ドル円予想レンジ108.10-110.35

武部力也,週間為替相場見通し
(画像=PIXTA)

「今、まさに長年の悲願であったデフレ脱却への正念場であります」-。これは安倍首相が5/31に経団連で述べた挨拶だ。同日安倍政権が最重要課題と位置付ける“働き方改革関連法案”が衆院本会議を通過。経団連に対し3%の賃上げを要請してきた今春闘の結果も踏まえ、継続してアベノミクス加速の協力を訴えた場面となる。

政権交代でも経団連・日銀との距離感は継続

では、アベノミクスは継続なのか、円高回帰は無いのか。過去号において幾度か取り上げたが「安倍首相退陣」≒「アベグジット」として円売り急減・円買い増幅、としたリスクシナリオでは当然、読み込んでおく必要はある。しかし、永田町から聞こえる9月の自民党総裁選の構図は「安倍・麻生連合軍」+「二階派」である。この勢力に果たして、敵対する党内連合軍はあるのか、形成も難しいのでは、との観測だ。特に政局を見ながら土壇場で勝ち馬に乗ろうとする動きは過去の自民党戦国史の中で多く語られてきたパターンでもある。

前述の通り、財界との関係は良好であり現政権と経団連との蜜月ぶりは明白。支持は取り付け済みだ。加えて、安倍首相が若し退陣した場合でもアベノミクスチルドレンである、日銀総裁、日銀金融政策委員の存在は忘れてはいけない。

5/22参院財政金融委で黒田日銀総裁が「(現時点では)出口戦略に着手するタイミングを検討する局面には至っていない」「当然、2%に達する前に出口に出てしまうことにはならない」と言明。現策継続の覚悟を示す日銀に対し、安倍首相以外の新首相が仮にアベノミクス全否定、真逆の金融政策を、現総裁・政策審議員らに強制できるだろうか。任期2020-22年が多数であることから残党一掃、とはならないのだ。“長短金利操作付き量的・質的金融緩和”の枠組は政権が代わっても急な舵切りは出来ない筈であり、6/1に日銀オペの減額でも市場は直ちに金融正常化には結び付けず、逆に円安反転したのが、市場認識の表れではないか。一部大手報道機関が5/25-27の世論調査で、「安倍内閣支持は42%、前回時からほぼ横ばい」、と発表。“行政・学園問題”で以前のような国民向け求心力は低下したかもしれないが、「アベグジット」としたリスク感応度を高める必要は低いのではないか。

6/12米朝会談に向けては日米同盟関係の維持が少なからず安倍政権に対し支持加点される局面、として筆者は推考している。

6/4週ドル円焦点

上値焦点は5/25-28高値109.76、5/24高値110.06、200日線推移の110.20近傍。越えれば5/23安値109.545からの戻り高値110.35視野。110円半ば超で同日高値110.925期待。下値焦点は5/30-31安値圏108.37-34、5/29安値108.10。108円台が割れると北朝鮮が「核実験やICBM発射の廃止、核実験場の閉鎖」などを表明し、米10年債利回り上昇も受けて堅調推移した4/23東京市場での横ばい価格帯107.90-70留意。

武部力也,週間為替相場見通し
(画像=岡三オンライン証券)

武部力也
岡三オンライン証券 投資情報部長兼シニアストラテジスト