資産運用の基本のひとつに「分散投資」がある。特に、日本の資産だけでなく外貨や外貨建ての資産も合わせて持つことが重要だとされているが、それはいったいどういう理由からなのだろうか。

資産を外貨建てに広げれば、リスクを分散できる

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(写真=Number1411 / shutterstock.com)

資産運用において、100%安全で有利に増やせる運用先は存在しない。そのため、預貯金だけでなく株式や債券などに分散しておくことが重要だ。お金の置き場を分散しておけば、どこかの金融市場でなんらかの金融ショックが起こった時でもダメージを小さく抑えられるし、別の市場が急成長したときもその恩恵を受けることができる。

ただし、日本の資産だけに分散しても、その効果は限定的だ。というのも、経済規模を示すGDP (国内総生産) で日本が世界全体に占めるシェアは、わずか約6.5%。10%にも満たない経済の中で分散させておくより、広く世界経済に分散するほうがはるかに効果的だ。

周知の通り、日本は少子高齢化と人口減少が続いており、人口が増えている若い国に比べると将来経済が縮小する可能性が高くなる。私たちは日本に住んで、日本で働き、生き方も働き方も日本リスクを背負っている中で、資産まで100%日本ではリスクが偏りすぎているといえる。資産の一部ぐらいは外貨や外貨建て資産に置いておくのがむしろ安全といえるだろう。

選択できる金融商品が増え、分散投資の幅が広がる

分散投資を考える場合、投資対象を外貨や外貨建て資産に広げることで、選択できる金融商品の種類も大幅に増えることになる。例えば、日本以外の株式に目を向ければ、先進国中心でリスクを抑えたり、好調な米国株に絞ったり、新興国を加えて積極的にリターンを狙うなど、選択肢が大きく広がる。

債券の場合も、日本の債券だけに絞っていると、どうしても国債中心にならざるを得ないが、海外債券に目を向ければ、比較的リスクの低い米国債を購入したり、ハイリターンを狙えるハイイールド債や新興国債券などに投資する投資信託商品を選ぶこともできる。海外債券の指数に連動し幅広く分散投資ができる投資信託もあり、自分が取れるリスクに応じた商品選びや柔軟なポートフォリオの設計も可能になるのだ。

インフレ時に資産を守ることができる

外貨や外貨建て資産を持たない人の多くは、その理由として「為替変動リスクが大きい」ことを挙げる。確かに、米ドルに対しての日本円は、2011年には一時75円台まで下がったが、4年後には125円を突破した。ドルやドル建て資産を持っていると、わずか数年で価値は約1.7倍も動いたことになるので、怖いと感じる人がいても無理はない。

加えて、日本は長くデフレ経済が続いており、2%という政府の物価上昇目標にさえ届かない状況であるために、インフレへの危機感は薄くなってしまっている。確かにこうした状況が永遠に続くなら、資産をすべて円建てで持っておくことにも一定の合理性はあるといえるだろう。

しかし、経済がインフレに転じれば、日本円の価値は下落することになる。こうした状況が起こってしまってから資産の一部を外貨に替えようとしても、すでに円安は進んでいるので不利なレートで外貨を購入しなければならないことになる。

外貨を含めて分散投資をしていれば、インフレになったときのダメージも低減できる。外貨や外貨建て資産を含めて十分に分散しておくことも、大切な資産を守るために私たちができる対策のひとつだといえるだろう。(提供:大和ネクスト銀行


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