米国の住宅情報サイト「HomeAdvisor」が2018年3月、1012人のホームオーナーを対象に実施した調査では、84%以上が買い替えや住み替えを計画しておらず、50%がリフォームを検討していることが分かった。また別の調査では、64%が「業者に頼まず自分でリフォームする準備ができている」と答えている。市場に売りだされている住宅の件数が非常に少なく、価格が上がっていることが原因の一つのようだ。

3分の2が家の買い替えをしたいが、リフォームで我慢?

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(画像=Stokkete / Shutterstock.com)

アメリカ市場で販売されている住宅件数は2017年の時点で既に減少傾向にあったが、2018年にはさらに減っている。特に20万ドル以下で新たに売りに出される住宅が12%も減った一方で、価格は過去1年で8%上がった。こうした買い手にとっては不利な状況が原因で、買い替えよりもリフォームを選ぶホームオーナーが増えたようだ。

およそ3分の2が「希望にあった新しい家を購入したい」と考えているにも関わらず、84%が今後12カ月以内に「家を売る予定はない」、半分が「リフォームを検討している」と答えた。

既に過去12カ月間で、ホームオーナーにとって「しなければならないこと」のトップに、修理・維持・改善が浮上している。

これはそもそも多くのホームオーナーが仕事や経済的な理由で住み替えを希望しているのではなく、より広い空間や部屋数、好みや流行に合ったデザインを求めているためではないかと思われる。例えばガレージや使っていない部屋を改造する、クローゼットシステムを備え付ける、新しいバスユニットに替えるなどちょっとしたリフォームを施すだけで、住み慣れた我が家に新鮮味が生まれる。家を買い替えるよりも手っ取り早く、コストやストレスも低く抑えられるだろう。

リフォーム費用は平均74万円 予算オーバーは当たり前?

実際にどれぐらいの費用をかけて、どのようなリフォームをしているのだろう?過去12カ月でホームオーナーがリフォームに費やした金額は平均6649ドル。インテリア塗装、造園、バスルーム改装、床の張替え、外観の塗装が、今後12カ月で着手したいプロジェクトのトップ5だ。

しかしどこに手を加えるにしても、予算を大幅にオーバーしてしまう場合が多いようだ。インテリア塗装の見積もり平均は734ドルだったが、実際には平均1744ドルもかかっている。造園の見積もりは平均1188ドルだが実際は平均3272ドル、バスルームの改装の見積もりは平均2406ドルだが実際は平均9723ドルを支払っている。見積もりと実際のコストに最も差があったのはキッチンの改装で、見積もりのほぼ5倍である2.2万ドルが平均だった。 リフォームといっても予想以上のお金がかかる、あるいはかけてしまうホームオーナーが多いということだろう。

6割以上「自分でリフォームできる」自信あり

リフォームコストを抑えるために注目を集めているのが「DIY」だ。「Do It Yourself」の略で、専門業者に依頼せず自分で何かを修理する・作ることを指す。「できる限り自分でリフォームする」というホームオーナーが増えている。

日曜大工用品チェーンHome Depotが25歳以上の消費者を対象に実施した調査では、1000人のうち57%「業者に頼まず、自分でできる」、64%が「自分でリフォームする準備ができている」と答えた(apartmenttherapy.com2018年5月1日付記事)。

配管・電気・ガス系統といった特殊な専門知識・技術が必要なものは、安全性を重視して専門家に任すに越したことはない。その他のリフォームであれば、正しいペンキの塗装の仕方から床の張替えまで、YouTubeなどの無料動画で詳しいやり方が学べる時代だ。

日本の住宅とは構造や資材などが異なるだろうが、「古い和室を洋室に改造する」「壁紙を貼り変える」といったDIYリフォームに取り組む日本のホームオーナーも増えているようだ。初心者向けなら壁にデコレーションや収納用のピクチャーレールを取り付ける、カーテンをロールスクリーンに替えるだけでも、部屋の雰囲気がガラリと変わるだろう。

リフォームで家の価値アップ?

リフォームのもうひとつの利点として、「家の査定価格が上がる」と期待しているホームオーナーが多い。しかし単にサンルームを建てたから、外装を新しくしたからといって、必ずしもコストと価値が釣り合うわけではない 。

コストを抑えるために安い資材を使えばそれなりの仕上がりにしかならず、家の価値も上がりにくい。この辺りは邪な期待をせず、純粋に「今の家をもっと住みやすく、もっと素敵にリフォームしたい」という気持ちでいた方が良いのかも知れない。

日本の住宅では難しいが、欧米では屋根裏を寝室に改造したり、庭を削って増築して部屋数を増やすホームオーナーが多い。外装・内装だけではなく、省エネグッズを導入して家庭のエネルギー効率を高めるのも一案だ。

屋根裏の改造や増築といった大掛かりなリフォームになると、業者に依頼することになるだろう。しかし、コスト以上に価値が上がり、かつ家が使いやすい、あるいは広くなれば一石二鳥である。(アレン・琴子、英国在住フリーランスライター)