今まで眠っていた資産を「シェア」することで、新たにお金や価値を生み出す「シェアリングエコノミー」に注目が集まっています。背景には、発想の転換とIT(情報技術)やスマートフォンなどの急速な普及があります。政府も新たな働き方として推進するシェアについて、システムや社会的影響のほか、今後の可能性や課題を考えてみます。

政府がシェア推進を積極的に後押しする理由

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(写真=SFIO CRACHO/Shutterstock.com)

2013年6月、政府は「世界最先端IT国家創造宣言」と「日本再興戦略」を閣議決定しました。そこには、IT活用による円滑な情報流通や促進に向けた整備を行い、ビジネスモデルの変革に対応するための法制上の措置などが盛り込まれています。さらに、2017年1月には「シェアリングエコノミー促進室」を内閣官房情報通信技術(IT)総合戦略室内に設置しました。

シェアリングエコノミーとは、個人が所有する資産を貸し借りするサービスです。資産は有形資産、無形資産問わず、あらゆるものが対象です。インターネットを介するのが特徴で、使用していない部分や利用していない時間を有効活用し、お金や価値を新たに生み出すものです。

矢野経済研究所の「シェアリングエコノミー(共有経済)市場に関する調査」によると、国内市場規模は2015年度に約285億円でしたが、2020年までに600億円にまで拡大すると予測しています。このように、今後もシェアリングエコノミーは高い成長率で推移し、大きな経済効果をもたらす可能性を秘めています。

シェアリングエコノミーという新たな経済モデルを本格化することにより、少子高齢化による人材不足などの課題を解決するだけでなく、政府が推進する「一億総活躍社会」や「働き方改革」を実現できると期待されています。

これまで眠っていた資産をシェアすることで、新たにお金や価値を生むことができます。そのため、個人の所得アップのほか、地方創生に資する可能性も高いといわれています。

欧米では急速な拡大を見せるシェア

欧米で拡大しているシェアは、Facebookなどのソーシャルメディアを利用した個人間(C2C)を軸に広がりを見せています。日本でも近年見られる代表的なサービスは宿泊シェアの「Airbnb」と、世界632の都市で安く迅速にタクシーを利用できる「Uber」が挙げられます。

「Airbnb」は、空き部屋を貸し出す側と部屋を借りたい旅行者などを仲介するサービスです。経済産業省によれば、2014年7月~2015年6月に日本で利用した訪日外国人は52万5,000人に上り、経済波及効果は約2,200億円でした。

スマートフォンやGPS(全地球測位システム)による位置情報の進歩で、「Uber」は配車アプリなどでタクシーによるサービス展開をしています。利用者は名前やクレジットカード情報を登録するだけで利用ができ、ドライバーは身分証明書や運転免許証などの情報を登録するなど、審査を受ける必要があります。

B2Cではシェアハウスやカーシェアリングが活発

日本でも企業と消費者間(B2C)で広がりを見せているのが、シェアハウスやカーシェアリングです。国土交通省が2014年に発表した「シェアハウス等における契約実態等に関する調査」によると、シェアハウスを全国的に運営する事業者は約600に増え、貸しルーム物件数は約3,000件となっています。

公益財団法人交通エコロジー・モビリティ財団による2017年3月の調査では、カーシェアリングの車両台数が24,458台(前年比24%増)、車両ステーション数が12,913ヵ所(同20%増)、会員数は1,085,922人(同28%増)と増加し、会員数は100万人を突破しました。

シェアを利用すれば、空き部屋や車のように、余っているものや利用していないものをインターネット経由で探し共有することができます。貸し主は収入を得られ、借り主も自ら所有せずに使いたい時に利用できるため、双方にメリットが生まれます。

今後のシェアの可能性と課題

C2Cのシェアには、企業の仲介が減ることで中間マージンを抑え、低料金で利用できるのが特徴です。一方、B2Cでは社外のスキルや資金を集めて利用するクラウドソーシングが注目されています。

シェアはIT進化に伴う新たなサービスのため、現行法の想定外となるケースも多く、合法とも非合法とも言えないグレーゾーンに置かれているのが現状です。例えば、Uberはタクシー業界からの反発や事故などのトラブル対応に不安の声も上がっており、課題が残されています。

発想の転換で生まれたシェアは日本でますます広がりを見せていますが、法整備を含むサービスへの信頼性や認知度の向上が今後、さらなる普及への鍵を握っているでしょう。(提供:J.Score Style

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