働き方改革が叫ばれる現代において、就業時間に関しても新たなルールを用いて運用する企業が増えてきている。その代表とも言えるのが、「フレックス制」と「裁量労働制」の2つの働き方だ。どちらも業務の遂行手段や時間配分を従業員の自由にするという部分で似ているが、実際のところはどういった違いがあるのだろうか。今回は、経営者として知っておくべき両者の違いについて解説していく。

フレックスタイム制とは

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(写真=Ditty_about_summer/Shutterstock.com)

フレックスタイム制とは、従業員自身が日々の労働時間の長さや労働時間の配置(始業及び終業の時刻)を決定することができる制度のことだ。ただし、日本におけるフレックスタイム制では、絶対に出社しなければいけないコアタイムと、それ以外の時間帯に分けたフレキシブルタイムを持ち合わせた働き方を示すことが多い。例えば、1日8時間労働を課す場合、12時から16時からをコアタイムとすれば、8時に出社して16時に退社しても良いし、12時から出社して20時に帰っても良い、とするような働き方だ。ざっくりと、「出社時間や退社時間を前倒したり後倒したりできる制度」と考えるとわかりやすいだろう。

裁量労働制とは

対して裁量労働制とは、一定の業務を行う従業員について、業務の遂行方法や時間配分等の裁量を大幅に委ね、実際に働いた時間とは関係なく、あらかじめ定められた時間(みなし労働時間)で働いたものとみなされる制度のことである。このように表現すると少々小難しく聞こえてしまうが、要は「与えられた業務を遂行できさえすれば、1週間のうち1日だけしか働かなくても良い」というルールだ。フレックスタイムがコアタイムという絶対に働かなければならない時間があり、労働時間に応じた給与を支払うのに対し、裁量労働制ではそれすらも存在せず、労働内容に応じた給与を支払う制度と言える。いわば、「出社時間をある程度自由に決められるフレックスタイム制」と「その日働くかどうかすら自由に決められる裁量労働制」ということだ。

フレックスタイム制、裁量労働制で気を付けておくべきポイントとは

先に解説した情報だけをそのまま受け取ると、従業員にとってはどちらも非常にうれしい制度と言えるだろう。しかし、懸念すべき材料がないわけではない。特に裁量労働制の場合、経営者側としては、自分の手が届く範囲でしっかりと従業員を管理していくことができなくなるため、「本当に成果を上げてくれるか」という不安を常に抱かなければいけなくなるだろう。また、従業員側でも「どうせ同じお金を払うならば少しでもたくさんの成果を上げさせたい」という経営者の意図に基づき、とてつもない量の仕事を任されてしまうこともあるかもしれない。もし仮に毎日寝る間を惜しんで仕事をしたとしても、裁量労働制の場合は与えられた業務に対する給与であるため、報酬がアップすることはない。こうした背景もあり、裁量労働制は労働者を働かせ放題にさせてしまうルールだという意見もあるぐらいだ。

フレックスタイム制に関しても、いくらコアタイムがあるからと言っても社員の集まる時間や帰る時間にバラつきがあるということは、それだけ社内でのコミュニケーションが取りにくくなるということでもある。従業員に自由を与えることはもちろん大切ではあるが、その分を補填する制度やルールに関しても、同時に見て行くことが必要になるだろう。

自分たちが最もやりやすいやり方を考えることが大切

フレックスタイム制や裁量労働制に関する話題が騒がれ、良い側面ばかり注目をされるケースが多くなっているからこそ、今回紹介した注意点などは特に気を付けながら今後の対策を進めていった方が良いだろう。従業員にとっても経営者にとっても、手放しで喜べることばかりではないのが現状だ。他が導入しているから導入する、他がやっているから自社でも導入して欲しい、といった単純な考えではなく、本当にそれで自分たちが働きやすくなるのかを真剣に考える必要がある。(提供:百計ONLINE

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