中国、京東/JDの2018年第一四半期決算が発表された。売上は1001億元、前年比33.1%のプラス、利益は15億2000万元となり、これで8四半期連続で利益を計上した。しかしこの発表後、株価は下落した。その原因は利益率が予想を下回ったこと、研究開発支出の急増という。ニュースサイト「今日頭条」「界面」などが伝えた。京東の描く未来を見ていこう。首位アリババとの差は詰められるのだろうか。
人員は半分、1日2~3時間の勤務を目指す
4月中旬、スペインのマドリードで開催された世界小売業者会議の席上、創業者の劉強東は、未来の京東について言及した。
それによると現在抱えている16万人の従業員を将来は半分の8万人にする。しかも彼らの労働時間は1日2~3時間で済む。これこそAI技術に覆い尽くされた京東の描く将来像であるという。
残り8万人分の仕事はどうなるのだろうか。その大多数は配送、倉庫管理の人員だ。ここではどうがんばったところで人的効率アップは限定的なものに過ぎない。AI時代には大部分、自動機器に取って替わられるのは必然である。
第一四半期の研究開発費は前年比87%も伸び、売上比は1.7%から2.4%に上昇した。重点分野はAI、クラウドコンピューティング、ビッグデータ、ブロックチェーンなどだ。これらを駆使して新しい京東を目指す。ハイクラスの人材をヘッドハンティングし、欧州と米国にも研究センターを作る。しかし株式市場の理解はまだ得られていない。
第三者(他社)物流をメインに
もっと現実的戦略として物流が注目される。5月上旬、劉強東は「京東物流」にはまだ本当の競争相手はいなかったと述べた。そして今後5年間かけて、第三者(他社)物流の請負業務を、自社ネット通販の物流業務より増やしてしまおうというのである。
昨年、京東物流は第三者への第一次開放を行った。すると第4四半期にはみるみる売上が増加した。京東物流は、このために半年前から大量の倉庫を新設していた。そのキャパシティーが、あっという間に埋まってしまったのである。
今後は、1四半期単位で倉庫を新設していく。ただし安定した使用率の見込める範囲にとどめる。実は京東物流とは、全国物流の資格を持つ、唯一の会社なのである。つまり荷主にとっては最も利便性が高い。京東もこのアドバンテージを活かし、冷凍、冷蔵物流、短距離O2O物流、跨境物流などを全国に波及させていく。
“京東到家”は日系スーパーも続々利用
ウォルマートは2016年10月、「京東到家」という京東の宅配システムに参加した。互いにメリットは大きく、昨年までに18都市134店舗が「京東到家「を導入、今年に入りさらに12都市の50店舗が参加した。
イオン <8267> はこれより早く2016年1月から、北京、天津、青島、武漢、広州、深センの店舗から「京東到家」の導入を始めている。
湖南省・長沙市で4店舗を展開する平和堂 <8276> の五一広場店には、昨年11月、京東のオフライン店舗「京東の家」が出店した。スマホなどデジタル機器を中心に、図書や旅行など、文化的体験のできる店を目指す。
また上海の日系スーパーも、まもなく「京東到家」との提携に踏み切るもようだ。ウォルマートやイオンでは提携効果によって、ネットスーパーの利用客が大幅に増えている。実体店にとっては駆け込み寺のような存在なのだろうか。
アリババに比べ、日本での知名度は薄い京東だが、このような形で日本企業との接点を増加させていた。今後は、初めから配送を京東に任せるという考えでの中国出店もあり得るのではないだろうか。(高野悠介、中国貿易コンサルタント)