毎年3月に公示地価が発表されます。不動産を所有していない人にとっては縁の薄いニュースかもしれませんが、不動産価格の参考となる情報であるために、不動産投資家にとってはきわめて重要です。
ただし、公示地価だけでなく基準地価や路線価など似たような指標があるために、不動産投資初心者の方は混乱してしまうのではないでしょうか。ここでは、基本情報として公示地価と不動産投資の関係、そして路線価・基準地価との違いを含めて説明していきます。
公示地価とは不動産取引の価格の目安
2018年3月27日、国土交通省から地価が公示されました。こちらの報道資料をもとに、各新聞社では「公示地価上昇」「地方でも地価持ち直し」など、景気回復や消費者心理の好転などを報じる記事を出しています。
公示地価とは、地価公示法という法律に基づいて国土交通省内に設置された土地鑑定委員会が1月1日時点で判定した地価を指しています。1971年から毎年1回実施されており、都市計画区域に定められた標準地の地価を継続的に判定していることから、一般的な土地の取引価格に対する指標として機能しています。また、民間の土地取引だけではなく、公共事業用の土地取得価格を算定する際の基準にもなっているようです。
土地取引の基準価格であることから、不動産投資を考えている人にとっては非常に重要な指標の一つと言えます。また、公示地価の変遷が景気に対する人々の意識を左右することで、間接的に不動産投資の売買価格に影響することも考えられます。
ただし、必ずしも公示地価がそのまま土地取引の価格になるわけではありません。公示地価は、売り手や買い手のニーズに関係なく、その土地の持つ客観的な価値を評価するものです。実際にどんな建物がその土地に建っているかを基にするのではなく、その土地を最大限に活用できるような使用方法を想定して評価しています。実際の不動産価格には、売り手や買い手の思惑、建物の評価など別の要素が影響してくる点には注意が必要です。
基準地価・路線価との関係
前述の通り、公示地価は実際の不動産取引価格の指標となります。ただし、指標になるのは公示地価だけではありません。公示地価以外にも、基準地価や路線価(相続税路線価および固定資産税路線価)といった指標が存在します。
基準地価は、都道府県が実施した調査に基づく地価です。調査方法はほぼ公示地価と同様ですが、判定の基準日が7月1日であること、都市計画区域外(林地など)も評価対象に含まれていることなどの違いがあります。公示地価の公表される区域以外の標準的な地価を知りたい場合や、公示地価判定から半年後の動向を把握したい場合などに役立ちます。
次に路線価とは、土地に由来する税の価格算出に用いられる土地評価額です。公示地価や基準地価は土地そのものに対する価格ですが、路線価は路線(道路)に面した土地対して決められる価格です。
路線価には、「相続税路線価」と「固定資産税路線価」の2つがあります。相続税路線価は、相続税および贈与税の額の基準となる土地価格であり、相続税法に基づいて国税庁が実施しています。一方の固定資産税路線価は、その名の通り固定資産税額の算出の基準となる土地価格で、各市町村長(東京都23区では都知事)が定めます。相続税路線価は公示地価の8割程度、固定資産税路線価は公示地価の7割程度を目安として定められます。
公示地価と同じく、基準地価や路線価そのままの価格が実勢価格となるケースは少ないです。特に、取引の活発な地域や時期は、公示地価より大幅に高額の実勢価格が設定されることも多いとされています。あくまで、推移をもとに不動産取引の傾向をつかむための参考値と考えた方がよいでしょう。
公示地価が上がるメリットとデメリット
公示地価が上昇したことでメリットを享受できるのは、不動産を売る立場の投資家や企業、そして国です。不動産投資家や不動産会社は、公示地価の上昇が自らの所有する土地の売買価格上昇に結びつきます。また、土地を売らなくても担保価値の向上につながるため、融資枠が広がることで次の一手を打つきっかけになるかもしれません。
国にとっても、公示地価の上昇が相続税路線価や固定資産税路線価の上昇につながり、結果として税収の増加が期待できます。2015年には相続税の基礎控除額引き下げなど、税収増加のための取り組みを続ける国にとって、公示地価の上昇は喜ぶべきニュースと言えるでしょう。
逆に、不動産購入者や所有者、土地の被相続人にとって公示地価の上昇はデメリットです。不動産価格の上昇は購入を難しくしますし、相続税や固定資産税の上昇によって「土地を持ち続けるリスク」も大きくなります。こうした立場の人・会社は、所有不動産の見直しを検討する必要があるでしょう。(提供:Incomepress )
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