かつてはそば一杯分程度の値段だった、娯楽大衆「浮世絵」。その後、輸出用陶器の包み紙として使用されていたものに海外で注目が集まり、ゴッホやゴーギャンなどの画家たちが作風をまねるなど、「ジャポニズム」と呼ばれるブームが巻き起こりました。

このように日本で生まれ、その後海外で大きな評価を得て、再び日本に逆輸入されるケースがあらゆる分野で起きているのをご存じでしょうか。今回は、逆輸入について考えてみましょう。

2017年12月、満を持して銀座にオープンした「日本製スーツ」

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(写真=Pressmaster/Shutterstock.com)

2017年12月にオーストラリアの「THE CLOAKROOM」が銀座にオープンしました。同社では、オーダーメイド型のスーツを取り扱っています。日本の職人技術の高さに注目し、主力商品は日本で製作しているそうです。

同社ではお客さまの話をじっくり聞いたうえで、製品を作るといいます。着た人のシルエットがより素敵になると評判のスーツはスポーツ選手や芸能人などからエグゼクティブまでさまざまな層に受け入れられています。

日本はもともと着物文化でしたが、このように海外発祥のスーツが日本の職人の技術でより上質になっているというのは、日本人の職人技術の逆輸入だといえるでしょう。

日本スタイルを取り入れて大成功した「コーヒー」

次ににお伝えしたいのは、コーヒーです。コーヒーは日本発祥ではありませんが、なぜコーヒーが逆輸入だといわれるのでしょうか。その理由はある有名なコーヒーショップだといわれています。

2015年より日本でも進出が開始された、アメリカ生まれのコーヒーショップ『ブルーボトルコーヒー』。コーヒー業界のアップルとも言われ、六本木や品川、中目黒などオフィスが並ぶ街を中心に、8店舗が展開しています。

一見日本とは何の関係もなさそうですが、実はそのルーツとなっているのは日本の喫茶店だと言われています。1杯ずつていねいにコーヒーを入れる、日本の喫茶店でよく見かける独自のスタイルは海外では珍しく、早くておいしいもいいけれど、味わいよく飲めるのが良いとアメリカでウケて、大きな成功を収めています。

日本を代表する「あの名曲」も最初の評価はいまひとつだった?

日本人の中で、世界で最も有名な歌手の一人に坂本九さんがいます。坂本九さんの代表曲といえば、『上を向いて歩こう』ですよね。1度は聴いたり口ずさんだりしたことのある人もいるのではないでしょうか。同局は「スキヤキソング」として海外でもヒットし、何と日本人を含むアジア圏の歌手としては唯一ビルボード誌の1位を獲得した楽曲としても有名です。

実は日本でのリリース当初は数字こそ悪くなかったものの、あまり高い評価は得ていなかったのです。不良のイメージが強かったロカビリー風の歌い方が原因とも言われていますが、その後、海外の大ヒットにより状況は一変します。これを機に、現在に至るまで、多くのアーティストによって歌い継がれる日本の代表曲になりました。

アニメや特撮など日本生まれのコンテンツにハリウッドも注目

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(写真= RYUSHI/Shutterstock.com)

スピンオフ作品も含めて、8本もの映画が作られた『トランスフォーマー』。日本でも人気のシリーズ映画ですが、アメリカのアニメを実写化したものだと思われている人が多いかもしれません。しかし、実はもともと日本のおもちゃだったのをご存じでしょうか?

当時タカラ(現タカラトミー)から売られていた変形ロボットを、アメリカの玩具メーカーハズプロが売り出したのをきっかけに、北米でヒット。その後、今の人気につながっています。

日本を代表する特撮映画の『ゴジラ』も、すでに2本がハリウッドで映画化され、その続編2本も計画されています。さらに、日本はもとよりアジア全域で大ヒットした新海誠監督のアニメ映画『君の名は。』も、J・J・エイブラムスが監督を務めてハリウッド映画化されることが決定しています。

海外でも日本のアニメや漫画、特撮は子供のものというイメージが強くありました。しかし、それらを見て育った世代がクリエイターとなり、このような日本のコンテンツを題材に新たな作品を生み出しています。

世界で初めての乾電池も国内では役立たず扱い

今では欠かすことのできない日用品のひとつに、乾電池があります。でも実はこれ、1885(明治18)年に日本人が初めて作ったものということはあまり知られていないのではないでしょうか?

この乾電池を発明したのは、屋井先蔵さん。その時のエピソードがなかなかユニークで、高校受験に遅刻して失敗したことがきっかけだったのだとか。時間に遅れないようにするために、電力で連続動作する「連続電気時計」の開発に取り組み、そのときに生まれたのが世界初の乾電池でした。

しかし、ここから度重なる不幸が彼を襲います。まず、お金がなかったため発明した乾電池の特許を取得することができませんでした。また、乾電池そのものも「怪しい」と思われ、正確に動くわけがないと言われ全く売れませんでした。そもそも、当時は乾電池を使った製品がほとんどなかったことも、売れなかった原因だと言われています。

さらに、その乾電池を見た外国人が目を付け、外国人が「自分が発明したものだ」と主張されたことから世界初の発明ということが長らく広まりませんでした。不幸な生い立ちとも言えそうな乾電池ですが、この発明がなければ誕生しなかった製品も多数ありそうですね。

「おもてなし」のきめ細やかな日本の文化がヒットのきっかけに

これまでさまざまな例をご紹介してきましたが、他にも「寿司」や「G-SHOCK」など、海外で大ヒットして逆輸入に近い形で話題となる文化や商品が多数存在しています。

こうしたヒットの要因として、東京オリンピックのプレゼンテーションでも話題になった「おもてなし」に通ずる、日本人特有のきめ細かな美学が関係しているのかもしれません。日本人の細やかさや配慮、相手を思う気持ちなどが製品やサービスとなり、世界の人たちの心をさり気なく掴んでいると言えるのではないでしょうか。

ある一面から見て上手くいかなかったものも、見方や文化、時代が変われば評価が得られる場合もあります。日本にいると、ついつい日本の中でどう浸透させていくのかに意識が向きがちになりますが、世界に目を向けると、実は大きな広がりを見せているものもあります。世界でアレンジが加わり、日本に戻ってくるものもあるかもしれません。このようにして、日本の文化が世界で浸透し、受け入れられるのは嬉しいものです。あなたの身の回りにも、実は逆輸入したものがあるかもしれません。(提供:J.Score Style


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