シンカー:失業率が一般的にエコノミストが限界とみていた3.0%から2.5%に低下した後、まったくリバウンドがなかった。リバウンドがなかったことで、労働制度の改善や、IT技術の発達により、短期間でも働くことのできる環境が整う中で、活発な企業の採用活動が強い状態が続けば、失業率はバブル期の1990年前後の最低である2.0%近くまで低下していく可能性も出てきたと考える。バブル期には、失業率が2.5%から2.0%へ低下する中で、賃金上昇と物価上昇が急激に加速していった。

SG証券・会田氏の分析
(画像=PIXTA)

4月の失業率は2.5%と、3月から変化はなかった。

1-3月期の労働市場の動きはかなり大きかった。

失業率は12月の2.7%から2.5%へ低下した。

労働力人口は+1.9%、就業者は+2.2%も大きく増加した。

新たに労働力となった労働者が、すぐに就業者となった形である。

基調には、働きやすい環境が整い、女性や高齢者の就業が増加していることがある。

特殊要因としては、アルバイトの時給が大幅に上昇したことなどで、レジャーに対して就業がより魅力的となり、学業に余裕がある1-3月期に、大学生と高校生の就業が増加した可能性がある。

4月には、学業に戻るため、この特殊要因は剥げ落ちるはずであった。

しかし、4月の労働力人口は前月比-0.1%、就業者は同0.0%と、動きはなかった。

就業経験を求める動きが継続し、そのまま就業者として残ったとみられる。

一方、4月の新年度からの事業拡大のため、企業は雇用の拡大を目指してきたとみられる。

更に、働き方改革により、労働時間の制約が生まれ、それを新たに雇用を増やすことで埋め合わせる必要がある。

有効求人倍率は4月に1.59倍となり、3月から変化はなく、新年度への採用が一巡した後もかなりの高水準を維持している。

失業率が一般的にエコノミストが限界とみていた3.0%から2.5%に低下した後、まったくリバウンドがなかった。

失業率が昨年の年初に3%を下回った後も低下を続け、現在の2.5%前後まで低下が加速したのは、企業の雇用拡大の動きの影響がかなり大きいとみられる。

研究や飲食・宿泊などのサービス業、そして情報通信など、マーケットが拡大している所の雇用の増加がかなり強くなり、引き続き景気拡大シナリオに沿ってしっかり動いているとみる。

リバウンドがなかったことで、労働制度の改善や、IT技術の発達により、短期間でも働くことのできる環境が整う中で、活発な企業の採用活動が強い状態が続けば、失業率はバブル期の1990年前後の最低である2.0%近くまで低下していく可能性も出てきたと考える。

バブル期には、失業率が2.5%から2.0%へ低下する中で、賃金上昇と物価上昇が急激に加速していった。

ソシエテ・ジェネラル証券株式会社 調査部
チーフエコノミスト
会田卓司