中国の美容情報サイト「更美App」と就職サイトの「BOSS直聘」は5月上旬、合同で「中国青年顔値競争力報告」(以下、報告)を発表した。それによると、中国青年の80%が顔の良し悪しは、社交、恋愛、職場などの各領域で今後の発展に大きく影響すると考えていた。特に将来の報酬に大きくかかわるという人は9割にものぼっている。経済サイト「界面」が分析記事を掲載した。背景には何があるのだろうか。
最も大変な年齢とは
調査は各年齢層の人に「最も“顔値圧力”(つまり見栄えの良さ)の与える影響の一番大きいのは何歳ごろか?」という問いから始まる。
00后(2000年以降生まれ、18歳以下)は98%が0~18歳、つまり自分たちであると答えている。
95后(1995年以降生まれ、23歳以下)は57%がやはり0~18歳の時期と答えている。
90后(1990年以降生まれ、28歳以下)は51%が18~25歳と答えている。
80后(1980年以降生まれ、38歳以下)は32%が25~30歳と答え、意見はバラついている。
70后(1970年以降の生まれ、48歳以下)は71%が30~40歳と答えている。
若い世代は自分たちが一番大変と思いこみ、やがて30代になると意見は分かれる。40代を過ぎると、30代こそ最も重要な時期であったと気付く、というような流れだろうか。
実際の出費項目は?
彼らは“顔値”を上げるためには、何が有効と考えているのだろうか。
美容医療 45.3%
健身美体(フィットネス) 35.3%
化粧 11.5%
美容美髪 4.1%
図片修飾 1.8%
の順となっている。
美容医療とは整形(美容・形成)およびプチ整形のことで、これに踏み込めば高額の費用がかかる。図片修飾とは、自分の写真等を加工して美しく見せることである。
35.3%はフィットネスが最も良いと答えた。
しかし若者たちに実際の使い途を聞くと次のようになる。
服飾 42.99%
美容医療 27.3%
美容・化粧品 24.27%
フィットネス 5.44%
実際のフィットネス支出は5.44%でしかない。有効と考えていることと、実際にやっていることには大きなギャップがあった。
最後に青年たちは“顔値”を上げるために、給料の何%をつぎ込んでいるかというデータである。
20~50%が最も多く、42.86% 次は20%以下で30.91%、次は給料以上を出費している層で14%である。最後に50~100%の12.23%だった。
50%以上は明らかに使い過ぎだが、20%~50%という分類は、少し大ざっぱすぎるようだ。25%は問題なくても40%なら問題、と考える人は多いだろう。いずれにしろ相当な額を、見栄えに消費しているのは間違いなさそうだ。
中国社会の波乱要因に?
一方で最近、「佛(仏)系」という言葉が青年たちの間でホットワードとなっている。前世代の大人たちは、立派な事務所、大きな車、ブランド品で身を固め、自分を大きく見せることにより、中国社会では欠かせない、タフな交渉を有利に進めようと腐心してきた。
佛系とは、これを否定するような考え方である。一種の目的を放棄した生活と人生の態度と解説されている。例えば“佛系員工(従業員)”の場合は、止水明鏡の心境で、感情を表に出さず“平安”に出勤し、“安静”に退勤する従業員を指すという。前世代のもつ、押し出しの強さを否定し、それを忌避する態度のようにもみえる。
しかし、見かけを大切にする中国の遺伝子は健在であるともいえる。それが現代の若者風に再編集された結果と考えれば、実態に近いのではないだろうか。
若い世代の伝統に対する反発は、これまで以上に高まっている。引き裂かれてしまわないように、とにかく現代風に武装しておきたい、とあせっているのかも知れない。彼らなりに苦しいのである。いずれにしろ貧しさを知らない90后以降の世代は、中国社会にとって波乱要因である。もちろん希望でもある。今後も彼らの動きからは、目が離せない。(高野悠介、中国貿易コンサルタント)