東日本大震災によって、東北の水産業は大きな打撃を受けました。風評被害をどう払しょくしていくのか、復興に向けて何が必要なのか議論されていくなかで、岩手の水産業を再興しようと立ち上がったのが、「岩手県産株式会社」と「東の食の会」、「三陸フィッシャーマンズプロジェクト」の3社です。

その3社が新しい岩手ブランド商品として作り上げたのは、おしゃれな鯖の缶詰「サヴァ缶」でした。今や全国でもファンの多いサヴァ缶の誕生秘話に迫ります。

岩手の水産業を救え!再興への道のり

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(写真=PIXTA)

2011年、震災当時に岩手で流失した漁船は1万3,000隻を超え、多くの水産施設が滅失・大破し、県内の24漁協中14漁協の事務所が損壊するなど、その損害はとても大きなものでした。

あまりの被害の大きさに、日本中の誰もが東北の水産業の復興には長い時間がかかると考えたことでしょう。しかし、それからわずか2年後の2013年9月、岩手の水産業再興を後押ししようと、復興支援商品として「サヴァ缶」を発売。パッケージには明るく元気なカラーリングを採用し、フランス語で「元気?」という意味の「Ca va?(サヴァ)」を商品名としました。

目を惹くパッケージデザインにあっさりとヘルシーな味のサヴァ缶は、発売後間もなくから多くの人を虜にしました。食べたことはないけれど、スーパーやセレクトショップで目にしたことがあるという人も多いでしょう。

このサヴァ缶を生み出したのは、震災被災地の食を復興させようと誕生した団体「東の食の会」。さらに岩手県産株式会社の「岩娘會」、そして東日本の水産業復興を支援する「三陸フィッシャーマンズプロジェクト」も開発・販売に協力しています。

ポイントは「女性目線」

サヴァ缶を生み出すのにあたり、大きなポイントとしたのは「女性向け」であることでした。2013年当時、缶詰をおしゃれなおつまみとして楽しむ「缶つま」は、男性向けの商品が多く、完全に女性をターゲットとした商品はありませんでした。

「女性も家で気軽にお酒を飲めるように」、岩娘會と書いて「がんこかい」。岩手県産株式会社のメンバーがこだわったのが、女性でも抵抗なく購入し食べられることでした。

ヘルシー食材の鯖にあっさりとした味付けをし、オイルはオリーブオイルを使用。海外製品のようなパッケージデザインを施し、岩娘會のこだわりが詰まったこれまでにない鯖缶が、販売への不安と期待が入り混じるなかで完成しました。

全国で大人気の「サヴァ缶」

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(写真=PIXTA)

発売当初から話題と反響を呼んだ「サヴァ缶」は、発売から6ヵ月で約5万缶を販売。その後2016年3月に100万缶を突破し、2018年3月には300万缶を超え、開発を手掛けた東の食の会は、釜石市から水産業への貢献をたたえ感謝状が贈られました。今や鯖缶として、全国で名を馳せるブランド商品となっています。

現在販売されているサヴァ缶は、オリーブオイル、レモンバジル、パプリカチリソースの3種類。贈答用のセット商品もあり、全国でその人気は継続しています。

そして2018年3月8日、日本記念日協会から3月8日を「サヴァ缶の日」とすることを正式に認定されました。これにより、これからさらに活動の幅を広げ、岩手の水産業を盛り上げる中心的存在となっていくことでしょう。

サヴァ缶はもともと「女性のおつまみ」として開発されましたが、男性ファンも多く、その後パン屋や雑貨店、セレクトショップにまで反響が広がり、ネットではアレンジレシピも人気を呼んでいます。見て元気になり、買って水産業を応援でき、食べておいしいサヴァ缶。これからも岩手を代表する水産加工品として、多くの人に愛され続けていくでしょう。

このコラムは2018年4月時点の情報をもとに制作したものであり、現時点において最新の情報ではない場合がありますので、あらかじめご了承ください。(提供:JIMOTOZINE)