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「財布(銀行口座)を別々にするか、共有するか」。カップルが一緒に暮らし始める際、必ず持ち上がる議題である。共有財布はお互いの絆が深まるように感じたり、金銭感覚を同レベルに保ちやすかったりするなど利点も多々ある。反面、片方ばかりに管理を任せていると、金融リテラシー格差が生じたり、家計の意思決定を行う権限のバランスが崩れたりする欠点も出てくるようだ。
ミレニアル世代の3割は既に「別財布」を実行しており、家計と自分の資産の境界線を明確に引いている。
専門家の意見から、理想の家計共有法を見つけてみよう。
「共有財布」で生じる金融リテラシー格差
Journal of Consumer Researchは、カップルの責任分配が金融リテラシーと家計をどのように形成するかを調査し、2018年4月に発表した。その結果、一般的には関係の初期は両者の金融リテラシーが同じぐらいであるにも関わらず、関係が長く続くほど、パートナー間の金融リテラシーの格差が大きくなる傾向が見られたという。
海外には夫婦共同名義の口座を作れる国もあるが、日本では銀行口座は基本的に1人の名義になる。そのため夫婦共同の名義の口座は作れないが、「代理人カード」を発行すれば共同名義に近い形で口座を使うことができる。カップルの場合は作れない。
カップルが一緒に生活すると 、一方が家計の財務的な仕事を引き受け、もう一方が仕事や家事、子育てといったほかの義務を引き受けるパターンが多い。
しかし年月とともに、「一家の最高財務責任者(CFO)」の役割を果たしているほうの金融リテラシーは向上するが、家計の管理をパートナーに任せっぱなしにしているほうの金融リテラシーは低下する。
関係が上手くいっているうちはそれでも問題がないだろう。しかし長年家計の管理に無頓着だった人が、パートナーとの死別などの理由で突然家計の管理をする必要が生じた場合、何年、何十年という金融リテラシーのギャップを埋めるのは困難だ(CNBC2018年6月23日付記事)。
「金融アイデンティティ」とは?
カナダの著名な起業家ケビン・オレアリー氏も、「カップルは別財布にしておくべき」とアドバイスし、「自分の金融アイデンティティは維持しておく」ことを勧めている。つまり、自分の財政的な主体性はおろそかにしてはならないということだ。
オレアリー氏の考えでは、結婚したからといって 自分の預金口座のお金をすべてパートナーの口座に移すなど、もっての他だ。特に預金口座の状態が各種ローンだけではなく就職などにも影響する「クレジットスコア社会」が確立している米国では、あくまで個人としての経済的な信用を築いていく必要がある。クレジットカードなどは自分の口座から支払うほうが、自分自身のクレジットスコア向上につながる。クレジットスコアが高ければ高いほど、将来融資やクレカの借り入れを受ける際、金利も低くなる 。
カップルのお金の管理
それではカップル間のお金の管理はどうするのが理想的なのだろう。
オレアリー氏は結婚、あるいは同居を始める前からの個人口座を維持し、新たに共同口座を開設することを勧めている。住宅費や食費、光熱費などはこの共同口座を通して管理し、自分の資産や自由になるお金はあくまで個人口座で管理する。これによって、家計を共有しながら、自分の金融アイデンティーはしっかりと守れる(CNBC2018年6月21日付記事 )。
だからと言って、お金に関する隠し事は、信頼関係を壊しかねない。一緒に暮らすと決めた相手とは早い段階にお金の管理についてじっくりと話し合うことも重要だ。
TD Bankが2016年に発表した調査結果では、パートナーと頻繁にお金について話し合っているカップルのほうが、そうでないカップルより幸福度が高いことが分かった。最低週1回パートナーとお金について話す回答者の78%が「幸せ」と答えたのに対し、数カ月に1回以下しか話さない回答者で同じ回答をしたのは50%だった。
ミレニアル世代はパートナーとお金の話をすることに、最も抵抗がない世代だ。29%が毎日、45%が最低週1回は、パートナーとお金について話をしている。
ミレニアル世代の3割は「別財布」
金融危機で両親が苦しむ姿を見て育ったミレニアル世代は、上の世代よりも経済観念がしっかりしているという調査結果が報告されている。そのためか、上の世代よりも「別財布」に抵抗がないようだ。
バンク・オブ・アメリカが発表した「2018 Better Money Habit Millennial Report」 によると、ミレニアル世代(23〜37歳)の28%が既に「別財布」を実践している。同じように財布・口座を別にしているX世代は11%、ベビーブーマー世代は13%しかいない。また約5人に1人がパートナーの所得を把握していない。
ミレニアル世代が貯蓄している割合は ベビーブーマー世代とX世代より低いが、貯蓄目標を持っている割合は世代中最も高い。また経済的安定感を得ている割合もX世代より高い。
10万ドル以上の貯蓄があるミレニアル世代は、2015年から14ポイント増の47%。家計の予算を組んで生活しているミレニアル世代の73%、貯蓄目標のあるミレニアル世代の67%が、毎月あるいはほぼ毎月予算以内に納めている。しかし25%が経済的な問題にストレスを感じており、家事の負担によるストレスよりも深刻だ。(アレン・琴子、英国在住フリーランスライター)
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