「米通販大手アマゾンが無人コンビニを開業」というニュースが話題を呼んでいる。無人コンビニは、電子決済が急速に広がる中国でも登場しており、世界のトレンドになることが予想されているのだ。今回は、AI(人工知能)の発達で進む小売業界の省力化、省人化について見ていこう。
センサーやAIによる商品販売
米アマゾンは2018年1月、本社を構える米シアトルで、無人コンビニ「アマゾン・ゴー」の一般向け開業に踏み切った。同社は、2016年末に無人コンビニの構想を明らかにし、試験運用に取り組んでいたとされる。店舗面積は約160平方メートルで、日本の一般的なコンビニよりも少し広い。品ぞろえは、飲料や総菜が中心だという。
「アマゾン・ゴー」の特徴は、会計が電子化されている点だ。あらかじめアプリをダウンロードしておくと、ゲートを通って入店することができる。顧客がどの商品を手に取ったかは、店内や商品に設置した無数のセンサーやAI(人工知能)が判別し、アマゾンのアカウント上の「買い物かご」へ自動的に追加する。棚に戻したら、買い物かごからは削除され、棚に戻さずに商品を持って店外に出ようとすると、アマゾンのアカウント上で課金される仕組みだ。
中国でも広まる無人コンビニ
無人コンビニは、中国でも急速に広まりつつある。中国の電子商取引最大手、阿里巴巴集団(アリババグループ)は、2017年7月に広州市で無人スーパーを開業した。また、55億ドル(約6,200億円)もの資金を投じ、百貨店大手の銀泰商業も買収している。実店舗を買い取り、小売業に先端技術を取り入れる戦略だ。
一方、無人コンビニで先行するベンチャー企業の小麦公社が運営する店舗では、利用者が騰訊控股(テンセント)の無料チャットアプリ「微信(ウィーチャット)」を利用して買い物をする。商品のバーコードをスキャンし、「微信銭包(ウィーチャット・ウォレット)」で代金を支払う仕組みだ。
画像解析のアマゾン、RFIDの中国
画像解析で商品の追跡や支払いを管理するアマゾンに対し、中国の無人コンビニはRFIDタグによる読み取りが中心だ。RFIDは、すでにさまざまな分野で広く活用されている技術で、無人コンビニへの応用も難しくないことから重宝されているものの、商品点数が多いと情報の読み取りに時間がかかる。
また、金属、アルミホイル、液体などの商品だと、電波が反射、吸収されてしまうため、缶飲料やペットボトル、冷凍食品などが扱えないといったデメリットがあるのだ。しかし、アマゾンが用いる人工知能を使った画像解析もまだ発展途上の技術であり、今後さまざまな課題に直面するだろう。無人コンビニの技術開発は、ようやく入り口に立ったところだ。
無人コンビニ普及のカギは電子決済
画像解析にしろRFIDにしろ、無人コンビニのカギになるのは電子決済技術だ。「レジなし」の無人コンビニと、電子決済の普及は切り離すことができないといえる。中国で最も普及している電子決済サービスは、アリババ系の「支付宝(アリペイ)」、次いで小麦公社も取り入れるテンセント系の「微信支付(ウィーチャット・ペイ)」だ。
こうした中国系の電子決済サービスは、いまや中国人観光客の誘致に欠かせず、日本国内のコンビニやその他小売店舗などでも導入が進んでいる。日本では、以前から交通系の電子マネーやクレジットカードがすでにキャッシュレスの需要を担っていたため、こうした電子決済の拡大は遅れていたが、中国人観光客増加の勢いにも押され、早晩普及が拡大すると考えられる。
「無人化」で労働力不足を補う
無人コンビニの拡大は、少子高齢化で労働力の確保が課題となっている日本の小売業にとっても朗報といえるのではないだろうか。日本と同様に高齢化が進み、外国人労働者への依存率が高いシンガポールでも、労働力不足を補うためにドローンで商品を運ぶロボットレストランなどが登場している。「AIが人間の仕事を奪う」とさまざまな議論が盛り上がっているが、無人コンビニは、小売業のあり方を変えていく可能性があるだろう。(提供:百計オンライン)
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