子どもがいる家庭で、出費の大きなウェートを占めるのが教育資金です。もし大学まで卒業させようと思えば、相当な教育費が必要になります。そこで、祖父母が考えるのが孫への教育資金一括贈与です。その際、利用を検討した方がよい制度に「教育資金一括贈与の特例」があります。しかし、この制度にはメリットとデメリットがあり、子や孫の年代によっても対応が違ってくるでしょう。本稿では当制度のあらましについて紹介します。

「教育資金一括贈与の特例」とは?

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(写真=Rawpixel.com/Shutterstock.com)

「教育資金一括贈与の特例」とは子や孫などの直系卑属(親族関係においてあとの世代になる血族)に対して教育資金を贈与する場合、1,500万円までが非課税になる制度です。30歳未満の子や孫が利用することができます。これに対し、1年ごとに贈与することを「暦年贈与」といいます。贈与税には年間110万円の基礎控除がありますので、授業料や月謝の補助を行うにはそれだけでも十分です。

しかし、大学の入学金など高額な費用が必要になる年代であれば、一括贈与して自由に使ってもらった方がよい場合もあります。なお、教育といっても用途は学校に限らず、下記のようなバラエティに富んだ教育施設や費用が対象です。

【対象教育機関】(文部科学省の公式見解)
・学校など:学校教育法上の幼稚園、小・中学校、義務教育学校、高等学校、中等教育学校、特別支援学校、高等専門学校、大学、大学院、専修学校、各種学校、外国の教育施設、認定こども園または保育所など
・学校など以外:学習塾、スポーツ教室、文化芸術に関する教室など

【教育資金の範囲】(国税庁の公式見解)
・学校などに直接支払われる、入学金、授業料、入園料、保育料、施設設備費または入学(園)試験の検定料など
・学用品の購入費や修学旅行費、学校給食費など学校などにおける教育に伴って必要な費用など
・学校など以外に対して支払われる、教育(学習塾、そろばん塾など)に関する役務の提供の対価や施設の使用料など
・スポーツ(水泳、野球など)または文化芸術に関する活動(ピアノ、絵画など)その他教養の向上のための活動にかかる指導への対価および、役務の提供または指導で使用する物品の購入に要する金銭
・通学定期券代、留学のための渡航費などの交通費

教育資金一括贈与の特例のデメリット

教育資金の負担を減らすにはありがたい制度ですが、デメリットもあります。もっとも大きなデメリットは、使い切れないと贈与税がかかることです。30歳未満の子や孫が対象ですので、30歳になるまでに使い切らなくてはなりません。同時に、贈与されても教育資金以外の用途で使用すると課税されます。したがって、本当に1,500万円も必要かどうかを考えることが必要です。

次に大きいのが、教育費に使ったと証明できるように領収書の保存など、管理が煩雑である点です。専用口座を開設した金融機関へ教育資金に使ったことを証明するため、書類を提出しなければなりません。なお、「暦年贈与」の場合は、領収書の提出は不要です。そもそも家族の教育資金に贈与税はかかりません。国税庁は、教育費に関して贈与税がかからない対象として、法令で以下のように定義しています。

「夫婦や親子、兄弟姉妹などの扶養義務者から生活費や教育費に充てるために取得した財産で、通常必要と認められるもの」

引用元:国税庁

ここでいう教育費とは、学費や教材費、文具費など、その都度必要な費用を指します。つまり、祖父母が孫にノートや鉛筆を買ってあげる程度の行為はもともと非課税で行えるのです。この場合のポイントは「通常必要であり、その都度出費するもの」ということになります。したがって、祖父母から教育費として預かったお金で、親が株式や不動産を購入した場合などは課税されます。

祖父母にとって、かわいい孫のためなら惜しくはない教育資金の贈与ですが、その思いを活かすためにも、ケースバイケースでもっとも有効な使い道を考えることがおすすめです。(提供:相続MEMO


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