起業する際に重要なのは、経営資源の基本となる「人・物・金・情報」をどれだけタイムリーに準備できるかである。M&Aを利用した買収型起業は、足りない経営資源を補うプラスからの起業方法として近年注目を集めている。そのメリットと注意点を見ていこう。

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(画像=PIXTA)

M&Aを利用した買収型起業が注目されるわけ

近年M&Aを利用して起業する方法が注目を集めている。副業や兼業の奨励により起業が注目され始めたが、ゼロからの起業はハードルが高い事や、後継者不足などから事業を売りたい中小企業が増えていて供給があること、これらを受けて中小M&Aのマッチングサービスが普及し始めたことなどが主な理由である。

2017年度版中小企業白書によると、起業家がスタートアップ期に直面する問題として、事業や経営に必要な知識やノウハウの取得、資金調達、質の高い人材の確保、販路開拓とマーケティング、自社の宣伝及びPR、量的な労働力の確保などが多く挙げられていることが分かった。

このような「人・物・金・情報」に関する経営資源問題は、すでに存在する事業を買い取り起業することで、ある程度回避が可能である。買収型起業どのようなメリットがあるのかを具体的に見てみよう。

さまざまな経営資源が確保できる買収型起業

・即戦力が付いてくる
起業にあたって新たな人材を採用する必要がある場合、面接や育成などに多くの時間と費用が掛かる。中小規模のM&Aの場合、事業のノウハウを持った即戦力となる人材を前経営から引き継げる形が多いため、新たな人材を探す必要はない。

・経営を軌道に乗せるまでの時間短縮が可能
ゼロからの起業では、起業にまつわる法的な手続きから初期設備投資やサービスの立ち上げ、顧客を開拓など、経営が軌道に乗るまでに少なくとも数年見積もる必要がある。既存のビジネスを買い取って起業する場合すでに設備があり、販路や顧客の開拓も引き継ぐことができるため大幅な時間短縮となる。

・経営戦略を立てやすい
既存の事業には過去からの売り上げデータが付いてくる。そのためキャッシュフローを予測しやすく、現実的な経営戦略を立てることが可能となる。また、実践的なノウハウなどを引き継ぐことができるため、問題に直面した際に試行錯誤する時間を減らせ、短時間で安定した経営レベルに持っていくことが可能となる。

・許認可や商標などを受け継げる
事業に必要なさまざまな認可や商標、特許などの無形資産や、プログラムなどの技術資産を受け継ぐことができる。

以上のようにM&Aを利用して起業する場合、必要な経営資源がある程度揃っている状態で経営が開始できるので、ゼロからの起業に比べると時間的なリスクを大幅に減らすことが可能となることが分かる。

M&Aを利用して買収型起業を考える際に注意すべき点

必要な経営資源がある程度揃っているからといって、楽をすることが目的で買収型起業を考えるのは安直である。最後にM&Aを利用して起業を考える際の注意点を見ていきたい。

まず考慮したい点は、買収型起業によって自分に足りない経営資源を補えるかどうかだ。例えば確固たるアイディアがあり人脈もあるが資金が足りない場合には、まとまった買収費用が必要でノウハウも付いてくる買収型起業方法がベストとは限らない。マネージメントの知識と経験があり、資金と経営ノウハウはあるが人脈と時間がない場合、マッチする案件があればM&Aによる起業は有効な選択肢だろう。

できるだけ多くの情報収集をすることも重要である。M&Aではデューデリジェンスによって、適正な企業価値や買収後の経営リスクなどを把握する。企業情報をどれだけ正確に把握できるかによって、M&Aによる起業の成否は大きく変わるためである。当事者や関係者によるバイアスのかかった情報でなく、第三者によるフェアな情報を多く集めることが重要となる。