高級ブランド品などの偽造品の取引を行う「偽造品ビジネス」は、年間推定4620億ドル 相当の市場となっている。偽造品撲滅に年1500万ユーロ(約15億円)を投じるLVMHなど、多くのブランドが撲滅に乗りだしているが、一筋縄ではいかないようだ。
偽造品取引が世界の貿易総額の2.5%に
OECDが2016年に発表した調査報告書「Trade in Counterfeit and Pirated Goods」によると、偽造品の取引は2013年の時点で、世界の貿易総額の2.5%に値する年間4610億ドル膨らんでいた 。OECDが 2008年に実施した同様の調査と比較すると、貿易総額を占める割合は0.6ポイント、取引総額は2610億ドルもふえている。
偽造品の63.2%は中国、21.3%は香港で製造されている。ターゲットとなりやすいブランドの5分の1は米国のもので、イタリア、フランス、スイス、日本、ドイツのものが多い。2011~13年にかけて、これらの偽造品の62%は小包みで郵送されていた。
最も偽造されているのはLouis Vuittonのバッグ、Rolexの腕時計、Ray Banのサングラス、Nikeのシューズなど。「すべての偽造品は本物よりもはるかに安い」というわけではなく、例えばRolexの腕時計なら最高2万ドル、Louis Vuittonのバッグなら最高1500ドルで売られているケースもある。
その他、GUCCI、HERMES、LEVI'S、adidas、POLO RALPH LAUREN、COACH、Cartier、UGG、Tiffany&Co.など、数え上げるときりがない。
物質主義者は偽物にもあまり抵抗がない?
科学者や研究者向けSNS「Research Gate」が韓国の女子大生324人を対象にブランド品の購入意思について調査を実施した。
高級ブランドのハンドバッグ、靴、洋服、サングラス、ジュエリーの「本物を購入したい」という回答の平均値は1.00満点中0.91。「偽物でもいい」という回答の平均値も0.88と高かった。
「本物が高価すぎる」「本物と偽物の見分けがつかない(のであれば、高いお金を払いたくない)」といった経済的な理由から、偽造品で我慢するという考え方の平均値は0.84。
「高価な家、車、服を所有する人を賞賛する」「物質的な豊かさも、人生における重要な達成のひとつである」「人から一目置かれるものを所有するのが好き」などという物質主義の平均値は0.81だった。
偽造品ビジネスと戦う高級ブランド
この調査が示すように、消費者間で「偽物でもいい」という考えがさらに広がれば、高級ブランドにとっては致命傷となりかねない。近年、多くの高級ブランドが偽造品の撲滅に乗りだしているが、市場の需要がある限り、いたちごっこという印象は否めない。
そこでこれらのブランドは追及の矛先を偽造品を製造している工場から、マーケットプレイスやオークションサイト、決済サービス会社、ドメイン登録サービス会社といった偽造品ビジネスを促進する合法的な企業へと変えた。
自社ブランドの偽造品を販売している400以上のサイトを訴え、9000万ドルの賠償金を得たアレキサンダー・ワンは、偽造者を法的に裁くことに成功した一例だ。
偽造品市場の拡大を防ぐ目的で、テクノロジーを利用するブランドも増えている。ホログラムステッカーに印刷されたシリアルナンバーに代わり、暗号化されたマイクロ粒子やシリアル化されたバーコード、RFID ・NFCチップなどを取り入れている。
スタートアップEntrupyが開発した、マイクロカメラで高級ブランドの商品が本物か偽物かを鑑定するスマホアプリも人気だ。Balenciaga、CHANEL、GUCCI、HERMES、Louis Vuitton、Dior、FENDIを含む15ブランド のオンデマンド真贋鑑定が可能だ。
LVMHの偽物を見分けるコツは?
世界で最も海賊版が出回っている高級ブランドのひとつ「Louis Vuitton」を傘下に持つLVMHは偽造品対策に年間1500万ユーロを投じるなど、商標および著作権の保護に関して極めて積極的なアプローチをとっている。かつて同ブランドの海賊版の販売を黙認していたeBayは3800万ユーロ、Singga Enterprisesは140万ユーロの罰金を支払っている(フォーチュン2015年6月25日付記事)。
特にブランドのロゴを全面に散りばめた定番「Monogram Bag」が 偽造品のターゲットにされているが、近年の偽造品は非常に精巧でロゴのデザインやパターンは本物とそっくりだという。本物か偽物かを見分ける手段として、バッグの内側に縫い付けられた、製造年月日と製造地を示す「デート・コード」をチェックする。
中古品を購入する場合、ハンドルとストラップ部分に使用されているバケッタレザーに注意を払う。本物に使用されているバケッタレザーは表面加工されていないため、多少なりとも変色しているはずだ(インディペンデント2018年12月16日)。
CHANELはロゴと「Authenticity Card」に注意
CHANELのバッグも造品メーカーの恰好のターゲットだ。見分けるには「C」が重なり合った ロゴに注意する。本物のバッグは右向きのCの上部が左向きのCにかぶさり、下部が下をくぐっている。
また商品についてくる「Authenticity Card(本物であることを証明するカード)」のシリアルナンバーはCHANEL特有の角ばった書体で 印刷されており、バッグの内側に記載されたシリアルナンバーと一致 している。皮の表面が不自然にてかてか光っている、あるいはアクリル臭がする 場合、偽物の可能性が高い(デイリーメール2018年7月6日付記事)。(アレン・琴子、英国在住フリーランスライター)