文豪・宮沢賢治がかつて理想郷「イーハトーブ」と呼んだ岩手。四季折々の美しい風景と豊かな自然が魅力的なこの地では、一風変わった活動「イーハトー部」が開始されています。岩手に住む人々それぞれが考える理想の岩手を作り上げていく、という目的を持つイーハトー部の活動内容について紹介します。

イーハトー部って?

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(写真=PIXTA)

イーハトー部は、岩手に新たな移住者を呼び込むための情報発信ツールとして誕生した取り組みです。移住者たちの暮らし方と部活動を関連付けることで、地方移住を身近に感じてもらいたいとの想いが込められています。

部では、岩手の各市町村をチームとし、移住者を先輩部員、部員を支援してくれる団体を部の応援団となぞらえ、公式ホームページにて先輩移住者たちの生活や仕事などを発信。PRポイントや支援内容などをまとめた各チームの紹介、各種支援を行っている市町村がひと目で分かるナビも併せて紹介しています。

イーハトー部の情報発信は、インターネットの活用だけでなくイベントでも盛んです。2018年4月20日に東京で開催された「イーハトー部に入ろう!vol.1~移住のイロハ編~」では、地方移住を考えている人や岩手に興味関心のある人などを対象に、岩手の魅力や先輩移住者の紹介、移住に必要な情報を収集する方法などを紹介しました。また、岩手の情報を詰め込んだガイドブックも製作し、アンテナショップやイベントにて配布しています。

移住へのハードルを下げるイーハトー部の支援施策

イーハトー部活動の支援内容は、子育てから福祉、住宅関連に至るまで多岐にわたります。なかでも幅広い市町村で支援されているのが、農林水産業への就業支援と住宅支援です。どちらも3つの市町村を除いた30市町村にて対策が行われています。

例えば、岩手の県庁所在地である盛岡市では、農業支援として、新しく農業に従事する人が安心して就業できるよう、相談窓口の設置や給付金の交付、見学会の開催などを実施しています。対象の空き家を購入かつ5年以上住居として使用する人に修繕費を補助するなど、全国的に問題となっている空き家問題にも対策を講じています。

宮古市の就業支援対策では、就農者だけでなく林業と漁業への新規就業者にも補助金を助成しており、農業機械の購入費用助成や借地の賃料を補助する自治体もあります。

住宅支援内容を見てみると、一関市では、移住者に対する住居取得費用だけでなく、低所得者への市営住宅提供や住宅をバリアフリー化するための工事も補助の対象となっています。そして陸前高田市は、移住者向けの支援として住宅建設の費用から一部を商品券で支払う取り組みを行っています。

これらのほか、ひとり親家庭の医療費を助成する医療支援施策、複数の市町と機関による起業支援セミナーなどを実施し、各自治体がさまざまな形でイーハトー部員の快適な暮らしを支援しているのです。

イーハトー部メンバーの取り組みと理想像

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(写真=PIXTA)

これまでに岩手へ移住したイーハトー部員は、ワイナリーやカフェのオーナー、NPO法人の代表理事など幅広い分野で活躍しています。

2016年に岩手へ移住した男性は、ものづくり分野における新規事業への挑戦を模索していた中で、久慈市が縫製の盛んな土地であることに注目しました。そして久慈市への移住後、市内の縫製工場で製造した衣類を販売するアパレルブランドをスタート。生活していく上で必要となる衣食住のひとつ「衣」を久慈市から岩手全体、そして全国へと広めていくべく活動を続けています。

エンジニアとして東京で経験を積んできたある男性は、盛岡市へUターンしました。地方でも都会と変わらぬ働き方ができる、仕事で培ってきた技術やノウハウはどこにいても通用すると決意したことが移住のきっかけでした。現在は、国内外問わず多くのクライアントと仕事のやり取りを行っています。

山との共存を夢に職人として歩み始めた修業中の女性、自然豊かな土地で英語講師として定年後の人生を謳歌している方など、移住先で独自のライフスタイルを確立しているイーハトー部のメンバーたち。産後の女性でも元気に働ける生き方を見つけたい、次の世代を担う子どもたちのより良い未来のために環境を整備したいと、思い描く未来像も人それぞれのようです。

岩手県内のみならず、徐々に県外にも浸透しつつある取り組み、イーハトー部。移住先を求める人々と岩手を結びつけるツールとして、今後も情報発信を続けていくことでしょう。岩手に興味のある方、地方へ移住したいけどなかなか踏み出せないという方にとって、大切な架け橋となっていることは間違いありません。

このコラムは2018年4月時点の情報で作成されたものであり、現時点において最新の情報ではない場合がありますので、あらかじめご了承ください。(提供:JIMOTOZINE)