電子化が進み、AI技術も発達していく中で、お金の使い方に関する考え方も変わろうとしている。FinTechは盛り上がりを見せ、仮想通貨という新たな概念すらも現れた。これまでの現金主義ではなく、キャッシュレス化が世界各国で進行しているのだ。
今回は、世界で進むキャッシュレス化の実態とそれを踏まえた日本の現状、そして求められる今後の動きについて見ていこう。
キャッシュレス化後進国、日本
日本は、現金主義がひときわ強い国と言われている。「財布には必ず現金を入れて、お店で何か商品を買う時も基本的には現金で支払う」という人も多いだろう。
しかし、そんな日本でも、キャッシュレス化の波が来ていないわけではない。2007年にはキャッシュレス比率13.8%だったのが、2016年には19.8%と、徐々にではあるがその比率を伸ばしているのは事実である。
これは、「Amazonや楽天など、オンラインショッピングの機会が増えたこと」「Suica、Pasmoといった電子マネーが一般化したこと」などが要因と考えられる。
こうした国内だけの数値を見比べれば、日本のキャッシュレス化は順調に見えるのだが、諸外国の数値と比較をすると、その遅れが大きく目立ってしまう。
例えばお隣、韓国。2016年のキャッシュレス比率は96.4%という驚異的な数字を誇る。また、同じ島国であるイギリスでは、2007年に37.9%だったキャッシュレス比率が2016年には68.7%にまで伸びている。その差はなんと30.8%だ。ロンドン五輪を契機とした、政府主導のキャッシュレス化推進が、功を奏した形と言えるだろう。
その他にも、アメリカ46.0%、フランス40.0%と、日本のキャッシュレス化は先進国と呼ばれる国々とは大きな差を付けられてしまっているのだ。
キャッシュレス化が進むことによるメリットとは?
キャッシュレス化が進むことによるメリットは非常に大きい。
利便性という部分で見れば、消費者は現金を持ち運ぶ必要が無くなるため、金融機関やATMなどを探して街を歩く、などという負担を解消することができるだろう。また、サービスを提供する側にとっても、現金管理やそれらの運搬に掛かる手間やコストを削減することができる。
しかも現金を持ち歩かないからこそ、スリや盗難といった犯罪の抑止にも繋がる。もし仮にそれらの被害にあってしまったとしても、すぐに対応をすることができれば、不正使用などの可能性も極めて低い。
また、クレジットカード利用などによる購入データを入手することにより、消費者の購買行動を分析し、売上向上のための施策を考え出すこともできるだろう。購買行動という部分で見れば、それまでは財布の中の現金および自分の足が届く範囲での購買に限定されていたものが、キャッシュレス化が進むことにより、その範囲が一気に拡大する。
インターネットでアクセスできる範囲はすべて購入の範囲となり、さらには預金額にクレジットカードの与信枠までも加えた予算にまで、購入金額の限界が引き上げられることになるため、最終的にはGDPの増加にも寄与すると言われているのだ。
諸外国に学ぶ、キャッシュレス推進の方法
このように、メリットとなる部分が非常に大きいキャッシュレス化ではあるが、だからといって普及するのを待つだけでは意味がない。消費者の考え方や行動を変えるためには、政府や企業など、サービス提供側の努力が必要不可欠だからだ。
キャッシュレス化が進む国々では、クレジットカード用の決済端末導入の際に補助金を支給したり、それに合わせて加盟店へのキャッシュレス導入を義務化したりと、もはやルールの一環としてキャッシュレスを位置付けている。スウェーデンでは、店側が現金の支払いを拒否できることを法律で担保するという特例まである。
一方で消費者側に対しては、キャッシュレス決済分が所得控除になったり、くじ等によるキャッシュレス決済利用限定の金銭メリットを提供したりと、カードを使いたくなる仕掛けがしっかり用意されている。CMや各種サイトにおいてのキャッシュレス決済の利用促進もかなり積極的だ。
政府側、店舗側、消費者側、それら3つの思惑をしっかりと汲み取り、相互にメリットを享受し合える環境を整えることが、キャッシュレス化最大の課題であり、目指すべき到達点と言えるだろう。(提供:百計ONLINE)
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