中国では、ホワイトカラーを目指す大学卒業生たちと採用する企業の間にギャップが存在し、しかも年々拡大しつつある。大学卒業生は増え続け、今年は820万人に上った。

しかし満足のいく就職だったと答えた者は1%もいない。徒手空拳ではとても戦えそうにない。こう認識を改めた学生たちが、資格に目を向け始めたのは想像に難くない。

7月上旬、ニュースサイト「今日頭条」は、未来十年、最も稼げる資格証書13選、という記事を掲載した。こうした記事の出ること自体が、中国社会の変化を物語っている。その13の稼げる資格とは、どのようなものだろうか(1元=16.67日本円)。

有望な13資格

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(画像=DW2630 / shutterstock.com)

●1 特許金融分析師資格証書

CFA協会(米国バージニア州)認定証券アナリストのことである。1963年設立のAIMR(米国投資管理調査協会)に由来する、世界最大規模の資格試験である。三等級に分かれた英語の試験に合格し、少なくとも4年間の投資分析実務経験が必要である。メンバーは全世界に14万600人(2016年)。この資格を持っていれば、頭一つ抜け出すのは確実である。

●2 翻訳専業資格水平証書

国家人力資源社会保障部の「翻訳専業資格考試暫行規定」による資格試験で年齢、学歴、職歴は不問。合格者には、国家職業資格証書制度に基付き、証書が授与される。国際会議や講演などの通訳を努めるクラスは全国で2500人もいない。日当は最低でも4000元(6万7000円)。実力次第では8000元も狙える。

●3 注冊土木工程師執業資格証書

岩石、港湾と航路、水利と水力発電、道路工程の4部門に分かれている。注冊とは登録を意味する言葉で、これら4部門のプロデューサー資格のようなものだろう。試験は2日間にわたり、みっちり行われる。経験を積めば破格の高給も可能となる。

●4 清算師資格証書

清算師とはアクチュアリー(保険数理士)のことである。1999年、中国保険監督管理委員会が試験を開始した。米国と英国アクチュアリー会の試験を参考にしている。一定期間の保険業に従事した経験が必要。中国の保険業界は、まだ荒々しい気風と高成長が続いていること、大企業と雇用契約を結べることから、高収入を期待できる。

●5 一級注冊結構工程師執業資格証書

結構は構造の意で、かつて日本でも話題になった「構造設計一級建築士」である。土木、建築資格の中では、最大難度を誇る。微積分や物理など理数系の卓越した才能は不可欠だ。それだけにこの資格における“金”の含有量は大きい。

●6 国際注冊会計師ACCA

ACCAとは国際会計基準に基付く財務会計に特化した、英国勅許公認会計士会のことである。外資企業との合弁の際、非常に重要なポジションだ。合弁企業の設立後も継続して役に立つ、非常に有用な資格である。

●7 律師資格書

律師とは弁護士の意である。その地位の高さは日本と同様、わざわざ言うまでもない。同級生たちにとっては羨望の的だろう。

●8 薬剤師証書

薬剤師の収入は、あまり安定していない。経験の有無に大きく関連する。3~4000元くらいしかもらっていない薬剤師も存在する。ふつうは1万元くらいだろう。しかし健康志向の高まりの中、重要な資格になっていくのは間違いない。

●9 計算機等級証書

1994年、教育部(文部科学省に相当)が開始した。コンピューターの応用知識などを問う。一級から四級まで四段階に分かれ、合格者には教育部孝試センターより資格証書が与えられる。

●10 第二外語証書

全国職称外語等級孝試(試験)には、英語、日本語、ロシア語、ドイツ語、フランス語、スペイン語の6種がある。これ以外にも、韓国語、イタリア語、アラビア語、ポルトガル語も有望である。関連企業への就職や、取引のチャンスは大きく広がる。

●11 会計従業資格証書

審計(経済監督活動)会計、財務管理、税法、経済法、企業戦略、リスク管理の6科目に分かれている。科目ごとに段階を追って合格することが可能。しかし、この制度は改変される模様。

●12 一級建造師証書

建造師とは、施工管理を担い、管理、技術、経済、法規に精通した複合型の人材である。全国試験が行われる。いわゆる現場監督としての資格だろう。工事がなくならない限り、高給は保証されている。

●13 護士資格証書

護士とは看護師のことである。国家統一試験が行われる。責任は重く、非常につらい職業ではあるが、給料やその他の待遇面は、総体的に改善されてきた。

資格への意識は高まる。

複数挙げられているのは、会計・金融と土木・建築、そして医療に関わる資格だった。日本ほど細分化されていないようで、おおざっぱな印象だ。

これまでの中国的人生とは、自己主張と交渉を繰り返し、少しでも自己とその一族の地位上昇を図る、終わりのない消耗戦だった。それは一対一の局地戦が基本である。ビジネス社会でも、取引先や上司に対する、アピール力さえあれば、のし上がることは十分可能だった。前世代の人たちにとっては、資格のような客観的指標より交渉力であった。

しかし90后(1990年代生まれ)の台頭とともに、少しずつ様相は変化してきた。公共意識や、社会正義への関心など、世界標準化が進んでいる。その一方で価値観は多様化し、明らかに前世代とは別種に育っている。

そうした背景下、就職におけるアンマッチの拡大とともに、資格に対する意識は急速に高まっている。若い世代が客観性を欲しているのは間違いなさそうである。(高野悠介、中国貿易コンサルタント)