日経平均予想レンジ21,934~22,542円

伊藤嘉洋,株式相場見通し
(画像=PIXTA)

今週はイタリア政局の混迷を受けた欧米株安の流れを引き継ぎ、日経平均は4/18以来節目の22,000円を割り込む場面が見られた。為替が円高方向に振れて推移したことも相場の重しとなった。

海外の焦点

イタリアの政局混迷により世界の株価の戻りを支えてきた楽観論が揺らぎ始めている。イタリアでの市場混乱のきっかけは、間近と見られていた新政権誕生が白紙に戻ったことだ。3月の総選挙以降、EUへの立場を巡り、協調派と懐疑派の対立が深刻化して、夏には再選挙が行われる可能性が浮上している。市場ではばらまき政策を掲げる懐疑派が勢いを増せば同国がEU離脱に向いかねないとの警戒感が広がっている。30日に新政権樹立に向けた新たな動きが報じられ、一旦イタリア政局を巡る懸念が和らいでいるものの予断を許さない状況は続きそうだ。

一方、米利上げ加速への警戒感は和らいでいる。FOMCの議事要旨でインフレ率が2%を一時的に上回っても2%前後とする物価目標に矛盾しないと表明。市場はインフレが高進してもFRBは利上げペースを緩やかにとどめる姿勢と受け止めている。年内3回利上げを示唆するタカ派的なメッセージは示さず、10年債利回りは3%の節目を割り込み2.85%付近で推移していることで安心感につながっている。又、欧州の政治不安の高まりでFRBが利上げをしにくくなるとの思惑も指摘される。

国内の焦点

投資主体者別売買動向で外国人は4月第1週から5月第4週まで現物先物合計で2兆3,300億円買い越した(内現物2,265億円売り越し)。1-3月に現物先物合計で7.7兆円と大幅に売り越した分の買い戻しが中心。海外勢の買い戻し余地はまだ大きいが現物に海外資金が流入しないと相場の戻りは限定的になりやすい。日経先物を欧州系大手証券が買い越し基調から5/22の下落をきっかけに5/22-30まで約4,500枚売り転換してきた動きは警戒される。今回の決算がやや低調なだけに6月のメジャーSQに向けての海外勢の動きは注視しておきたい。

テクニカル面では、25日線を上回れず失望感は強い。5日、25日線のデッドクロスで日柄調整継続が想定される。一方、2/8から下降に転じた75日線が5/29から上向きに転じた。ここで踏みとどまれば短期的には25日線とのレンジ相場形成の可能性が強まる。ただ75日線を下抜けた場合は本格調整から下げはきつくなりそうだ。

来週の株式相場

以上、来週は米中通商問題、米朝首脳会談など米国絡みの話題に加え欧州情勢を見守る中、レンジ内での日柄調整局面と捉えている。日経平均のレンジは上値は25日線22,542円が目処となり、下値は75日線21,934円が意識される。

伊藤嘉洋,株式相場見通し
(画像=岡三オンライン証券)

伊藤嘉洋
岡三オンライン証券 チーフストラテジスト