グーグルは2019年までに、日本のヘッドオフィスを渋谷ストリーム(駅南地区)へ移転する。すでに渋谷にはサイバーエージェントやDeNAなどが拠点を構えており、ビットバレーとしての集積が進む。

グーグルだけではない。渋谷に本社を構えるサイバーエージェントは10か所に分散するオフィスを集約する。今まさに渋谷へIT企業の集約が進み、「渋谷ビットバレー」復活へのモーメントが動きつつあるのだ。

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(画像=PIXTA)

渋谷で空き室が見つからない 始まった店子の選別

グーグル効果もあって、今渋谷はIT企業やスタートアップの拠点として人気が高まっている。AI(人工知能)・IOT(インターネットオブシングス)・RPA(オフィスワーク向けロボット)といったのテクノロジーがもてはやされる中で、情報通信産業への就業人口が着実に伸びていることも寄与している。ちなみに都内の場合、小売業・卸売業に次いで、3番目の就業人口を誇る。

こうしたオフィス需要の高まりを受け、都心5区(新宿・渋谷・千代田・中央・港)の2月末時点の賃料は前月比0.84%上げて、50か月連続の上昇を記録した。5区の中でも、渋谷区のオフィス賃料は坪当たり28,080円と、千代田区に次いで高い。空室率も0.68%とほぼ満杯、オフィス需要の高い都心5区の中でも、2位の新宿を抑えて堂々のトップに立つ。ちなみに、5区平均の空室率は1.16%だ。

そんな中、「家主が店子を選ぶ」現象も見られ始めた。渋谷駅から徒歩3分の超好立地に位置する第一生命ビルディング(1979年竣工、地上10階地下1階)は、2フロア230㎡の商業テナント募集にあたり、初の入札方式を導入した。有利な条件を出すテナントに入居を認めようという訳だ。

再開発で高まる魅力

ミレニアムの初めごろ、渋谷は「ビッド(渋い)バレー(谷)」ともてはやされ、多くのITスタートアップが集まってきた。しかし急成長したそれら企業は、大型ビルの少ない渋谷の手狭さに嫌気が差し、多くが六本木ヒルズなどに移っていった。ところが今、再び渋谷にIT企業が集積している。背中を押したのが、渋谷で相次ぐ再開発事業だ。

仕掛人は東急建設。オフィス拠点として渋谷の吸引力を盛り上げる。コンセプトは「回遊性」だ。周辺の個性的なエリア(原宿・青山・代官山・恵比寿)とのつながりを重視した計画を構想する。

まず、渋谷駅及びその周辺は大きく変わる。もともと渋谷駅は、JR山手線・埼京線・湘南新宿ライン(高崎線・宇都宮線)や私鉄の東横線など10路線が乗り入れ、利便性が高い。その一方で度重なる増設・移設により駅構内は複雑に入り組んでいる。駅周辺も通称246やJRの効果によって動線が断ち切られている。

今度の再開発計画では、JR線とメトロ銀座線のホーム移動やアーバン・コアと呼ばれる歩行者動線の導入によって、こうしたボトルネックを一挙に解消する。また、東横線線路跡地には遊歩道を整備すると同時に、隣接する渋谷川も再生して、渋谷の街に憩いの空間を創造する。

大型複合施設を核とした開発も進む。グーグルが入る渋谷ストリームを軸とした渋谷駅南街区プロジェクトは、2018年秋に完成予定だ。来年には、サイバーエージェントが入居する渋谷スクランブルスクエア・アベマタワーズも竣工する。さらに渋谷の象徴パルコも、訪日観光客の取り込みを意識したグローバルショッピングセンターとして生まれ変わる。

「五反田バレー」という言葉も生まれた

気がかりな話もある。IT業界人が集まる人的ネットワークや高い利便性は魅力的といっても、ダントツに高い賃料は、とくに体力の弱いスタートアップ企業の懐を痛める。空いているオフィスも少ない。

そんな渋谷に対抗するかのように、「五反田バレー」がIT業界で話題を呼んでいる。渋谷も魅力を高め続けなければ、安閑としてはいられない。(ZUU online 編集部)