中国にもアウトレットモール(奥特莱斯)業態は存在している。業績は短期的にはまあまあだが、“調整期”に入り、将来は手探り状態という。経済サイト「北京商報」は、このような転換期のアウトレットについて伝えた。中国のアウトレット界はどのようなところだろうか(1元=17.14日本円)。

中国のアウトレットモールの実態は不透明

中国経済,消費,小売業
(画像=TonyV3112 / Shutterstock.com)

日本のアウトレットモールは、三井アウトレットパーク(三井不動産系)とプレミアムアウトレット(三菱地所系)の2大勢力に集約され、業態も確立されている。全国で40ヵ所に満たないが、中上位の施設はほぼ生き残りは確定だろう。

中国のアウトレットモールイメージは、日本ほど明確ではない。何しろ偽物ブランド品が街にあふれかえっていたところである。

中国初のアウトレットモールは、2002年開業の北京・ 燕莎奥特莱斯とされる。上海では、2006年開業の百聯青浦奥特莱斯広場である。このモールは2017年の売上ランキング1位で、785億円(45億8000万元)を売り上げた。20億円以上売り上げたのは、10施設、10億元以上は20施設である。

ちなみに日本では、首位の御殿場プレミアムアウトレット(静岡県)が761億円、続いて神戸三田プレミアムアウトレット(兵庫県)、ジャズドリーム長島(三重県)が450億円クラスで続いている。

筆者は、上海の百聯青浦とジャズドリーム長島の2カ所でショッピング体験を持つ。時期にもよるだろうが、筆者の体験からすると客の入りは長島のほうがよい。ショップ数は上海130店、長島200店、駐車台数は上海の1000台に対し、長島は1万3700台である。上海は客単価が高い、実店舗売上以外を計上している、の2点が考えられる。

そしてここ数年のアウトレットモール新規出店数は、2014年から2017年まで、9施設、20施設、33施設、37施設と急増中である。現在、一体何施設あるのか?それに答える明確な資料は見当たらなかった。

アウトレット“調整”の3つのキーワードとは

1 集中

記事によると、中国アウトレットモールの先駆者、北京燕莎は、このほど大掛かりな改装に入った。重点は国際ブランドの招致である。「DKNY」やイタリアのレディースバッグ「O VCVC」「デサント」などだ。また婦人靴ゾーンは、ほとんどを作り変える大規模改装を行う。知名度不足の小さなブランドは整理する。A棟、B棟、C棟それぞれコンセプトを明確にし、顧客を右往左往させない。飲食テナントも一流店を招致する。この施設では、国際ブランド、婦人靴を看板として、生き残りを図る。

2 差別化

中国のアウトレットモールは、2002年の初登場以来17年、どんどん同質化が進んでいった。立地、展開ブランドはもちろん、割引率まで変わらない。中国商業連合会創新部会によれば、アウトレットの核心とは、“ブランド+割引率”である。それが同質化してしまったら、消費者は、どこへ行っても疲労感を募らせるだけだ。同時に中国のアウトレット商品は、国際的な価格競争力を欠いている。価格を引き下げる努力が必要だ。

3 ショッピングセンター化

中国人消費者のブランドに対する姿勢は、時代とともに理性的になっている。もともと消費者は、高級ブランドと目の前にある手の届く中級品を比べている。したがって強力なブランドを誘致することは効果的だ。こうしてショッピングセンターが高級ブランドをそろえるようになる。すると今度はアウトレットモールとショッピングの区別があいまいになってくる。

アウトレットモールは飲食店不足を指摘されることが多く、最近は強化に力を尽くした。そしてますます両者は似てきたのである。

激化する多元化競争

このように検討していくと、日本のアウトレットモールは、しっかりとコンセプトを守って生存領域を確保しているのが分かる。中国では各施設がそれぞれ3つのキーワードに回答し、少なくとも10億元程度の売上を確保しなければ、生き残りは困難のように見える。

現在、中国ではO2O小売融合を意味する“新零售(新小売業)”という言葉があふれかえっている。それらを主導しているは、アリババ、京東/JDなどネット通販大手である。競争の次元は多元化して、その行方は誰にも見通せない。そして日本とは比較にならないダイナミックな市場なのは間違いない。(高野悠介、中国貿易コンサルタント)