(本記事は、冨田和成氏の著書『稼ぐ人が実践している お金のPDCA』KADOKAWA、2018年5月26日刊の中から一部を抜粋・編集しています)

【『稼ぐ人が実践している お金のPDCA』シリーズ】
・(1)「お金の悩み」を開放する「究極のヘッドライト」とは?
・(2)「どうしてお金が必要なのか?」プライベートバンクが教える資産運用の原則とは?
・(3)お金と時間、どちらが大事?「USJ」に見る時間価値
・(4)年収1000万は「損」?富裕層が「教育」に投資する本当の理由
・(5)なぜ、富裕層は「現金払い」より「ローン払い」を好むのか?

稼ぐ人が実践している お金のPDCA
(画像=Webサイトより ※クリックするとAmazonに飛びます)

あなたの最終的な目的地はどこですか?

仕事柄、私は外国人経営者と話す機会がよくあります。その際によく聞かれる質問が、「What’s your ultimate goal?(あなたの最終的な目的地はどこですか?)」というもの。

おそらくこの問いに対する答えを聞くことで、相手の人生観を探っているのでしょう。実際、アメリカの金融業界では顧客の資産運用をサポートする際に「ゴールベース・アプローチ」という人生のゴールから逆算して資産運用を考えるという概念が浸透してきているなど、自らの人生の最終ゴールを見極めて、そこから逆算して行動していくという意識が高まってきていることも影響しているようです。

「お金を貯めたい」「お金を増やしたい」と多くの人は言います。お金を貯めること・増やすことのメリットは否定しませんが、何にお金を使うかというゴールが明確になっていないと、そのお金を活かすことはできません。お金を増やすこと自体が目的になると、仮想通貨やFX(外国為替証拠金取引)などで手っ取り早くお金を増やしたいという発想になってしまいます。お金は夢や目標を成し遂げるための手段にすぎません。人生のゴールを意識しておくことで、効果的にお金を使うことができるのです。

とはいえ、いきなり「最終的な目的地はどこか?」と問われ、明確に答えられる人はそう多くはないのではないでしょうか。仮にそうであっても、もう少しハードルを下げて「中間ゴール」を決めておくと、自分が進むべき道がはっきりしてくるはずです。私は常にこの中間ゴール(目的地に対して経由地点と呼んでいます)を設定し、自分の行動指針にしています。

決め方は実に簡単で、まずは最終ゴールから始め、逆算して、40年後、30年後、20年後、10年後、5年後、3年後、1年後、半年後、3カ月後、1カ月後、1週間後……とスパンをだんだんと短くして決めていくだけです。逆算が重要なので、未来から現在に戻ってくるように進めるのがポイントです。少なくとも10年後、3年後、1年後、3カ月後だけは中間ゴールを決めておくといいでしょう。

人が前に進むことをやめてしまう3つの原因

人が迷いなく、モチベーションを保ちながら前へ進むには、ゴールを設定し、それに向かってPDCAを回す必要があります。なぜなら、ゴールが明確でないと人は不安や疑問を感じ、歩みを止めてしまうからです。

人が前に進むことをやめてしまう原因は、次の3つです。

(1)自分はどこに向かおうとしているのか(ゴールが見えない)
(2)果たして今の努力は意味があるのだろうか(道が見えない)
(3)この方法のまま続けていていいのだろうか(手段が見えない)

その点、ゴールベースでPDCAを回すことができれば、こうした不安や疑問は解消されていきます。

「どちらの方角に進むのか」が設定されていることが重要です。手段であるお金のことを考える上でもゴールがないと始まらないからです。

あなたの目指す最終ゴールは、まだ霧の中に包まれている状態かもしれません。

しかし、時が経つにつれてこの霧を徐々に晴らしていき、気が付いたら自分が考えてきた概念に近いものが現れてくるのがベストな形です。そのためにも、今のうちから基本概念(方向性)だけはしっかりと固めておきましょう。

ゴールから逆算する「ゴールベース資産管理」

稼ぐ人が実践している お金のPDCA
(画像=Pavel Ilyukhin/shutterstock.com)

ゴールベースの考え方は、資産管理でも同様です。

シンガポール留学時代に、スイスのプライベートバンク各社の顧客管理のプロセスを比較した資料を手に入れたことがあります。これを見てわかったのは、各社とも多少の違いはあっても基本姿勢はほぼ同じということでした。

その内容は、おおよそ次のようなものになります。

(1)顧客について知る
(2)顧客の課題を明確にする
(3)顧客のゴール(資産運用の目的)を明確にする
(4)選択肢を洗い出す
(5)選択肢を評価する
(6)顧客に行動方針を確定してもらう
(7)結果を評価する

これらのうち、最重要なのは1~3の「顧客理解」のプロセスです。

海外のプライベートバンカーたちは、顧客に対し、「人生のゴールはどこに置いていますか?」とまず聞きます。これに対する答えから逆算し、「何歳までに何を実現する」と決め、フェーズごとに中間ゴールを設定していきます。

その際には、中間ゴールごとに資産の運用の仕方を決めていくのです。

こうした資産管理の手法は「ゴールベース資産管理」と呼ばれ、プライベートバンクが教える資産運用原則の基本です。

人生において何かを成し遂げたいのなら、面倒だと思っても中長期の人生計画を立て、それに従って愚直にPDCAを回していくしかありません。

これなしに資産運用を進めようとしても、「どうしてお金が必要なのか」「自分や家族の目指すのは、どんな将来か」という核となる部分が抜け落ちてしまい、羅針盤のない航海のようになってしまいます。

たとえばあなたが、「定年でリタイアした後は、マレーシアに家を買って移住したい」という人生のゴールを持っているとしましょう。この場合、まずやらなくてはいけないのは、マレーシアの物件はいくらくらいするのかを調べ、将来に向けて移住の計画を立てていくことです。

さらに重要なのは、寿命がいつまで続くかわからないので、老後資金がいくらあればいいのかという計算もしなくてはいけません。

ゴールが明確になれば、今後の資産運用の方向性がはっきりしてくるはずです。そしてその先に考えておきたいのが、人生のゴールを達成させる期日となります。

たとえば、「自分の資産が2倍になったとき」と期限を設定しても、それを10年で行うのか20年で行うのかによって、目指すべき利回りや運用方法が異なってきます。高い利回りを狙うなら、当然、リスクも生じます。

自分がプライベートバンクと取引するような富裕層でなくとも、将来に向けて「人生のゴール」を設定すべきです。

そこに到達するための細かいプランを立てながら、PDCAを回して資産管理や資産運用をする考え方を持ちましょう。

冨田和成(とみたかずまさ)
神奈川県出身。一橋大学在学中にIT分野で起業。2006年大学卒業後、野村證券株式会社に入社。本社の富裕層向けプライベートバンキング業務、ASEAN地域の経営戦略担当等に従事。2013年3月に野村證券を退職。同年4月に株式会社ZUUを設立し代表取締役に就任。