総務省の「就業構造基本調査」によると、1997~2007年にかけて日本における女性の就業率は改善されてきている。しかし、結婚・出産を機に退職者が増えるため、20~30歳代の就業者が減少する「M字カーブ」はいまだ解消されていない。大企業よりも中小企業のほうが正社員に占める女性の割合は高いことが分かっており、人材難の中、中小企業における女性社員の活躍推進は喫緊の課題だ。今回は、女性が活躍している中小企業の特徴を詳しく見ていこう。

女性活躍を推進する中小企業の特徴

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(写真=TORWAISTUDIO/Shutterstock.com)

日本政策金融公庫総合研究所が実施した「企業経営と従業員の雇用に関するアンケート」によれば、女性が活躍している中小企業にはいくつか特徴がある。まずは、性別にかかわらず男女平等の人的資源管理を行っている、という点だ。「女性活躍に取り組んでいる企業」に対して、取り組み始めたきっかけを問うと、最も多かった回答は、「男女の能力に差はないから」で、60.3%を占めた。「男女とも職務遂行能力によって評価されるという意識を高めるため」という回答も39.2%見られる。

また、採用、配置、研修や資格取得の支援、管理職への登用について、「性別に関係なく男女平等にそれらを行っているか」と聞いた。その結果、女性活躍に取り組んでいる企業が約44.1%に対し、取り組んでいない企業が約56%で、取り組んでいない企業が過半数以上であった。ただ、管理職への登用や人員配置については、女性活躍に取り組んでいる企業でも、「性別に関係なく取り組みを行っていると思う」という割合は40.9%にとどまっている。その他の項目に比べて取り組みが遅れているようだ。

また、女性活躍を阻害する要因について一部抜粋すると家庭生活と仕事の両立の難しさを感じている企業が多いようだ。

・家事や育児の負担を考慮する必要がある:48.4%
・結婚や出産で退職する女性が多い:39.7%
・残業・出張・転勤をさせにくい:35.4%

そのため、女性活躍を推進している企業では、こうした点での改善策を講じているという特徴もある。具体的に実施している内容で多い傾向は下記のようなものだ。

【女性活躍に取り組んでいる企業】
・出産や育児等による休業がハンディとならないような人事制度の導入:43%
・人事考課基準を明示する:35.5%
・非正社員を対象にした研修などの教育制度の実施:43%
・仕事と家庭との両立支援制度を整備:34.6%

【女性活躍に取り組んでいない企業】
・出産や育児等による休業がハンディとならないような人事制度の導入:23.6%
・人事考課基準を明示する:16%
・非正社員を対象にした研修などの教育訓練の実施:23.6%
・仕事と家庭との両立支援制度を整備:15.2%

女性活躍に取り組んでいる企業と取り組んでいない企業の改善への取り組み姿勢は歴然である。

女性活躍の推進によるメリット

女性活躍を推進した企業はどのようなメリットを感じているのだろうか。

・優秀な人材を確保できる:57.6%
・職場の雰囲気が良くなる:49.1%
・従業員の勤労意欲が高まる:41.3%

少子高齢化で人材不足感が顕在化する中、「優秀な人材を確保できる」と感じている企業が多いのは大きなメリットだ。

また、女性の活躍を推進するために、家庭生活と仕事の両立に取り組んでいる企業が感じているメリットの回答結果は以下だ。

・仕事の進め方について職場内で見直すきっかけとなった:28.9%
・各人がライフスタイルや働き方を見直すきっかけになった:28.0%
・両立支援策に対する各人の理解が深まった:26.9%
・会社や職場に対する各人の愛着や信頼が深まった:25.5%

こうした効果は、女性に限ったものではない。女性が働きやすい職場にするためにさまざまな取り組みや業務の見直しをしたことで、結果的に男女問わず、すべての従業員が働きやすい職場になったといえるだろう。

一方、「職場のマネジメントが難しくなった」「職場で社員の間に不公平感が生じた」といったマイナス影響を指摘する回答もあった。しかし、こうした回答において女性活躍に取り組んでいる企業と取り組んでいない企業間での回答率の差は見られなかった。女性活躍に取り組んだからといって、マネジメントが難しくなるといった悪影響は少ないといえるだろう。

女性が活躍する職場は社内全体にプラス

「女性が働きやすい職場=女性だけが得する職場」というわけではない。アンケート結果から分かるのは、女性活躍を推進する取り組みによる悪影響は少なく、それを上回るメリットを感じている企業が多いということだ。人手不足や採用難が強まる中、優秀な人材を確保するにはダイバーシティー(多様化)の推進が欠かせない。経営者は、女性が働きやすい職場にすることで、社内全体にプラス効果があるということを念頭に、社内改革を進めていくべきだ。(提供:百計オンライン


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