近年、事業拡大の効率的な手段として注目されるのが、小さな事業を買ってその事業が培ってきたノウハウやラインを基盤とする方法である。効率のみならず事業拡大に伴うリスクの軽減にもつながる、小さな事業を買うという事業拡大戦略のメリットを見ていこう。

アンドビズ
(画像=PIXTA)

小さな事業を買うことはさまざまな事業拡大スタイルに対応

既存事業の規模拡大や強化、業務の多角化や新規事業への参入など、事業拡大といってもさまざまな意味合いが考えられる。そしてどの拡大方針をとっても、仮に現存のリソースを使って事業拡大に関わるすべてをゼロから始めようとすると、多大な労力と時間が必要となることは容易に想像できるだろう。設備投資から人材の確保と教育、ノウハウの体系化、販路や顧客の確保など、膨大な作業量と時間が必要であり、それに伴うリスクも発生する。

そんな中で注目を浴びているのが、M&Aを事業拡大に活用する方法である。かつて日本では、M&Aそのものに対してネガティブな誤認識があった。大企業のマネーゲーム、非友好的な経営戦略などとみなされ、特に中小規模企業からは敬遠されがちだった。

しかし近年その誤認識は解消され、中小規模企業にとっても有効な経営手段の1つとして捉えられ始めてきている。その理由は、事業拡大をゼロスタートする際と比較しての効率の良さとリスクの軽減である。

大抵の中・小規模サイズのビジネスにとって、事業拡大はなるべく少ないリスクで、短期間に利益に結び付けたい経営戦略である。事業拡大プロセスに伴う時間や手間などは可能な限り省きたい部分であり、既存のビジネスモデルを持つ小さな事業を買い取って事業拡大に生かす方法は、そのような企業とって非常に効率的な経営戦略とあると認識され始めたのである。

M&Aで事業を買うには、事業を合併する方法、経営権を手にする方法、資産や事業ごと買収し統合する方法、資産や営業権など事業の一部だけを譲受する方法などがある。どのような路線で事業拡大を図るか、また売り手側の意思によって、それぞれ適したM&Aスタイルがある。

小さな事業を買うことで享受できるメリットとは

小さな事業を買い取って事業拡大を図る場合、ゼロスタートから事業の拡大する場合と比較すると、具体的に次のようなメリットが考えられる。

・時間の短縮
設備投資やノウハウの確立、顧客や販売ラインの開拓、人材確保と教育などを、買い取った事業から引き継ぐことによって大幅に短縮することができる。

・無形資産を受け継ぐ
ノウハウ、人材、販路、顧客、技術、商標、特許や権利などのさまざまな無形資産を受け継ぎ、そのまま事業拡大に生かすことができる。

・有形資産を確保
機械、設備、在庫や株、不動産などといった有形資産を受け継ぐことができる。

・リスクの削減
買い取った事業がすでに確立している販路や事業ラインを受け継ぐことによって、新規顧客や販路を獲得できないリスクや、事業拡大開始に必要なプロセスに時間を要することによってビジネスチャンスを失うリスクなどを減らすことができる。

・効率よく利益を追求できる
何もない状態からの事業拡大の場合、利益にたどり着くまでにはさまざまな試行錯誤や失敗を乗り越える必要がある。買い取った事業からの前例を踏襲することによって、効率良く利益まで結びつけることが可能となる。

・シナジー効果が期待できる
有形、無形にかかわらず経営資源を有効活用することや、異なる事業を組み合わせることで付加価値が生まれ、更なる相乗効果(シナジー効果)が期待できる可能性がある。

まず初めに情報収集の大切さ

事業拡大のために事業を買うことが注目され始めた理由とメリットを挙げたが、事業を買う際に最も大切なことは、M&Aでは買収監査ともいわれるデューデリジェンスである。財務内容や法的観点、組織の姿や財務活動などさまざまな面から調査し、正当な市場価値やリスクなどの情報を徹底的に集めることはもちろん、企業カルチャーが合っているかなど、ソフト面の情報も大切になる。より多くの情報を集めることによって最適な事業を見つけ、M&Aを成功に導くことができるのである。