最近中国では“空巣青年”が急増している。故郷を遠く離れ、親しい人もなく、大都市で孤軍奮闘している青年たちのことだ。いつも巣を空けているという意味である。

青年は一人暮らしを欲した。そして中年になっても一人暮らしを好んでいるとすれば、最後に独居高齢者となるのは必然だろう。

お隣の日本では、単身世帯が26.9%(全4995万世帯中、1343万世帯/2016年)と3割に達しようとしている。そして、少子高齢化とネット化の連鎖により巨大な「お一人様市場」が形成されつつある。日本の各事業者はここにまったく新しい商機を見出している。

中国は日本の後追いしているように見える。経済サイト「聯商網」が特集記事を載せた。問題点はどこにあるのだろうか(1元=17.29日本円)。

独身人口2億人の衝撃

中国経済,おひとり様消費,高齢化
(画像=PIXTA)

中国でも2001年には早くも“単身女性経済概念”が紹介されていた。彼女たちは、広告・出版業やメディア、またはエンターテイメント業界に属し、作品とサービスの生産者兼消費者だった。独身で高収入、理想的な消費者のイメージだった。

それから17年後、米国のBoston Consulting Groupとアリババは「2017中国消費趨勢報告」を共同で発表している。それによれば、中国社会は有史以来最大の“単身潮”(独身者増加の流れ)を迎えている。

現在、中国の独身人口は2億人に近い。これはロシアと英国の総人口に匹敵している。そのうち35歳以上の独身者は、10年前の4倍に激増した。この層はすでに5000万人となっていて、全体の21%に相当する。

激増した主要な原因は、個人的価値観の追究が、日を追うごとに重要視されるようになってきたことにある。独身女性の36%は、結婚することだけが幸福とは限らないと答え、80%はむしろ独身でいたい、急いで結婚したくないと答えている。便利で気軽な上に、より高いレベルの消費生活も可能だからだ。

男性が多く巨大都市に集中、女性は高収入

もう少し詳しく見ていこう。

昨年8月発表された「単身撞見狗」というデータでは、男性が独身者全体の73.4%を占めている。女性26.6%の約3倍も多い。一人っ子政策の引き起こした、男女比のアンバランスが影響している。

また地域別では上海が最も多く、福建省、安徽省、江蘇省、浙江省と続いている。これを独身青年に限定すると、深セン307万人、北京300万人、広州289万人の順となる。

独身者たちの収入はおおまかに、
3000~5000元 50%
5000~8000元 30%
8000元以上 10%
となっていた。8000元以上の人は男性より女性のほうが多かった。

また英国の市場調査会社ミンテルは「中国独身消費者に対する営業2017」というレポート発表している。ここでは独身者の“強烈”な自我に対して、注意を喚起している。自他の認識に差のあることが多いというのだ。

例えばあるグループの独身男性たちは、60%の人が自分は責任感が強いと評価した。しかし他者による評価では49%であった。女性独身者の場合、自己評価57%に対して、他者による評価は40%と、さらに差は開いた。自我の強い人が多いのである。

有望な商品群は、やはり日本の後追い?

こうした2億人の独身消費者群が、経済をけん引していく。彼らの消費能力は高い。しかも、これまでの分析のように、自己の世界を持っている上、情緒にも流されやすい。個性的なのである。その反面、価格はあまり気しない。

彼らは一体どんな商品を求めているのだろうか。各カテゴリーにおいて需要喚起が活発となっている。

思い浮かぶのは小型家電、輸入食品と飲料、便利な即食食品、一人用のフードデリバリーなどである。このうち小型家電の市場は年平均12%ペースの成長を続けている。

また一人用KTV(カラオケ)レストランの一人用席、無人コンビニなどが重宝されるだろう。

生活スタイルは、一人で住み、食事をし、娯楽も一人で行う。単身者用小型マンションが増加する。生活用品店では女性向け商品の売り上げが11倍に増えているという。

旅行業界では一人旅需要が増加している。2014年8.3%だった一人旅は2016年には15%と倍増した。

心理学者によると、2009年に11月11日独身の日セールが始まったころは、みな独身、孤独であることを自嘲していた。それが現在は単身生活を受け入れ、自由と開放感を享受するようになったという。

どうやら程度をどう捉えるかは別にして、中国のお一人様市場は、日本の後追いになっていることは間違いなさそうである。この記事もそれをはっきり肯定している。つまり日本企業には、中国市場まで含めてお一人様市場の金鉱を採掘できるチャンスがあるということである。(高野悠介、中国貿易コンサルタント)