日本人は、無類の保険好きだといわれる。年金などの社会保障に不安を感じる現代、自らの老後や事業の継続のための保険選びに苦慮している経営者もいるのではないだろうか。今回は、「経営者のための保険」という観点からの保険選びについて見ていこう。

経営者のための保険はこの2種

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(写真=enciktepstudio/Shutterstock.com)

経営者のための保険は、役員保険・キーマン保険とも呼ばれる。その目的は、「経営者に万一のことがあったときのための保障」と「経営者および役員の退職金準備のための保障」の2つに絞られる。経営者の死亡時の保障と退職金の準備を兼ねた保険には、いくつかの商品がある。一般の個人保険と同様に、養老保険、定期保険特約付養老保険、定期保険、終身保険、定期保険特約付終身保険、個人年金保険などさまざまな商品があるのだ。中でも代表的なものは、「長期平準定期保険」と「逓増定期保険」だろう。

・長期平準定期保険
長期平準定期保険(長期定期保険)とは、保険期間が長い定期保険のことで、満了を95歳や99歳などに設定する。満了時の解約返戻金がゼロである一方で、保険期間中に返戻率が高まる時期があるのが特徴だ。ただし、死亡保障額は一定となる。長期定期保険は、経営者に万が一の事態が起きた場合のリスクを防ぐ保険としてしばしば活用される。

保険金で会社の資金繰りが悪化するのを防ぐとともに、円滑な事業継承に向けて活用することが目的だ。また、解約返戻金のピークを経営者や役員の退職時期に合わせることで、退職金の財源確保が可能になる。

・逓増定期保険
逓増(ていぞう)とは、「徐々に増える」という意味で、逓増定期保険は死亡保障額が徐々に増えていく仕組みの保険だ。ただ、満了時には保障が終了し、解約返戻金がゼロになる。こちらも、保険金で会社の資金繰りが悪化するのを防ぐ、円滑な事業継承に向けて活用するといった形で、経営者に万が一の事態が起きた場合のリスクを防ぐ保険として利用される。

また、解約返戻金のピークを経営者や役員の退職時期に合わせることで、退職金の財源確保にも活用できる。一般的に、逓増定期保険のほうが長期定期保険よりも返戻率のピークが早まることは多い。しかし、加入時の年齢など諸条件によって異なるので、長期定期保険とあわせてどちらが有効か検討したい。

保険を活用した節税

経営者のための保険は、契約形態により保険料の一部もしくは全部を損金処理することが可能だ。損金処理ができれば、それだけ節税にもつながる。ただし、加入時の年齢や保障期間などによって、損金として落とせる比率が決められている。「全額損金タイプ」と「2分の1損金タイプ」と「3分の1損金タイプ」があるが、もちろん全額損金タイプがお得に感じるだろう。

しかし、必ずしもそうとは言い切れない。例えば、全額損金定期保険は他の商品に比べて保障が手厚い分、保険料が割高だ。また、解約返戻金の返戻率が低めである点や、解約返戻金を受け取ると全額が益金に算入されるため、その分税金がかかってしまう点などもデメリットになる。解約返戻金の使い道をしっかりと決めておかなければ、現預金で積み立てた場合よりも損をする可能性が高いのだ。

そこで、全額損金定期保険は、被保険者が若いほど返戻率が高くなりやすいことに注目しよう。貯蓄機能を重視するのであれば、できるだけ若い役員を被保険者として保険をかけておき、ピーク時に解約して経営者の退職金の資金源として確保しておくというのも、ひとつの方法だ。特に退職金は税率が安いので、こうした合わせ技でさらなる節税につながるのだ。

保険で事業の継続リスクを軽減する

このように、法人での保険を活用することで会社のキャッシュフローを最大化し、節税や会社の維持・存続のリスクに備えることが可能になる。保険を活用するには、解約返戻金の返戻率にあわせて資金の使い道を設計し、できるだけ節税につながるように取り計らうための商品選びが重要だ。(提供:百計オンライン


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