かかる相続税を減らしたいと思うなら、重要なのは「いかにして現金や預貯金を他のものに変えていくか」という視点です。なぜなら、現金や預貯金はそのままにしておくと、税制上の優遇を受けることができないからです。基礎控除額を除いて、基本的にそのすべてが相続税の対象となってしまうのです。
では、どのようにして現金や預貯金の形を変えればいいのでしょうか。代表的な方法としては、“生命保険の活用”が挙げられますが、より高額な資産を有している方には、“不動産の活用”が最適と言えるでしょう。現金や預貯金を不動産に変えることによって、相続税の対象となる課税額そのものを減らすことができれば、節税につながります。
現金や預貯金を不動産資産に変えることで大きな節税効果が期待できる
そもそも、現金や預貯金を不動産に変えると、なぜ相続税の節税につながるのでしょうか。その理由は、日本の税制では不動産(土地や建物)が優遇されているためです。もともと土地や建物というものは、私たちの暮らしにとって無くてはならないものです。それらが失われてしまうと、憲法で定められている「健康で文化的な最低限度の生活」にも支障をきたすことになります。
そのような観点から、税制上にも優遇措置を設け、私たちの暮らしに配慮してくれているのです。一方、現金や預貯金に関しては、あくまでも所有者の純粋な資産としてみなされます。つまり、高額な現金や預貯金を所有している人は富裕層と判断され、それを相続する相続人に対しては優遇措置なしで相続税を課して問題ないだろうと判断されるわけです。
不動産に変更した場合の相続税について
次に、現金や預貯金を不動産に変えた場合の相続税額について、見ていきましょう。まず土地に関しては、一般的に「路線価」か「倍率方式」で評価されることになります。路線価とは、道路に面する宅地の評価額のことです。この方式で土地が評価されることにより、公示地価※の70~80%ほどになることが期待できます。
※公示地価とは、国土交通省が毎年3月に公表するその年1月1日時点における全国の標準値の土地価格を公示するもので、一般の土地取引や相続税評価・固定資産税評価の目安、また時価評価の基準・指標として活用されます
では、建物の方はどうでしょうか。建物の評価に関しては、基本的に「固定資産税評価額」が目安となります。固定資産税評価額とは、国が定めた固定資産評価基準に基づいて市町村が決定するものですが、その金額は、建築費のおよそ50~70%になると言われています。評価額としては、実に半額近くまで減額される可能性があるのです。
このように、土地も建物も、現金のままの評価より大きく減額される可能性があることがわかります。その結果、納めるべき相続税の額も少なくて済むわけです。相続税をできるだけ減らしたいという場合には、現金をそのままにしておくのではなく、不動産に変えてしまった方がお得になるというのは、こういう理由からなのです。
土地や建物を貸している場合
さらに、土地や建物を貸している場合には、「貸地」、「貸家」としてさらに評価は圧縮されます。
例えば、相続税評価額1億円の土地(更地)を持っている場合を考えてみましょう。
更地に賃貸物件を建てたとすると、その土地(底地)の評価は更地の状態から大きく減額されます。減額割合は、その土地の所在している地域の「借地権割合」によって異なります。
その地域の借地権割合が仮に70%だった場合、まず土地の評価額が70%減額されます。また、その賃貸物件の賃貸割合(入居率)によっても価額は変わり、空室が少ないほど減額幅は大きくなっていきます。
賃貸割合が100%で、借地権割合が70%の地域の場合、土地の相続税評価額は1億円×〈1-0.7(借地権割合)×0.3(借家権割合)×1(賃貸割合)〉=7,900万円となります。
では、建物(貸家)の相続税評価額はどうでしょうか。
貸家の相続税評価額は、固定資産税評価額に借家権割合(全国一律30%)と賃貸割合を乗じて計算します。
これは、人に貸している家屋は自分で使っている家屋よりも売却したりすることが難しい等の制約があるため評価を低くして良いという趣旨によるものです。
例えば、1億円の建築費をかけて鉄筋の賃貸物件を建築した場合、建築費の約70~80%が固定資産税評価額となります。仮に7,500万円の固定資産税評価額が付いているとすると、7,500万円×〈1-0.3(借家権割合)×1(賃貸割合)〉=5,250万円が建物の相続税評価額となります。
以上の場合、評価額1億円の土地を所有していて、そこに1億円の建築費をかけて賃貸物件を建てたことになるので、2億円の財産となります、しかし、この土地と建物を賃貸物件として貸し出すことで相続税評価額は1億3,150万円となり、評価を6,850万円圧縮したことになります。 ※借家権割合は、都道府県ごとに決められていますが、ほとんどの都道府県が30%です。
その他にも、「小規模宅地の評価減」など、並行して活用できる制度がないかどうか、ぜひ模索してみてください。複数の特例が適用される場合には、より大きな節税効果が期待できます。被相続人の年齢や家族構成等も十分に考慮したうえで検討してみましょう。(提供:相続MEMO)
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