保険加入前にしておくこと
ドクターのための生命保険、という名称の保険商品が発売されています。ですが、その中身は一般的な会社経営者の保険と、損害保険の組み合わせのケースが多く、情報として知っておくことは皆無です。
それよりも、生命保険が何の目的なのかを理解しないまま加入する方が多いので、その必要性の有無をはっきりさせることが大切です。個人開業医か、ある程度規模の大きいオーナー開業医かでは、用意すべき備えは変わってきますし、生命保険以外でも必要なものが出てきます。優先順位を考えていきましょう。
①生涯年収と保険金額はイコールではない
開業医、勤務医ともよく口にするのが「生涯年収」です。医師の世界は一般社会と違って、リタイアという文字はまずありません。仮に車いすになったとしても、産業医や検診医は十分可能です。そのため、余程のことがない限り「一生働ける」と考え、死亡リスクを取らない医師が少なくありません。
ですが、考えて頂きたいのは勤務医が勤続年数で報酬を増やすのに対し、開業医は経営リスクがつきまとう、という部分です。勤務医よりも開業医の方が圧倒的に手取りは大きいのは、経費が抑えられるためであって、それが年々増加するかどうかの保障がないことを覚えておかなければなりません。
②インシデントへの備えか、就業リスクへの備えか
勤務医への保険で必要なものは「インシデント」対策としての賠償保険です。特に執刀医の場合は、今や医師個人が加入するべきものといわれています。ですが、臨床開業医の場合は、インシデントよりも就業リスクに重点をおくべきでしょう。
一部美容外科や皮膚科の場合、レーザー治療による炎症が訴訟になるケースがあります。手わざを使う成形外科、眼科、また精神関係の心療内科でも投薬でのインシデントが発生し、問題となるケースが出ています。今後より深刻になるのは、モンスターペイシェントを起因とする「インシデント」といえるでしょう。