AI(人工知能)やロボットが産業を変革する。昨今、世界をにぎわせているこの現象は「第四次産業革命」とも呼ばれており、我々の産業から働き方まで大きな変化をもたらしていく見込みだ。

では、そのようなAI時代に求められるのは、どのような人材なのだろうか。また、会社として求められる役割は何だろうか。今回は、AI時代をダイバーシティという観点から考えていく。

「AIに仕事を奪われる」のは本当か?

AI
(写真=metamorworks/Shutterstock.com)

少子高齢化による労働力不足という問題を解決するために、AIやロボットの活用が注目を集めている。2015年に、NRI(野村総合研究所)によってあるデータが発表された。それは、日本の労働人口の約49%が就いている職業が、10~20年後にはAIやロボットで代替可能になるというものだ。

この結果を見ると、巷でよく騒がれている「AIに仕事を奪われる」というのが現実的に感じられるだろう。しかし、AIは決して万能ではない。AIは、膨大な情報の中からルールや最適解を見つけたり、正確無比に休みなく高速で処理したりする能力に長けている。これは、人間では到底追い付けない能力だ。しかし、創造性やコミュニケーション能力を必要とする非定型な業務は、AIが不得意とする分野なのだ。

今までの産業革命がそうであったように、仕事が機械に代替されれば、新たな仕事が生まれることになる。AIが奪う仕事というのは、本来人間がしなくても良いものなのだ。だからこそ、これからは付加価値の高い仕事に人が携わることが求められるようになる。

AI時代に活躍するのは個性豊かな人材たち

AIの活用が浸透した社会では、どのような人材が活躍できるのか。それは、AIが苦手とする「新しいものを創れる能力」、「人を引っ張っていけるコミュニケーション力」、「マニュアルにないことに臨機応変に対応できる能力」を有する人材であろう。

全てを均等にこなせる必要はない。何か一つでも尖った才能のある、個性豊かな人材たちが求められるようになる。

今までの日本社会では、何でも器用にこなすゼネラリスト人材が求められ、そのような人材を採用・育成・評価してきた。しかし、これからの時代はゼネラルな仕事はAIに代替されていく。AI時代を生き抜くためには、その人ならではの価値を提供できなければならないのだ。

AI時代に求められるダイバーシティとは

個性豊かな人材が活躍するAI時代には、企業にもダイバーシティが求められる。ダイバーシティとは「多様性の受容」という意味で、人それぞれの違いを認め、活かしていくということだ。人種や性別、年齢、障害の有無、価値観、宗教、性格、嗜好。本来、これらのようなものは誰一人として同じではない。画一的なあり方を強制せず、個性を活かす。そのような企業風土を醸成していくことが、AI時代に勝ち抜く企業となるための鍵となる。

ダイバーシティは、もはやAIという側面だけでなく、グローバル化や採用難という側面から見ても必須の事項だろう。女性や外国人、高齢者の活用は目前の課題であり、彼らの能力を活かすためには、従来の男性正社員を中心とした働き方から脱却しなければならない。

多用な人材を評価する体制への変革

多用な人材を活かすには、経営者が主導してダイバーシティを推進する必要がある。多様な人材を活かし適切に評価する仕組みづくりは、口で言うほど容易いものではない。単純に個性的な社員を増やすだけでは、現場は混乱してマネジメントが立ち行かなくなる。経営者が自ら「ダイバーシティを積極的に受け入れ、活用する」というメッセージを、社内外に強く発信することから始めなければならない。

また、組織としての行動をまとめるには、企業としての強い「ビジョン」が必要になる。ビジョンが行動の判断基準となれば、多用な人材を活用しながらも、企業全体として同じ方向を向くことができるのだ。

このように、AI時代のダイバーシティでは、経営者の力が今まで以上に求められることになる。AIでは代替できない価値を提供する個性豊かな人材を活用し、正しく評価する会社こそが、これからの時代を強く生き抜いていくことになるだろう。(提供:百計ONLINE

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