引き締めなどないのである。そして消費者金融は、停滞することはあっても、勢いを遮ることはできない、と記事は結ばれている。中国には、人間は金融をやってこそ一人前という風土がある。日本とは金融リテラシーの高さが別次元なのだ。(高野悠介、中国貿易コンサルタント)