不動産投資といえば、以前は資産家が遊休地を活用してアパート経営をするようなイメージが主流でしたが、投資向けの分譲ワンルームマンションが登場してからは一般的なサラリーマンも不動産投資をすることが一般的になりました。通常、サラリーマンは勤務先の会社が源泉徴収をして税金を納めているため、自ら確定申告をする必要はないのですが、不動産投資で家賃などの「不動産所得」が発生すると、個別に「確定申告」をしなければなりません。

給与所得以外に収入のある方が「確定申告が面倒だ」と嘆いていることがあります。しかし、不動産所得などがあるサラリーマンが、その「面倒な」確定申告をすることで、「トク」する場合があるのです。今回は、サラリーマン投資家が確定申告をすると「トク」をするメカニズムと「トク」をするケースについて解説したいと思います。

サラリーマンなのになぜ「確定申告」が必要になるの?

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(画像=Boophuket/Shutterstock.com)

日本では稼いだお金に対して、「所得税」そして所得税を基に算出した「住民税」が課税されます。自営業者の場合、それぞれ自分で「確定申告」をすることで所得税や住民税を納税しますが、サラリーマンの場合はたいてい、勤務先の会社が「源泉徴収」しているため、自ら確定申告をして納税する必要がありません。

源泉徴収とは、「所得という泉(いずみ)の源(みなもと)である給与から徴収する」、つまりは給与から直接税金を差し引くということです。ですから、サラリーマンの場合、確定申告をしなくても、納税していることになります。ただし、不動産投資による家賃収入など、給与とは別の所得が発生すると、その収入分については、会社が把握することができないため、他の自営業者と同じように、「今年の家賃収入はこれだけありました」と税務署に確定申告して、税金を納めなければならないことになります。

今回のテーマは、「確定申告するとトクをするケース」ですが、これは確定申告をしなくても良い場合があるという意味ではありません。不動産所得がある人は、「必ず」確定申告をしなければならないということを必ず覚えておく必要があります。これを怠ると「加算税」や「延滞税」など、追加で徴収をうけることもあり、結局、たくさん税金を納めなければならなくなりますので注意が必要です。

「減価償却費」ってなに?

「確定申告するとトクするケース」とは、一言でいうと「納めた税金が還付されるケース」の事です。確定申告というと、「税金を納めるためだけにする」というイメージが強いかもしれませんが、実は確定申告をすることで、「支払った税金が還付される」ケースもあるのです。 例えば、不動産投資をしたことで、収支が「赤字」なった場合です。赤字と聞くと「損」をしているようなイメージをもつかもしれませんが、これはむしろ帳簿上の話で、キャッシュフローベースでみると黒字の場合もあるのです。

不動産投資の課税対象は、「不動産所得」です。不動産所得は、不動産投資で得た「総収入」から「必要経費」を差し引いて計算をします。不動産投資の収入といえば、通常、「家賃」や「礼金」、「更新料」などが該当します。他方、必要経費は種類が多く、主に次のようなものです。

・固定資産税
・管理費
・修繕積立金
・内装工事費用
・物件現地視察のための交通費
・不動産業者に支払う仲介手数料や広告料
・借入利息
・確定申告を税理士に依頼した場合はその報酬
・減価償却費

このように様々な経費がある中で、最も重要なのが「減価償却費」です。例えば3,000万円の分譲マンションを購入した場合、普通に考えると購入金額の3,000万円は初年度の「経費」として全額申告することになります。そうなると、初年度だけが巨額の赤字申告となり、翌年度からは一転して黒字申告になります。会計のルールの一つに、「費用収益対応原則」というものがあります。収益を得るために使ったコストは対応するというものです。賃貸マンションのような不動産投資では、物件購入という初期費用で巨額の経費が発生しますが、その物件からの収益は長期に渡って一定額を回収し続ける売上モデルです。そこで、マンションのような高額資産を購入した場合は、その購入費用を一定の年数に分割して経費として計上することが認められています。それが「減価償却費」なのです。(※鉄筋コンクリートのマンションの場合は47年、建物の設備部分は15年に分割して計上します)つまり、減価償却費とは「すでに支払い終わっている経費をあとから分割して計上する」というもので、帳簿上では「支出」になるものの、実際に現金が懐から出ていくわけでありません。しかも、毎年の収益を圧縮できるので、上手に利用する事で納税額を低く抑えることも可能です。「魔法の経費」などと呼ぶ人がいるのはそのためです。

どうして税金が還付されるの?

なぜ不動産投資の「赤字」を確定申告すると税金がかえってくるのでしょうか。それは、簡単にいえば、あなたが「サラリーマン」で、すでに源泉徴収で、給与所得から一定の税金を納めているからです。サラリーマンとして納めた税金は、あくまで会社からの給与に対するもので、不動産所得を考慮していません。もし不動産投資で「赤字」になっているのであれば、その分を総所得金額から差し引くことができます。これを「損益通算」といい、以下の4つの所得については他の所得との損益通算が認められています。

・不動産所得
・事業所得
・山林所得
・譲渡所得

これこそが、「サラリーマンが確定申告してトクをするケース」なのですが、経費の中には初年度しか認めてもらえないものもあり、節税効果は限定的です。損益通算による還付金には期待し過ぎずに、良いマンションに投資して高い収益をあげるという不動産投資の「王道」を目指すことが必要です。(提供:Incomepress

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